スーパーフォーミュラ 5連覇へのプロローグ

アジア最速&最高峰のフォーミュラカーレース スーパーフォーミュラ。
トヨタは2リッター・直列4気筒直噴ターボエンジン"RI4A"を供給し、昨年まで4年連続でシリーズチャンピオンを獲得。今シーズンは5連覇を目指している。

今シーズンはスーパーフォーミュラのキーポイントとなる2種類のタイヤ導入。
タイヤの変化は、クルマのセッティングだけではなく、エンジン開発にも影響があるのだ。

開幕戦の舞台である鈴鹿で行われた公式テストで今シーズンへ挑むドライバーたちの意気込みを聞いた。

今シーズンの鍵を握る
2種類のタイヤの使い方

2018年シーズンは全戦で2スペックタイヤが導入される

全員が同じ車両を使用するスーパーフォーミュラは、今年で現行"SF14"の5シーズン目を迎える。
そのため、各チームともセッティングも熟成され、ウイングの角度やサスペンションなどのミリ単位の調整が勝負をわける、と言っても過言ではない。

そんなスーパーフォーミュラの今シーズンの大きなトピックスとして、ソフトタイヤとミディアムタイヤの2種類のタイヤがシリーズ全7戦で導入されることになった※1

特性が異なる2つのタイヤをうまく使いながら、レースを戦う必要があるのだ。

  • ソフトタイヤ

    ソフトタイヤ

    柔らかいタイヤで、グリップ力が非常に高い反面、耐久性が低い

  • ミディアムタイヤ

    ミディアムタイヤ

    硬めのタイヤで、ソフトタイヤに比べグリップ力は劣るが、耐久性が高い

レーシングカーにおいてタイヤは重要な要素だ。
一般的にレーシングカーではエンジンやクルマのセッティングでタイムを1秒上げることは難しいが、唯一路面と接するタイヤの性能が変わることはそれだけでタイムを1秒上げること可能と言われるため、2種類のタイヤ導入は非常に重要なファクターとなるのだ。

鈴鹿テストでピット練習を行うcarrozzeria Team KCMG
鈴鹿テストでピット練習をする小林可夢偉のクルマ

スーパーフォーミュラで2度のチャンピオンを獲得※2し、WECやル・マンでも活躍している中嶋一貴(以下、中嶋)もタイヤの重要さを語っている。

「(現時点のテストで)2種類のタイヤの違いによるタイム差は、まだドライバーによって全然違う。このタイヤをいち早く上手く使いこなしたドライバーがシーズン上位に来ると思うし、だから開幕戦から優勝したい。そこを目指して準備したい」(中嶋)

スーパーフォーミュラで2度のチャンピオンを獲得し、WECやル・マンでも活躍している中嶋一貴は2スペックタイヤをいち早く上手く使いこなし、開幕戦からの優勝を目指している
スーパーフォーミュラで2度のチャンピオンを獲得し、WECやル・マンでも活躍している中嶋一貴

2種類のタイヤを一番上手く使いこなしたドライバー、チームが今シーズンのチャンピオンの栄光をつかむことになるはずだ。

※1 昨シーズンまでは1種類のみ。2016年の第4戦もてぎ、昨年の第4戦もてぎおよび第5戦オートポリスで試験的に2種類のタイヤが導入された。
※2 2012年と2014年。2012年はスーパーフォーミュラの前身フォーミュラ・ニッポンにて。

2017年のオートポリス戦で導入された2スペックタイヤ
2017年 第5戦 オートポリスで試験的に導入された際の2スペックタイヤ

2種類のタイヤ導入が
エンジン開発に影響する!?
その意外な関係とは

  • ピット作業を行うITOCHU ENEX TEAM IMPUL 19号車
  • TOYOTA GAZOO Racingエンジニア

今シーズン、シリーズ5連覇を目標にしているトヨタエンジンにとっても2種類のタイヤ導入の影響は大きい。
エンジンとタイヤ、一見すると関わりがなさそうだが、エンジン開発のリーダー、株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントの永井洋治(以下、永井)はタイヤ変更はエンジン開発にも大きな影響があり、特に"ドライバビリティ"と"燃費"が大事なポイントになってくると語っている。

