RACING CAR
WEC 2016年 レース車両解説
主要諸元
型式
LMP1-H(ル・マンプロトタイプ・ハイブリッド)
車体構造
カーボンファイバー構造
ウインドスクリーン
ポリカーボネート製
ギヤボックス
横置きシーケンシャル7速
ギヤボックスケーシング
アルミニウム製
ドライブシャフト
CVジョイント式ドライブシャフト
クラッチ
ZF製マルチディスク
ディファレンシャル
ヴィスカス機械ロック式
サスペンション
プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後)
スプリング
トーションバー
アンチロールバー
前/後
ステアリング
油圧式パワーステアリング
ブレーキキャリパー
2系統油圧式ブレーキシステム、
アケボノ製モノブロック軽合金キャリパー(前/後)ブレーキディスク
ベンチレーテッド・カーボンディスク(前/後)
ホイール
レイズ製マグネシウム鍛造ホイール
フロントホイール
13 x 18インチ
リアホイール
13 x 18インチ
タイヤ
ミシュラン・ラジアル
フロントタイヤ
31/71-18
リアタイヤ
31/71-18
全長
4650mm
全幅
1900mm
全高
1050mm
燃料積載量
62.5リッター
パワートレーン
トヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)
エンジン
V型6気筒直噴ツインターボチャージャー
エンジン排気量
2400cc
エンジン出力
367kW/500PS
燃料
ガソリン
バルブ数
4バルブ/シリンダー
ハイブリッドパワー
前輪モーター+後輪モーター:367kW/500PS
パワーユニット最高出力
735kW/1000PS(エンジン+ハイブリッドモーター)
蓄電装置
ハイパワー型リチウムイオン電池
前輪ハイブリッドモーター(インバーター内蔵)
アイシンAW製
後輪ハイブリッドモーター
デンソー製
後輪モーター用インバーター
デンソー製
2015年の雪辱を期して
ゼロから開発した新車TS050 HYBRID
新型TS050 HYBRIDの最も大きな変更点は、パワートレーンのコンセプト。2.4リッターのV型6気筒直噴ツインターボガソリンエンジンと8MJへと性能アップしたハイブリッド・システムの組み合わせとなり、この両ユニットは東富士技術研究所のモータースポーツユニット開発部で開発された。
新世代の直噴ターボエンジンは、燃料流量が制限される現在のWECレギュレーションに最も適しており、また、このサーキットレースのための開発で得られた技術や知見は市販車にも活かされていくことになる。
モーター/ジェネレーター(MGU)によって減速時のエネルギーを回生する方式は、トヨタの市販車と同様であり、TS050 HYBRIDの前後輪に装着されたMGUによってレース用に開発されたハイパワー型リチウムイオン電池にエネルギーが保存され、最大効率でパワーブーストとして放出される。昨年まで使用していたスーパーキャパシタからハイパワー型リチウムイオンへの変更は、8MJへの対応を機に、ここ数年の顕著な技術の進化を反映したものである。
これまでのTS040 HYBRIDの技術は、既に現行市販車に反映されてきた。ターボエンジン技術がさらに市販車で重要度を増していく中、WECを戦う中で得られる技術やノウハウはもっといいクルマづくりに活かせるものと期待している。
新型パワートレーンのコンセプトによって新たな冷却系が必要とされ、また、ターボエンジンによって大幅に向上したトルクを許容するトランスミッションを含む新パッケージングが導入された。このパワートレーンに新たな空力コンセプトが組み合わされたTS050 HYBRIDのほぼ全てのシャシー部品は、ドイツ・ケルンのトヨタ・モータースポーツ有限会社(TMG)で設計された。
パワートレーン・コンポーネントの改良は、TS050 HYBRIDの空力パフォーマンス向上の向上にも貢献している。前輪MGUユニットの小型化が、車体底部の空気の流れを大きく変え、全体のパフォーマンス向上の一因となった。サスペンションの改良も、タイヤ摩耗を減らすことに貢献している。