GR010 HYBRID レース車両解説
GR010 HYBRID、さらなる改良を重ねて2022年はシリーズ4連覇とル・マン24時間5連覇に挑む
「GR010 HYBRID」は、TOYOTA GAZOO Racing(以下 TGR)が2021シーズンに向け開発、WEC(世界耐久選手権)のLMH (Le Mans Hypercar)規定にて最高峰のハイパーカークラスに参戦させた車両です。WECでは2020年まで最上位クラスのLMP1車両が王座を争ってきました。TGRはTS050 HYBRIDで2018年から2020年までル・マン24時間レース3連覇を含む2シーズン連続シリーズチャンピオン獲得を達成しました。このTS050 HYBRIDの後継車両として、2021年に登場したのがGR010 HYBRIDです。
GR010 HYBRIDは、昨シーズンが開設1年目のハイパーカークラスに7号車と8号車の2台で出走。シリーズ全6戦のうち第1戦、第2戦、第6戦で8号車、第3戦、第4戦、第5戦で7号車が優勝し、GR010 HYBRIDはシリーズ全勝を遂げるとともに、ル・マン24時間レース4連覇、3年連続シリーズチャンピオン獲得を達成しました。
2シーズン目のWEC ハイパーカークラスに出走する、2022年型GR010 HYBRIDは昨年の進化型です。500kW/680PSを発揮する排気量3.5LのV型6気筒直噴ターボ過給エンジンで後輪を駆動、リチウムイオン電池で作動し200kW/272PSを発揮するハイブリッドモーターで前輪を駆動するという基本構造には変わりがありませんが、WECが新たに導入した100%再生可能燃料に対応するための改良をエンジンに加えています。また、タイヤとホイールのサイズが変更されました。前輪は12.5x18インチマグネシウム鍛造レイズ製ホイールに29/71-18サイズのミシュランタイヤを装着、後輪は14x18インチホイールに34/71-18サイズのタイヤという組み合わせとし、合わせて一部ボディワークも改変しています。
WECでは参加車両のパフォーマンスを均等化するため、競技規則に定められたいわゆるBoP(性能調整)により出力が適宜制限されます。昨年全戦で優勝したGR010 HYBRIDには、今シーズン開幕時点で昨年より厳しいBoPが課せられ、1スティントあたりに放出できるエネルギー量も抑制されました。また、フロントのハイブリッドモーターを使用できる速度域もBoPによる規制対象ですが、今シーズン開幕時点でGR010 HYBRIDにはドライ路面・ウエット路面とも190km/h以上と定められたため、190km/h未満の速度域ではエンジンのみの後輪駆動で走らなくてはならなくなりました。
このように厳しくなった規制下でも最大限の走行性能を発揮できるよう、開発陣は規制の範囲内で高出力とコントロール性を両立させる制御技術を今後も追求していきます。そして、シリーズ第3戦である伝統のル・マン24時間レース5連覇及びシリーズ4連覇を目指します。
主要諸元
ボディ | カーボンファイバー構造 |
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ギアボックス | 横置き7速シーケンシャル |
ドライブシャフト | トリポッドCVジョイント式ドライブシャフト |
クラッチ | マルチディスク |
ディファレンシャル | 機械式ロッキングディファレンシャル |
サスペンション | プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後) |
スプリング | トーションバー |
アンチロールバー | 前/後 |
ステアリング | 油圧式パワーステアリング |
ブレーキ | アケボノ・モノブロック軽合金キャリパー/ベンチレーテッドディスク |
ホイール | レイズ マグネシウム合金,フロント:12.5x18インチ,リア:14x18インチ |
タイヤ | ミシュラン・ラジアル,フロント:29/71-18,リア:34/71-18 |
全長 | 4900mm |
全幅 | 2000mm |
全高 | 1150mm |
車重 | 1040kg |
燃料タンク容量 | 90リッター |
エンジン形式 | V型6気筒直噴ツインターボチャージャー |
バルブ数 | 4/シリンダー |
エンジン排気量 | 3.5リッター |
燃料 | ガソリン |
エンジン出力 | 500kW/680PS |
ハイブリッドパワー | 200kW/272PS |
バッテリー | ハイパワー型・トヨタ・リチウムイオンバッテリー |
フロントモーター/インバーター | アイシンAW/デンソー製 |