RACING CAR
WEC 2017年 レース車両解説
主要諸元
型式
LMP1-H(ル・マンプロトタイプ・ハイブリッド)
車体構造
カーボンファイバー構造
ウインドスクリーン
ポリカーボネイト製
ギヤボックス
横置きシーケンシャル6速
ギヤボックス
ケーシングアルミニウム製
ドライブシャフト
CVジョイント式ドライブシャフト
クラッチ
マルチディスク
ディファレンシャル
ヴィスカス機械ロック式
サスペンション
独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後)
スプリング
トーションバー
アンチロールバー
前/後
ステアリング
油圧式パワーステアリング
ブレーキキャリパー2
系統油圧式ブレーキシステム、アケボノ製モノブロック軽合金キャリパー(前/後)
ブレーキディスク
ベンチレーテッド・カーボンディスク(前/後)
ホイール
レイズ製マグネシウム鍛造ホイール
フロントホイール
13 x 18インチ
リアホイール
13 x 18インチ
タイヤ
ミシュラン
フロントタイヤ
31/71-18
リアタイヤ
31/71-18
全長
4650mm
全幅
1900mm
全高
1050mm
燃料積載量
62.5リッター
パワートレーン
トヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)
エンジン
V型6気筒直噴ツインターボチャージャー
エンジン排気量
2400cc
エンジン出力
367kW/500PS
燃料
ガソリン
バルブ数
4/シリンダー
ハイブリッドパワー
前輪モーター+後輪モーター:367kW/500PS
パワーユニット最高出力
735kW/1000PS(エンジン+ハイブリッドモーター)
蓄電装置
ハイパワー型リチウムイオン電池
前輪ハイブリッドモーター
アイシンAW製
後輪ハイブリッドモーター
デンソー製
ル・マン24時間レースの勝利を目指し
全面改良が進められた2017年仕様のTS050 HYBRID
2017年仕様のTS050 HYBRIDは2.4リッターV6ツインターボ過給ガソリンエンジンに、8MJ対応のハイブリッド・システムを組み合わせ、総システム出力は1,000馬力を誇る。
東富士研究所によって開発された新型エンジンは、燃焼室、シリンダーブロック、シリンダーヘッドなどの主要部品を全面改良し、圧縮比が高められ、更なる熱効率の向上が図られている。
加えて、ターボチャージャーのサイズ見直しと共にインペラ形状が改良され、応答性と過渡特性の改善によってターボラグは減少。また、インタークーラーは、熱効率の改良により、高温域での性能が向上された。
ハイブリッド・システムもまた全面改良された。モーター/ジェネレーターユニット(MGU)は更に小型化され、改良された高出力型リチウムイオン・バッテリーと共に軽量化にも貢献している。こうして進化した高度なハイブリッド技術は、市販車にフィードバックされ、一般のお客様へ展開されると共に、将来にわたっての「もっといいクルマづくり」に繋げられる。
今シーズンへ向け、TS050 HYBRIDの全面改良を果たすために、東富士研究所とTMGの技術陣は、あらゆるコンポーネントにわたり改善を行った。 今年、変更されたレギュレーションの目的は、安全性向上のための速度抑制にあり、空力効果を制限することで、ル・マンでの数秒のラップタイムダウンを目指している。具体的には車両フロントの空力部品(スプリッター)の高さを15mm上げると共に、リアのディフューザー幅が大幅に狭められた。
コンピュータによる計算流体力学(CFD)と風洞試験により、TOYOTA GAZOO RacingはTS050 HYBRIDの空力的コンセプトを見直し、性能改善するという難題に挑んだ。持ち上げられたフロントノーズと特徴的なサイドポンツーンなどが目立った変更点である。
昨年は1チーム1シーズンあたり3種類の空力パッケージを使用出来たが、今年は2種類に制限された。また、タイヤの使用セット数も削減される。今季は車両毎に4セットプラス2本のスペアタイヤのみで、予選と6時間の決勝レースを戦うこととなる。チームとミシュランとの協力による新しいコンパウンドと構造を持つタイヤでこの新規定に対応すると共に、サスペンションジオメトリの最適化も進めることで、タイヤ摩耗の低減を行う。
その他の規則変更点として、後方視界用のカメラからの映像をコクピット内に設置されたスクリーンに表示することが義務づけられた。これに加えて、ハイブリッドカーはサイドミラーにもエンジンの状態を示すライトの装着が義務づけられ、視認性の承認を受ける必要がある。もしレース中に緑のセーフティライトが点灯した場合、その車両はピットで修理を行わなくてはならない。