「全戦で2種類のタイヤが導入されることになって、ドライバビリティと燃費が大事なポイントになってきます。タイヤによってグリップが異なるので(タイヤと路面間に生じる)トラクションが変わってくる。ドライバーがアクセルを踏んだときに、思った通りにクルマが動くように、まずそれに対応できるドライバビリティにしたいと思っています。それからサーキットによっては、2回のピットストップなどさまざまな戦略が予想されるので、それに対応できるようにエンジンの燃費にも気をつけています。」(永井)

TRD 永井洋治
株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
テクノクラフト本部 執行役員 / パワトレ開発部 部長の永井洋治

またスーパーフォーミュラでは"わずかな差"が勝負を分けるため、ドライバーやチームはテストからできるだけ走行時間を稼ぎたい。そのためにエンジンのトラブルによってその機会を失わせるわけにはいかない。

「表にはあまり見えない部分ですが、信頼性も強化しています。チームがセッティングに充分な時間を使えるよう心がけています。エンジンは(ベンチテストなどで)サーキットでなくてもある程度の作業ができますが、チームはサーキットでしかできない仕事がある。だから、エンジンはそれを邪魔しちゃいけない。その作業でライバルと差がつきますから。エンジン屋は現場へ来るまでにしっかりと仕事は終わらせることを徹底しています。またエンジン側でもサーキットでしかできない仕事・・・ドライバーごとにエンジンセッティングを合わせる作業もあるので、その作業にすぐ取りかかれる準備しています」(永井)

エンジントラブルによってテスト機会が失われないよう、TRDが事前の準備を入念に行うことで、チームはサーキットでしかできない仕事に十分な時間を使うことが出来る

ディフェンディングチャンピオンとして今シーズンのスーパーフォーミュラに挑む石浦宏明(以下、石浦)も、永井が語るエンジン開発の環境を歓迎している。

「最初の1周目から違和感なく走れています。たとえばエンジニアから『石浦さんの場合、鈴鹿でこの辺を求められると思うからこういうエンジンセッティングにしておきました』と事前に僕の好みやサーキットに合わせた特性の部分を見越して準備してくれるので、とても助かります。細かな要望をサーキットで言わなくていい環境なので、自分の走りやクルマのセッティングに集中できていますね」(石浦)

石浦宏明
ディフェンディングチャンピオンとして3度目のチャンピオンを目指す石浦宏明

今シーズンの飛躍を狙う
復帰組/2年目の
ドライバーたち

今シーズンの飛躍を狙う復帰組/2年目のドライバーたちこ(ジェームス・ロシター/平川亮/ニック・キャシディ/山下健太)

今シーズン、SUPER GTでも活躍してきたジェームス・ロシター(以下、ロシター)と平川亮(以下、平川)がスーパーフォーミュラに復帰する。SUPER GTで何度も優勝を飾っている彼らは、開幕戦から優勝争いに加わることを視野に入れている。
特にロシターは(SUPER GTで長年所属していた)TOM'Sからスーパーフォーミュラに参戦するという長年の希望が叶い、テスト中の彼の表情からは喜びが溢れていた。

「ようやくスーパーフォーミュラでTOM'Sと一緒に仕事ができてうれしい!しっかりテストをこなして一歩一歩確実に成長できているから、開幕戦の鈴鹿では優勝しかないよ!」(ロシター)

VANTELIN TEAM TOM'S 37号車
スーパーフォーミュラに2年ぶりに復帰するジェームス・ロシター

3年ぶりのスーパーフォーミュラ参戦となる平川は、昨年SUPER GTでチャンピオンを獲得しているが、そんな彼でもスーパーフォーミュラ復帰にあたってまだ足りないものがあるようだ。

「12月のテストで体力的に足りないと感じ、冬の間ずっとトレーニングをしてきた。鈴鹿では問題なく乗れたし、ピットストップやスタートの練習もできた。感覚を取り戻しながらの作業ができた。でもテストとレースは違う。実戦の感覚はまったくわからない。でも、自信をもってやっていきたい」(平川)

ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 20号車
ITOCHU ENEX TEAM IMPULから3年ぶりにスーパーフォーミュラに復帰する平川亮

平川とともにSUPER GTチャンピオンとなったニック・キャシディ(以下、キャシディ)、そしてキャシディのチームメイトとしてスーパーフォーミュラを戦う山下健太(以下、山下)は、ともにスーパーフォーミュラ2年目だ。2人とも昨年、ルーキーイヤーながらポールポジションを獲得するなど、1年目から速さを見せた。彼らも2年目の飛躍を狙っている。

