GR010 HYBRID ~レース参戦車両~ 解説
ハイパーカー3年目を迎えるGR010 HYBRID
2023年型はボディ改良や出力の向上、そして規定に沿った軽量化を行う
「GR010 HYBRID」は、TOYOTA GAZOO RacingがTS050 HYBRIDの後継車両としてLMH (Le Mans Hypercar)規定に準拠して開発し、2021年から始まったWEC(世界耐久選手権)最高峰のハイパーカークラスに参戦させた車両です。2021年、開設1年目のハイパーカークラスには7号車、8号車の計2台が参戦し、シリーズ全戦で優勝、ル・マン24時間レース4連覇、3年連続シリーズチャンピオン獲得を達成しました。2年目の昨年も、ル・マンでは1-2フィニッシュで5連覇を飾り、シリーズでも4シーズン連続でマニュファクチャラーとドライバーの両タイトルを獲得しました。
3シーズン目のWEC ハイパーカークラスに出走する2023年型GR010 HYBRIDは、昨シーズンまで2年にわたる実戦を通して蓄積した知見を基に信頼性と効率を最適化するため細かい領域で改良を施した進化型です。
2023年仕様のGR010 HYBRIDで最もわかりやすい進化のポイントは、ボディワークにあります。操作性と空力安定性を向上させるため、車両前部左右にダイブプレーン空力デバイスが新たに設置され、リアウィングのエンドプレートが小型化されたほか、細かなディテールが変更されています。また、ブレーキの冷却促進とレース中の迅速な冷却設定の変更を目的として、車両前後に新たなベンチレーションが設けられました。加えて、夜間走行時の視認性向上のため、ヘッドライトのレイアウトが変更されました。
3.5リッターV型6気筒直噴ターボ過給エンジンで後輪を駆動、リチウムイオン電池で作動し200kW(272PS)を発揮する電気モーターで前輪を駆動するパワートレーンの基本は従来通りですが、軽量化されるとともに信頼性が高められています。ただし世界選手権出走時にはBoP(性能調整)によりでは4輪出力の合計が規制の対象となります。
また2023シーズンのレギュレーションで許される車両最低重量1040kgに近づけるため、車両重量を軽減する作業が進められました。これはまだGR010 HYBRIDが設計段階だった2020年に決められていたハイパーカーのレギュレーション変更に対応しきれなった部分を補うものです。ただしレース出走時の車両重量にはBoPに応じて追加ウェイトが課せられる場合があります。
ハイパーカーとして3シーズン目を迎えるGR010 HYBRIDは、シリーズ第4戦である伝統のル・マン24時間レースでの6連覇及びシリーズ5連覇を目指します。
主要諸元
ボディ | カーボンファイバー構造 |
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ギアボックス | 横置き7速シーケンシャル |
ドライブシャフト | トリポッドCVジョイント式ドライブシャフト |
クラッチ | マルチディスク |
ディファレンシャル | 機械式ロッキングディファレンシャル |
サスペンション | プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後) |
スプリング | トーションバー |
アンチロールバー | 前/後 |
ステアリング | 油圧式パワーステアリング |
ブレーキ | アケボノ・モノブロック軽合金キャリパー/ベンチレーテッドディスク |
ホイール | レイズ マグネシウム合金,フロント:12.5x18インチ,リア:14x18インチ |
タイヤ | ミシュラン・ラジアル,フロント:29/71-18,リア:34/71-18 |
全長 | 4900mm |
全幅 | 2000mm |
全高 | 1150mm |
車重 | 1040kg |
燃料タンク容量 | 90リッター |
エンジン形式 | V型6気筒直噴ツインターボチャージャー |
バルブ数 | 4/シリンダー |
エンジン排気量 | 3.5リッター |
燃料 | ガソリン |
エンジン出力 | 520kW/707PS |
ハイブリッドパワー | 200kW/272PS |
バッテリー | ハイパワー型・トヨタ・リチウムイオンバッテリー |
フロントモーター/インバーター | アイシン / デンソー製 |