- Round3
- スーパー耐久 第3戦 鈴鹿
レポート
「こころ一つに、勝つべくして勝ったレース」
2年ぶりとなった優勝は、完璧なポールtoフィニッシュ
三重県の鈴鹿サーキットで行なわれた、スーパー耐久シリーズ2016第3戦「SUZUKA“S耐”サバイバル」。
昨年来スーパー耐久シリーズは、魅力アップを目指して、毎回様々な新しい取り組みを実施しているが、今回は、土曜の午前に行なわれる予選では上位3位までが決勝進出、4位以下のチームは午後から行なわれる100分レース「セカンドステージ100」に出場し、上位に残ったチームのみ日曜の決勝に残れると言う、まさにサバイバルな戦いとなった。23台がエントリーするST-4クラスは、なんと7台が予選落ちとなる厳しい方式である。
第1戦もてぎ、第2戦菅生とも、表彰台獲得ながら中央は果たせなかった反省もあり、2週間前にニュル24時間レースを戦ってきた松井孝允、井口卓人、蒲生尚弥選手と影山正彦監督は、高いモチベーションを維持しながら挑んだ。
マシンは入念な整備と合わせ、かねて課題の一つだった空力を改良。ブレーキ系も一部アップデートを実施。「予選通過は絶対条件(影山監督)」と言うことで、木~金曜日の練習走行では、ストレートスピードに勝る競合車に対抗するため、S字/ヘアピンでのコーナリングスピードを重視したセットアップに専念。また、新形状のエアロボンネットのテストなども行なわれた(今回は予選、決勝で使用せず)。
11日、10時10分から行なわれたAドライバー予選は松井孝允選手がトップの95号車(SPOONリジカラS2000)と0.108秒差の2分21秒616で予選2位を獲得。バックストレートの最高速はホンダ勢が速いものの、第1セクターは86が圧倒的に速く86号車のセットアップは見事にハマった。Bドライバー予選は井口卓人選手が2分22秒272で予選1位。しかし、「一度もクリアラップを取れなかったので、まだまだタイムアップは可能だった」と言うコメントも。その結果、合計タイムから今年2回目となるポールポジションを獲得。実は開幕戦、第2戦は木~金曜日の練習走行からトラブル続きで、メカニックは深夜作業と言うのが定番だったが、今回はチーム関係者が「何もないのが怖いくらい」と語るくらいノントラブル。しかし、開幕戦でポールポジションを取りながらも3位に終わった悔しさもあり、この時はチームに笑顔はまだなかった。
12日、日曜日の決勝スタートはいつもよりも少し遅めの15時15分。レースは4時間の耐久レースなのでゴールはナイトチェッカーとなる。S耐では2008年まで行われた十勝24時間以来の久々だ。路面は完全なドライだが、今にも雨が降りそうな天候の中でのスタートとなった。
ポールからスタートの松井選手はスタート後、1周目から後続を引き離すハイペースで周回を重ねる。スタート直後から雨は降り始め路面はセミウエット状態。6周目にセーフティカーが入ったものの、どのチームもピットインは行なわず順位には変動なし。途中、雨足が強くなり路面は完全にウエットとなるが、松井選手はスリックタイヤのままで走行を続ける。
スタートから約1時間後にピットイン、井口選手へとドライバー交代のタイミングでレインタイヤへ交換。メカニックの迅速かつ正確なピット作業も相まって、ピットアウト後すぐにクラストップに返り咲いたが、後続の95号車S2000との差はわずか4秒。雨足はさらに激しくなっていったが、井口選手は安定した走りで後続との差を約30秒まで広げた。
スタートから2時間半、井口選手から蒲生選手へとドライバー交代。この間に95号車がトップになったが、95号車はあと1回ピットストップが残っている。
時刻は18時を回るとコース上には「LIGHT ON」ボードが提示。ヘビーウエットのナイトセッションと最後まで何が起きるか解らない状況だが、蒲生選手は95号車を上回るタイムを刻みながら周回を重ねていく。残り50分を切る辺りで、トップの95号車のピットイン。その間にトップに返り咲き、そのままチェッカーを潜りぬけた。
