平川亮の挑戦
欧州ル・マン シリーズ参戦記
第2回:初めてのイモラを「TS050 HYBRIDの経験」で攻略
ELMS 2016年 第2戦 イモラ4時間レース
イモラ・サーキット(1周4.933km)
公式練習:5/13(金)、予選:5/14(土)、決勝:5/15(日)
5/10(火)移動日
第2戦に向けて、ヨーロッパへ出発
こんにちは、平川亮です。
約1か月ぶりの欧州ル・マンシリーズ。
第2戦が開催されるのは、イタリア中部にあるイモラ・サーキットです。
開幕戦のシルバーストーンに続き、今回のイモラ・サーキットも初めて走るコース。
事前にコースを覚えるため、イタリアへ入る前に羽田空港からシミュレーターのあるイギリスに向かいました。
開幕戦と同様にヨーロッパ時間に合わせるために遅寝をしてきたので、飛行機の中ではとても熟睡することができました。
時差調整にも少しずつ慣れてきた感じがします。
イギリス・ヒースロー空港に着くとイミグレーションを済ませ、レンタカーを借り、シミュレーターのある「ベースパフォーマンス」近くのバンベリーという町まで移動です。
約1ヶ月前にイギリスに来たばかりなので、今回は運転も慣れ、道を間違える事なく到着しました。
夜までは時間があったので、バンベリーを散策しようかと思いましたが、雨が強くなり断念。
夜ご飯にイギリス名物「フィッシュアンドチップス」を食べ、初日は終わりです。
5/11(水)シミュレーターでのトレーニング
コースを覚えるための事前トレーニング
今日は4時間、シミュレーターを使ってイモラ・サーキットを覚えるためのトレーニングを行います。
フォーミュラカーの形をしたシュミレーターに乗り込み、巨大なスクリーンを見ながら、本物のレーシングカーと同様にステアリング・アクセル・ブレーキを操作してトレーニングを行います。
チームから送られてきた動画などで、事前にイモラ・サーキットのレイアウトは覚えてきましたが、実際にシミュレーターで走ってみると思ったより道幅が狭く感じました。
数周走るとコースにも慣れ、ロングランを想定したシミュレーションなどを行ってトレーニング終了。実際にイモラ・サーキットを走るのがとても楽しみです。
トレーニング後、翌日のイタリアへの出発に備えてロンドン市内へと移動。
SUPER GTのチームメイトのジェームス・ロシター選手(イギリス人)が、たまたまロンドンにいるということで、ロンドン市内を色々と案内してもらいました。
イギリスで良いなと思う点は、市内でも5分も歩けば日本にはないようなとても大きな公園があること。日頃トレーニングするにも良いなと思いました。
夜ご飯にはジェームスが「ロンドンで1番!」とオススメしてくれたステーキ屋さんに行き、スタミナもガッツリ蓄えました。
5/12(木)サーキット入り
町の真ん中にあるサーキットに驚き
いよいよ第2戦が行われるイタリア・イモラ入りです。
ヒースロー空港からボローニャ空港に飛び、イモラ・サーキットまでレンタカーで移動しました。
イモラ市内に近づくと町のど真ん中にサーキットがあることがわかり、とても驚きました。
サーキットに到着し、ドライバー3人が集まると、すぐにドライバー交代練習。何度も繰り返し練習し、手順などを再確認します。
その後は恒例のトラックウォーク。実際にコースを歩いてみると、とても高低差のあるサーキットであることがわかりました。
コースを歩いているとあちこちに家が見え、改めて町の中にあるサーキットなんだなと感じました。
また、このイモラで忘れてはいけないのは、アイルトン・セナ選手の事故です。
事故が発生したタンブレロには、20年以上経った今でもセナ選手を偲んでブラジル国旗やTシャツが掲げられていました。僕もタンブレロで手を合わせました。
最後に、ライセンス・装備品のチェックやチームミーティングを行い、明日からの走行に備えました。
5/13(金)公式練習日
課題は、トラフィックの処理
今日は午前のブリーフィングの後、午後から公式練習です。
1回目の公式練習では15周ほど走行。ラップタイムも問題なく、すぐにコースに慣れることができました。
実際に走っても高低差は感じましたが、道幅はシミュレーターより広く感じました。
イモラ・サーキットは(コーナーの)縁石の使い方次第で、ラップタイムが大きく変わってしまいます。
日本のサーキットにはない経験が出来てとても良かったです。
しかし何といっても難しいのが、トラフィックの処理(※周回遅れの車両を抜くこと)。
道幅が狭く、右から抜くか左から抜くかは、本当に一瞬の判断が必要だなと感じました。
走行後に行われるチームミーティングは、日本のレースよりも長い時間行います。
最近は僕もミーティングにも慣れてきたので、色々と要望を言っています。
