「日本でする通訳だからこそ、日本の物の考え方を日本語で理解しておくことがとても大事だと思う」
通訳
木戸 敦子(きど・あつこ)さん
今井 それでは最後に、これからレースの世界で仕事をしたいと考えている人に、どうやったらそれぞれのお仕事に就けるのか、アドバイスを教えてください。
木戸敦子さん(以下、木戸) 英語が出来るというのを大前提にして、何をどう伝えるのか、というのをその場を読んできちんと伝えるということ。ただ訳をするだけなら、もうそろそろグーグルの翻訳でも、そのうちペッパー(ソフトバンクのロボット)でも出来るかもしれないけど、適所で真意を突いたことだけをきっちり伝える、という心の部分が必要な作業に機械が到達するまでには、もうちょっと時間がかかるだろうと思うのね。 また、日本語をきちんと知っておく、というのも大事なこと。日本の物の考え方を日本語で理解しておく、ということ。これも日本で仕事をするうえではとても大事なことだと思っています。
渡辺 私が今やっているZFというメーカーは部品を供給するサプライヤーなのですが、そのメーカーさんのやっていること、言いたいことを見て、感じたうえで話すことを心がけています。ただ調べるだけじゃなくて、現場に行って、見せてもらって説明してもらったり。今回のこの座談会もそうですが、レースの世界には素晴らしい先輩がたくさんいらっしゃって、聞けば皆さん親切に教えてくださるのに、恥ずかしくて出来ない人も多い。でも臆さず相談する、あきらめず熱量を持ってチャレンジをする、ということを忘れないようにしています。
「あきらめず熱量を持ってチャレンジをする、ということを忘れないようにしている」
PRナビゲーター
渡辺 順子(わたなべ・じゅんこ)さん
今井 そう、その「熱量」っていうのはなによりも大事なことだよね。私のMCキャリアの一発目は、なんと当時トヨタのF1に参戦していたラルフ・シューマッハ選手と某F1ジャーナリスト氏とのトークショー司会だったの。はじめての仕事なのにそんな大現場に抜擢されて、私ほんとうに出来なくて、グダグダだった。そのときの代理店さんから泣くほど怒鳴られて、「帰れ!」って。でも、「ぜってー帰らねえ!」って、頭下げて食らいついたんだよね。それが原点だから、情熱と継続は本当に宝になると思う。
細田 私の仕事では、これから志すのはなかなか難しいわよね...。だけど、普段から心がけていることは、人を大事にするということ。レース環境も経済状態も変わっていく中で、昔とは違うことがたくさんある。取り巻く環境が変化する中で、変わらないのはたくさんの人が関わっている、ということなの。そこで一番大事なことは信頼関係。誠意かしら。基本的なことだけど、嘘をつかないってことは、国境のない話だから。
木戸 そう、今はこの世界も昔ほど男の社会じゃなくなって女性がすごく入って来やすい時代になったと思う。でも、だからこそ女性が優遇されることもないから、きちっと仕事しなければいけないわよね。そういう意味でも、やりがいのある世界だと思います。
今井 今日はありがとうございました。これからもサーキットでよろしくお願いします!
<後編 あとがき>
「走る」ことに目を向けがちなモータースポーツですが、本当にいろいろな仕事があります。中でも、女性ならではのきめ細やかさが求められる仕事は、これほどまでに多岐に渡っているんですね! サーキットに遊びに来られた際には、ちょっと違う視点でサーキットを見渡してみれば、働く女性の輝く姿を、もっと発見出来ると思います。
そして、「私にも出来る仕事があるかも!」と、モータースポーツの世界に飛び込んで来てくれる女性が増えたら、なによりも嬉しいことだなと思いました。