レース車両
2年目を迎えるSF専用シャシー“SF23”
クイック&ライトの継承とカーボンニュートラルに
対応
スーパーフォーミュラ(SF)では2023年より新型のSF専用シャシー「SF23」を導入し、参戦の全選手が使用します。このSF23は、2022年まで使用したSF19、その前期型であるSF14と同様にイタリアのレースカー製造会社ダラーラ社が開発・製作したものです。
SF23は基本コンセプトである“クイック&ライト(素早く動き&軽くて軽快)”を継承し、さらにフォーミュラカーらしいキビキビとした動き、操縦性を実現しています。特に空力面では、車両後方の乱気流を抑制することでこれまで以上に接近戦を可能とし、ドライバーの力量がタイムやバトルに反映されやすい工夫がなされています。
搭載されるエンジンも小型軽量で、2000cc直列4気筒の直噴ターボのトヨタ製かホンダ製のどちらかを使用します。TOYOTA GAZOO Racingの「TOYOTA/TRD01F」もホンダ製エンジンも、約550馬力と高出力を誇ります。それぞれにドライバーの操作を機敏に反映するドライバビリティ(追従性)やセッティングの幅などに特徴・差異があり、この違いからも白熱したバトルが生まれています。
安全装備では、SF19と同様に「ヘイロー(halo)」が採用されています。これはフォーミュラカーではむき出しになるドライバーの頭部を、走行中の飛散物やクラッシュ時に守るため付けられたコックピット開口部の上方に配置されるパイプです。ドライバーの視界を妨げるようにも思われますが、ほとんど影響がないことが確認されており、SFやF1をはじめ多くのフォーミュラカーで導入されています。なお“halo”は直訳すると神様や聖人の背後に描かれる「後光」という意味です。その形状と頭部を守るという機能から名付けられました。
そして、SF23はカーボンニュートラルにも対応しています。そのボディには、カーボン素材と同等の剛性と重量を担保した、麻由来の天然素材等を使用する「バイオコンポジット素材」を採用しました。これにより原材料ならびに製造過程でのCO2排出量を約75%抑制しています。
SF専用タイヤを全車が使用
高性能とカーボンニュートラルを両立
スーパーフォーミュラでは、横浜ゴムが供給するタイヤを全車が使用します。供給されるタイヤは、"ADVAN(アドバン)"ブランドのSF専用です。このタイヤでは2023シーズンより、天然由来の配合剤やリサイクル素材等、再生可能原料を活用した「カーボンニュートラル対応レーシングタイヤ」を導入しました。これまでのSF専用タイヤとほぼ同等の性能を維持しつつ、33%(ドライタイヤの再生可能原料比率)のリサイクル素材と再生可能原料の採用を達成していています。
大会の天候により、乾いた路面で使用する溝なしのドライタイヤと、濡れた(ウエット)路面用の溝があるレインタイヤが用意されています。今季もドライタイヤは固さや耐久性が同じ1スペック(仕様)のみとなります。またレインタイヤは、雨や路面が濡れた状況と競技長が判断して「WET宣言」を出した場合のみに使用できます。
SF独自の公平で競技性の高い
オーバーテイクシステム
近年のモータースポーツでは追い越しのチャンスを広げる一時的に速力やエンジンパワーを上げる仕組みが用いられることが多くなっています。
スーパーフォーミュラでは、SF用のエンジンを供給するメーカー間で技術協力を行い、独自の「オーバーテイクシステム(OTS)」を提供しています。OTSでは、ステアリングにあるボタンを押すと一定時間、通常より多くの燃料が供給されて、エンジンのパワーが上昇。前走車の追い抜きやラップタイムの向上を可能にするものです。
使用できる時間は、1レースでトータル200秒間。その時間内なら何度でも、何秒でも使用できます。ただし、1度使用したら一定時間は使用できません。使用できなくなる時間はサーキットの周回タイムを基本して、大会ごとに設定されます。2024年は鈴鹿とオートポリスが100秒、スポーツランドSUGOは110秒、富士スピードウェイとモビリティリゾートもてぎは120秒となっています。
OTSの使用可能な時間は、コックピット後ろのロールバーに付けられたOTSランプで示されます。使用時間が残り200秒から20秒まではグリーンの点灯、20秒以下になると赤に変わり、使用時間がなくなると消灯します。OTSが使用不可能な時間はゆっくり点滅します。なお2023年からOTS作動中を示すランプの合図はなくなりました。このためドライバーからはライバルの使用状況が不明となり、追い越し時ではより効果的になります。
観戦者に対してはSF専用のアプリ「SFgo(※)」において。選手別にOTS作動中の使用状況や残り時間などの状況がリアル(通信による若干の遅延あり)に提供されます。
※有料サービス。対応デバイスはiOS14以降。Android OS10以降。PC端末はChrome/Safari/ Edgeの最新バージョンのブラウザ。
レース専用エンジン
「TOYOTA/TRD01F」を供給
スーパーフォーミュラのエンジンは、直列4気筒2000ccで直噴シングルターボチャージャー付きです。このエンジンの仕様は「NRE(ニッポン・レース・エンジン)」と呼ばれるものです。これは、スーパーフォーミュラとSUPER GTに車両やエンジンを供給するTOYOTA GAZOO Racingをはじめとする国内3メーカーが「市販エンジンの開発にも役立つ、日本初のレース専用エンジンを造ろう」と協議して策定しました。
このNREには出力制限のシステムとして、日本独自の技術である瞬間的に燃料流量を調整できる「燃料流量リストリクター」を搭載しています。これにより、より効果的で公平、安全な出力制限を実現しています。またSFでは、この「燃料流量リストリクター」を利用した独自の追い抜き支援システム「オーバーテイクシステム」を採用しており、海外の他カテゴリーより公平で、ドライバー自身の戦略判断が活かせると国内外から評価されています。
そしてNRE初年度の2014年にTOYOTA GAZOO Racingは「TOYOTA RI4A」を供給。2019年にはバージョンアップした「TOYOTA/TRD-Biz 01F(現TOYOTA/TRD01F)」を開発し、TRD※を通じてTOYOTA GAZOO Racingの各チームに供給をしました。
2024年シーズンもTRDで継続開発をした「TOYOTA/TRD01F」を、6チーム11名のドライバーに供給します。TOYOTA GAZOO Racingは、TRDと参戦各チームと共に「TOYOTA/TRD01F」をよりよいエンジンに仕上げ、各戦の優勝と2年連続のチャンピオンを目指していきます。
※TRD(TOYOTA Racing Development)は、株式会社トヨタ・カスタマイジング&ディベロップメントでモータースポーツ事業を担う部門でありブランド名。TOYOTA GAZOO Racingなどのレース車両やエンジン、モータースポーツ部品の開発と製造を行う。
主要諸元
エンジン | |
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エンジン型式 | TOYOTA/TRD01F |
排気量 | 2,000cc |
気筒数 | 直列4気筒直噴 |
過給器 | ターボチャージャー(ギャレット製) |
重量 | 85kg以上 |
出力 | 405kw(550馬力)以上 |
出力制限方法 | 燃料リストリクターによる燃料流量制限 |
シャシー | |
車両名称 | SF23 |
全長 | 5,235mm |
全幅 | 1,910mm |
全高 | 960mm |
最低重量 | 677kg以上(ドライバー搭乗時) |
ミッション | 6速パドルシフト |
デフ | メカニカル式デフ |
ブレーキ(前後とも) | カーボン製ベンチレーテッドディスク |
ホイール(前/後) | 10.5J/15.0J |
タイヤサイズ(前/後) | 270/620R13/360/620R13 |