ときには難しい注文をしたりしますが、正直に話し合う場なのでクルマの情報をチーム全体でシェア出来るとても良い機会になっています。
チームミーティングの後、ドライバーだけで引き続きミーティングを行いました。
僕が課題に考えている「トラフィックの処理」について、個々のオンボード映像を見ながら「ここのコーナーはどういう風に抜くか」や「ここのコーナーでは抜けない」等、ドライバー間でも情報共有をしました。
まだ2戦目ですが、チームやドライバー同士のコミュニケーションが少し上達したかなと感じています。
<結果>
公式練習1回目:総合3位 #46 ピエール・ティリエ/マティアス・ベシェ/平川亮 1:35.586
5/14(土)予選
前日のミーティングのおかげでタイムアップ
さて予選日です。予選前の午前中に、2回目の公式練習がありました。
前日のミーティングのおかげで車のバランスが良くなり、タイムアップすることが出来ました。
しかしトップとのタイム差はまだ大きく(※この時点でトップから1秒104差)、予選に向けて大きなセットアップ変更をすることになりました。
これはエンジニアの長年の勘によるもので、僕たちドライバーは大きな改善を期待しました。
予選は、マティアス(・ベシェ)が担当。
開始直後から好タイムを連発し、ラストアタックではさらにタイムアップ出来そう・・・という所で遅い車に引っかかってしまいました。
その結果、僅差でポールポジションを逃し2位に。
しかし、車から降りてきたマティアスは、「(公式練習から)車の状態が大幅に進歩した」と言っていて、レースにはとても期待がもてそうです。
予選後にも決勝に向け簡単なミーティングを行い、この日は終了です。
<結果>
公式練習2回目:総合6位 #46 ピエール・ティリエ/マティアス・ベシェ/平川亮 1:34.985
予選:総合2位 #46 ピエール・ティリエ/マティアス・ベシェ/平川亮 1:33.815
5/15(日)決勝
思わぬ事態もTS050 HYBRIDの経験で乗り切る
いよいよ、決勝日です。
日本のレースと大きくシステムは変わらず、レース前にピットウォークがあり、その後決勝レースが行われます。
走る順番は、ピエール(・ティリエ)→僕→マティアスの順です。
午後2時、4時間の決勝レースがスタート。
アウト側のスタートで難しい位置でしたが、スタートがうまく決まって2番手のポジションをキープしました。
ピエールはスタート直後からハイペースで走行を続け、給油の為に28周目でルーティンのピットイン。
その後、3位に順位を落とすも予定の2スティントを終え、57周目にいよいよ僕に交代です。
開幕戦では、僕がドライブする前にリタイアになってしまったので、僕にとって初めての決勝レース。
「さあいくぞ!」と気合をいれてピットアウトしました。
ところが、走行を始めるとすぐにピットから無線で「燃料をセーブしろ」の嵐が(笑)
どうやら僕の前を担当したピエールが想定よりも早く2スティントを終えたため、僕の担当するスティントではかなりの燃料をセーブしなければならなくなったようでした。
ここで活きたのが、TS050 HYBRIDのテスト走行をした経験です。
WECのLMP1-Hクラスのハイブリットレーシングカーを速く走らせるためには、燃料をセーブしながらタイムをなるべく落とさず走る必要があります。ピットイン後、トップに立ってからはその経験を活かした走りを実践しました。
途中フルコースイエロー(※コース全域で追い抜き禁止。80km/h以下で走行しなければいけない)を挟んだことで燃費の問題はなくなりましたが、僕にとっては本当にいい経験になりました。
88周目、無事自分のスティントを終え、マティアスに交代。
マティアスも順調にトップを走行していたのですが、突然降りだした大雨によりコース上が再びフルコースイエローに。
マティアスはウエットタイヤに交換して走行を続けましたが、雨脚は強くなる一方。
フルコースイエローも解除されず、途中からは安全を考えてセーフティーカーが導入される程でした。
結局、40分以上のスロー走行した後、セーフティカー先導のままレース終了。
トップでチェッカーを受けました!
開幕戦のシルバーストーンではとても悔しい思いをしたので、この優勝はとても嬉しかったです。ル・マン24時間レースの前にとても良い準備が出来ました。
次戦は、ついにル・マン24時間レースです。
24時間走るというのはもちろん経験のないことですが、それに向けてしっかりとトレーニングを行っていきます。今回も応援ありがとうございました!
<結果>
決勝:優勝 #46 ピエール・ティリエ/マティアス・ベシェ/平川亮 121Laps