崖っぷちから掴み取った頂点 前編(2/2)「今年ダメだったらレースを辞めるしかない」

崖っぷちから掴み取った頂点 前編(2/2)
「今年ダメだったら"レースを辞めるしかない"」

明暗の分かれた開幕戦鈴鹿。
2位表彰台でさらに大きな注文をつけた国本

―― ドライバーの2人はどういう気持ちで今年の開幕を迎えましたか?

国本 昨年全然結果を残せなくて、今年は何か変えなくてはと思っていました。その中、鈴鹿の開幕はいい滑り出しで、シーズンオフにやってきたことがうまく開幕戦で発揮できた感じでした。ただ、開幕戦で2位という結果を出したけれど、先のことは分かりませんでした。でも「このままいくしかない」とは思っていました。

開幕戦鈴鹿で2位表彰台を獲得した国本雄資
開幕戦鈴鹿で2位表彰台を獲得した国本雄資

石浦 僕にとって開幕戦は残念(※1)でしたが、国本が2位だったのを見て「昨年苦戦していたのに、今年は本来のパフォーマンスに戻って良かったな」と思っていました。なぜかというと昨年は2台でデータを共有しようにも、同じセットにしても全然パフォーマンスが食い違って、データの共有ができなくなっていたんです。一昨年はうまくいっていたのにですよ。
今シーズンはタイヤが変わったのでより一層共有しなくてはいけないんだけど、どうしようかなと心配していたら、開幕戦で2位という結果を出したので、今年は2台でやっていけそうだと思いました。

(※1)・・・石浦は予選Q1でアタック中に黄旗区間を走ってタイムを出したため、ペナルティで該当タイムが抹消。予選15位からのスタートで決勝11位とノーポイントで終わった。

ピットから出るP.MU/CERUMO・INGING SF14 1号車と2号車

国本 昨年抱えていた問題もある程度解決できたし、自分自身もより成長して、今年に賭けていたので、そういう気持ちもうまく働きましたね。本当に今年ダメだったら"レースを辞めるしかない"と思っていたんです。

立川 国本は、今まで正直なところ、若いときからTDP(※2)で良い体制を与えられてきた。もちろん、若い選手に良い環境を与えるのは大事ですが、でも「いいクルマに乗せられている」状態にもなってしまうこともある。でも今年彼は、与えられた状況の中で走るだけではなくて「自分が変えていくんだ」「チームを引っ張っていくんだ」という気迫が感じられたね。
元々速さを持っているドライバーなのに、今まではどちらかというとチームやエンジニアに引っ張られている感じだった。それが、今年は"言う"ことでチームもクルマを見直したり、変えるものを変えたりとか、メカニックも(刺激されて)がんばって良い効果があったね。シーズン中には「モノコックを換えてほしい」という話を自分でしにきたんですよ。

(※2)・・・TDPはトヨタ・ドライバーズ・プログラムの略称。優れた若い才能を発掘し、国内外のトップカテゴリーで活躍するドライバーを育成する。詳しくはこちら

国本はチャンピオンを獲得するため、「モノコックを換えてほしい」とチームに要望した
国本はチャンピオンを獲得するため、「モノコックを換えてほしい」とチームに要望した

―― シーズン中に、モノコックを新しくしたのですか? エンジンを別にすれば、一番高価なパーツというか、車体自体ですよね。それを立川監督はOKしたのでしょうか?

<前編 あとがき>
開幕戦鈴鹿で2位とシーズンの好スタートを切った国本選手。ですが、その国本選手が「モノコックを換えてほしい」という重大な要望を突きつけたそうです。チームにとって大きな負担とも言える話であり、セカンドドライバーという立場では過大とも言える要求です。果たして、立川監督はどういう決断をしたのでしょうか? また、これに応えてもらった場合、国本選手の立場は言い訳の聞かない次の「崖っぷち」となります。続く中編では、この国本選手の心境、そしてチームが苦しんだ中盤戦に迫ります。