「SUPER GTでチャンピオンを獲ったことを自信に、次はスーパーフォーミュラでタイトルを獲るのが夢」とキャシディ。また、山下は「開幕戦でしっかり結果を残したい。それができれば他でもいい走りができると確信している」と自信をのぞかせている。

KONDO RACING 3号車/4号車
近藤真彦監督が率いるKONDO RACINGで参戦2年目を迎えるニック・キャシディ(前車)と山下健太(後車)

鈴鹿テスト最速は小林可夢偉

鈴鹿テストで総合トップタイムを記録したcarrozzeria Team KCMG 18号車

3月12、13日、開幕戦の舞台である鈴鹿サーキットで行なわれた第1回公式合同テストでは、小林可夢偉(以下、可夢偉)が2日間のトップタイムをマークした。F1で表彰台を獲得し、WECやル・マンで活躍してきた可夢偉であっても、スーパーフォーミュラでは未だ勝利を上げることができていない。参戦4年目となる今シーズン、可夢偉も着実に準備を進め、優勝そしてシリーズチャンピオンを狙っている。

「改善できる部分もまだある中で、さらにいいタイムを狙っているところ。今年はテストの時点からチームが僕の好むクルマをしっかり作って来てくれたので、いい状況でシーズンを迎えられている。セットアップもそんなに悪くないし、もうすぐにレースしてもいい。開幕戦だけじゃなく、全部いただきたい(優勝したい)」(可夢偉)

小林可夢偉
鈴鹿テストで総合トップタイムを記録した小林可夢偉

第1回公式合同テスト 鈴鹿 総合結果

順位No.ドライバーチーム/エンジンベストタイム1日目2日目
118小林 可夢偉※3carrozzeria Team KCMG
TOYOTA RI4A
1’36.1221’36.122
236中嶋 一貴/J.P.デ・オリベイラ※3VANTELIN TEAM TOM’S
TOYOTA RI4A
1’36.1411’36.1411’39.207
32国本 雄資P.MU/CERUMO・INGING
TOYOTA RI4A
1’36.1781’36.1781’37.198
41石浦 宏明P.MU/CERUMO・INGING
TOYOTA RI4A
1’36.2951’36.2951’37.138
56松下 信治DOCOMO TEAM DANDELION RACING
Honda HR-417E
1’36.4511’36.4511’37.002
65野尻 智紀DOCOMO TEAM DANDELION RACING
Honda HR-417E
1’36.5131’36.5131’38.169
73ニック・キャシディKONDO RACING
TOYOTA RI4A
1’36.5891’36.5891’37.833
820平川 亮ITOCHU ENEX TEAM IMPUL
TOYOTA RI4A
1’36.6471’36.6471’37.079
916山本 尚貴TEAM MUGEN
Honda HR-417E
1’36.8891’36.8891’37.405
1017塚越 広大REAL RACING
Honda HR-417E
1’36.9191’36.9191’37.532
1164ナレイン・カーティケヤンTCS NAKAJIMA RACING
Honda HR-417E
1’37.0881’39.0791’37.088
1215福住仁嶺TEAM MUGEN
Honda HR-417E
1’37.0911’37.5151’37.091
1319関口 雄飛ITOCHU ENEX TEAM IMPUL
TOYOTA RI4A
1’37.1401’37.1401’37.561
1437ジェームス・ロシターVANTELIN TEAM TOM’S
TOYOTA RI4A
1’37.4131’38.6231’37.413
1565伊沢 拓也TCS NAKAJIMA RACING
Honda HR-417E
1’37.7351’37.7351’37.823
1650ヤン・マーデンボロー/千代 勝正B-Max Racing team
Honda HR-417E
1’37.9001’39.3921’37.900
178大嶋 和也UOMO SUNOCO TEAM LEMANS
TOYOTA RI4A
1’37.9091’37.9091’38.450
184山下 健太KONDO RACING
TOYOTA RI4A
1’37.9261’37.9261’38.384
197O.ローランド/P.フィッテイパルディUOMO SUNOCO TEAM LEMANS
TOYOTA RI4A
1’38.2091’38.4741’38.209

※3 小林可夢偉と中嶋一貴はWECのテスト参加のため、テスト1日目のみ参加。J.P.デ・オリベイラはテスト2日目に参加した。

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