2014年の鈴鹿以来の勝利であると同時に、TOYOTA Team TOM’S SPIRITになってから初優勝だ。
「86はニュルでクラス優勝(2014年)したのに、S耐でなぜ勝てないの?」
そんな声を何度聞いたことだろう。特に2015年は度重なるトラブルや不運に泣き、チームはそのたびに悔しい思いをしてきたが、そんな鬱憤を晴らしたかのような完璧なレース展開だった。
マシンがゴールラインを超えた時、やっとチームのメンバーに笑顔が溢れた。影山正彦監督は「ゴールラインを超えた時、チームがやっと一つになったのを実感した」と喜びを語った。今回は練習走行~予選~決勝でドライバー、マシン、チームと全ての歯車が完璧に噛みあい、「勝つべくして勝った」レースウィークであった。
「こころ一つに」
ニュルで鍛えたDNAを受け継ぐ86が、ようやくTOYOTA GAZOO Racingの目指すスローガンに沿ったレースをやりとげた。
シリーズタイトル獲得をめざす反撃はまだはじまったばかり、
9月3~4日の次戦(富士スピードウェイ)まで、残された時間はあまりに短い。
松井孝允選手
「チームがベストなクルマを準備してくれたので、予選~決勝といい流れでした。みんながノーミスで行ければ結果が自然と付いてくることも解ったので、次戦以降にも活かしていきたいと思います」
井口卓人選手
「週末からの流れもよく、マシン、ドライバー、メカニックはノーミス。『勝つ時はこんなに簡単なんだ』と言うくらいのブッチギリのレース展開でした。この勝利はチーム一丸となって戦った結果です」
蒲生尚弥選手
「ドライバーを含めたチーム全員がノーミスで動けたことが最大の勝因でしょう。マシンの状態も最後まで全く問題なかったです。歯車がシッカリ噛みあうと、こんなに楽に勝てることを実感しました」
影山正彦監督
「練習走行からマシン・ドライバーとも良い状態で、いい流れをキープできました。セットアップは若干迷いがありましたが、予選までにいい方向に修正できたのがよかった。決勝はそれを活かし、初めて最初からレースをリードできた結果の完璧なポールtoフィニッシュでした。この優勝でチームがより一つになったことを実感しています。これからいよいよ反撃開始と言った感じです」
サーキットの魅力
耐久レースを楽しむポイント
鈴鹿サーキットではパドックパスを持っていると、2コーナーイン側、S字コーナーイン側、最終コーナーイン側と、白熱のバトルを間近で見る事が可能な「激感エリア」での観戦が可能だ。同じ場所に留まらずに色々な場所に移動して観戦できるのは、耐久レースの醍醐味の一つ言えるかもしれない。
また、鈴鹿サーキットは付帯施設が充実しているも特徴で、午前中は「ゆうえんちモートピア」、午後は「レース観戦」と大人から子供まで一日中楽しめるもの嬉しいポイントだ。
ちなみにレース中にグランドスタンド裏のGPフィールドにある大観覧車「サーキットホイール」に乗れば、空の上からレーシングコースを一望することも可能である。これは他のサーキットではできないスペシャルな観戦方法である。また、レースを観戦中に「自分も走りたい!!」と思ってしまったら、ジュニア専用の「コチラレーシングカート」、より本格的な「アドバンスカート」もあるので安心。また、GPスクエアには様々なイベントや展示なども行なわれているので、レースの合間に立ち寄ってみるのもいいかもしれない。レース観戦のみならず色々な体験ができるのも、鈴鹿サーキットならではの楽しみ方と言える。
SUPER GTの次戦(8月27-28日、鈴鹿1,000kmレース)でも、そのような楽しみ方をしてみてはいかがだろう。
次戦予告
- スーパー耐久 第4戦
- 開催予定:2016.9.3 ~ 4
場所:富士スピードウェイ
※プレビューページは2016年8月下旬公開予定です。