未来を担う5人の若手ドライバー 前編(1/2)
「手応えと成果を得た2016年」
トヨタの若手ドライバー支援プログラムには、サーキットレースを中心にしたトヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム(TDP)と、ラリードライバーを育成するTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジプログラムがあります。2016年この2つのプログラムで活躍した5人の若手ドライバー、平川亮、山下健太、坪井翔、勝田貴元、新井大輝に集まってもらい、思う存分語ってもらいます。まずは、各選手の紹介を兼ねて、それぞれの2016年シーズンを振り返ってもらいましょう。
本場のヨーロッパでチャレンジの2016年シーズン
―― まずは2016年の活動内容を振り返って、ご感想をお聞かせください。平川選手はヨーロッパの耐久シリーズに挑戦の年でしたね。
欧州ル・マン シリーズ(ELMS)参戦し、第2戦で初優勝を遂げた平川亮
平川亮(以下、平川) はい。2016年はSUPER GTのGT500クラスとともに、欧州ル・マン シリーズ(ELMS)及びル・マン24時間レース(WEC第3戦)に参戦しました。結果は自分ではまずまずだったと思っています。SUPER GTではあまりよい結果残すことができませんでしたが、ヨーロッパでは比較的結果を残せたと思います。
―― ラリーでヨーロッパに遠征されたのが、勝田選手と新井選手ですね。手応えはいかがでしたか?
ラリーチャレンジプログラムでフィンランドラリー選手権に参戦した新井大輝と勝田貴元
勝田貴元(以下、勝田) 僕は、2015年に引き続きフィンランドラリー選手権とヨーロッパラリー選手権に参戦しました。また、スポットでWRC(世界ラリー選手権)のラリーフィンランドにも出場しました。2015年はフォーミュラカーレースからラリーに転向した年でした。でも2016年は大きく成長できた部分もある反面、まだ足りないなと思う部分がたくさん出てきましたね。結果には満足していませんが、今は結果を出すよりも多くの経験を積むことを自分の中の目標にしていたので、そういう点では目標を達成できたと感じています。
新井大輝(以下、新井) 勝田選手と同様、フィンランドラリー選手権とヨーロッパラリー選手権に参戦しました。このプログラムがなかったら、海外なんて考えてもいなかったんですが、夢のような1年を送りました。チャンスをいただいて、夢を叶えるためにこの先、一歩一歩先へ進めるのかなと具体的なイメージができました。
全日本F3選手権で結果を残した山下選手と坪井選手
―― 山下選手は、念願の全日本F3選手権のチャンピオンに輝きました。また、坪井選手はF3での1年目でしたね。
全日本F3選手権で2016年シリーズチャンピオンを獲得した山下健太と関谷正徳監督
山下健太(以下、山下) ありがとうございます。全日本F3選手権を3年戦い、ようやくシリーズチャンピオンを獲得できました。2016年は欧州メーカーのエンジンが参戦してくると聞いて、マカオなどでその速さを知っていたので、厳しいシーズンになると思っていました。でも、いざ走ってみると(エンジンでは)思ったほどの差がなくて。大事なところで勝てたので(全17戦6勝)、チャンピオンになれましたね。
坪井翔(以下、坪井) 僕は1年目の全日本F3選手権を戦いました。2015年まで乗っていたFIA-F4と比べるとタイヤのグリップも全然違いますし、別のクルマに乗った感じでした。最初のうちは、勢いでそれなりに乗れたんです。でもそこからコンマ1秒、コンマ2秒を詰めていくのが難しくて。結局、1回も勝てませんでした。 ただF3以前は安定感のない、勝ったら次は負けるみたいなレースばかりしていた。そういった意味では、昨年は表彰台に上がり続けましたし(全17戦中15戦で表彰台)、安定したレースができるようになって成長したかなと思います。反面、安定を意識するあまり丸くなってしまった面もあるので、反省点は残りました。あとはツメがうまくできるようになれば結果が出るようになるのかなと思っています。
―― 皆さん、まだ若いだけにいろいろ経験を積み重ねているようですね。その中、2016シーズンで何か印象に残っていることはありますか?
欧州ル・マン・シリーズに参戦した平川亮
平川 LMP2クラスのスポーツカーでレースをするのは初めてでした。でも、スピードはSUPER GTやスーパーフォーミュラの方が速いくらいなので、それほど驚くようなことはありませんでした。 それでも海外のチームで走ること、毎回新しいサーキットで走るという、目新しい環境がいい経験になったと思います。ヨーロッパと日本を行ったり来たりの生活でしたが、基本は自分1人で行動しろと。自分で手配した飛行機やレンタカーに乗って知らない場所へ行かなければいけないというのは、最初は不安でした。でも途中から慣れました。でも海外はあまり......(苦笑)。食事とか、やっぱり日本の方がいいですね。
フィンランドラリー選手権に参戦する新井大輝
新井 僕は小さい頃にイギリスに2年間住んでいました。そこは日本人が誰もいないような場所で、英語も何もできない状態なのに、現地のローカルスクールに入れられて(苦笑)。そこでの経験があったので、今回海外での活動をするにあたってはそれほど苦労しませんでした。今回のベースはフィンランドで、イギリスではありませんでしたけど、ヨーロッパの文化は大体同じですから、すぐになじめましたね。
勝田 欧州でラリーがあるときは、大体2週間から3週間現地に滞在するんです。僕は海外戦以外に全日本選手権にもスポットで出ていたりしていたので、生活は国内と海外と半々くらいでした。ヨーロッパではラリーに対する認知度が高いんです。フィンランドは特に高くて、そこらのコンビニの店員さんですら、ラリーの話をしてきます。もちろん選手の層も厚いです。でも、その中に入っても自分がトップ集団に行けるはずだと思っていますし、行くつもりでやってきました。