2021 Rd.1SPA-FRANCORCHAMPS

WEC 2021 第1戦(開幕戦)スパ・フランコルシャン6時間レース

    2021シーズンを戦うGR010 HYBRID

    プレビュー

    「ハイパーカー」新世代 GR010 HYBRID 開幕戦デビュー

    1980年代から90年代にかけて活躍した、伝説的なグループCカーの直系の後継者とも言えるLMP1カーの時代が終わり、耐久レースのトップカテゴリーはル・マン・ハイパーカーの新時代へと移ります。

    WECの世界チャンピオンを勝ち取り、ル・マン24時間レースを3度制覇したTOYOTA GAZOO Racingは、2021年最初のマニュファクチャラーとして、スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスと共にハイパーカーのグリッドに並ぶことになります。そして今後はアウディ、フェラーリ、プジョー、ポルシェといったライバルもこの戦いに加わる予定です。

    スパ・フランコルシャンのコース

    プレシーズンの充分なテストプログラムにより、新型ハイパーカー GR010 HYBRIDの実戦デビューへの準備は整っています。チームは世界チャンピオンの防衛と、ル・マン24時間レース4連覇を目指し、昨年と同じドライバーラインナップでシーズンに臨みます。

    昨年ワールドチャンピオンに輝いた、チーム4年目のシーズンとなる小林可夢偉、マイク・コンウェイとホセ・マリア・ロペスの3名がGR010 HYBRID 7号車を、そして昨年のル・マン24時間勝者である中嶋一貴、セバスチャン・ブエミとブレンドン・ハートレーの3名がGR010 HYBRID 8号車をドライブします。

    昨年10月の初走行以来、チームは3つのサーキットで合計数千kmに及ぶテスト走行をこなしてきましたが、来る開幕戦スパ6時間に向けた総仕上げとして、4月26日(月)と27日(火)の2日間、このベルギーの伝統的なサーキット、スパ・フランコルシャンで行われるプロローグテストに臨みます。

    スパ・フランコルシャンサーキットのコース図

    このプロローグテストにおいて、GR010 HYBRIDは初めてライバル車両と同時にサーキットを走ることになります。チームとドライバーにとっては、旧来のLMP1カーとして参戦する直接のライバルであるアルピーヌと初めて相まみえることになり、それはコース上のトラフィックの中で新型車を評価する重要な機会でもあります。

    GR010 HYBRIDは、120km/hを超えると前輪に装着された最大272馬力のモータージェネレーターユニットと3.5リッターV6ツインターボエンジンを合わせて680馬力を発揮する4輪駆動として走行できます。燃料消費の制限はありません。昨年までの、合計1000馬力を発揮していたTS050 HYBRIDはGR010 HYBRIDよりも162kg軽量でしたが、周回ごとの燃料使用量が厳しく制限されていたため、最高速度に影響がありました。

    この様に、圧倒的な強さを誇ったTS050 HYBRIDとは大きく異なるGR010 HYBRIDを操るドライバーには、これまでとは異なる操作が要求されます。エンジニアにとっても新しいハイパーカーにおいては、特にLMP2カーやGTカーを追い越す際などに、最大限のパフォーマンスを引き出すための調整が必要です。

    また、コース上でのパフォーマンスだけでなく、サーキットにおけるチームクルーの総人数が43人に制限されるという新たなレギュレーションにも対応する必要があります。そのためには、メカニックとエンジニアクルーに関して、サーキットの現場における高度なサポートを維持しながらも、組織の柔軟かつ大幅な再編成が要求されます。開幕戦スパ6時間レースは、このレギュレーションが適応される最初のレースとなります。

    4月26日(月)と27日(火)のトータル12時間にわたるプロローグテストに続き、29日(木)に1回予定されている練習走行でレースイベントが始まります。30日(金)は2度の練習走行と予選が行われる忙しい一日となり、今季より、予選は1台の車両につき1人が1周のみアタックする新たなフォーマットで実施され、翌5月1日(土)に行われる決勝レースのスターティンググリッドが決定されます。

    TOYOTA GAZOO Racingは、このスパで2013年に初めてWECのレースを戦って以来、通算5勝をあげています。強力なライバルとの激戦が予想されますが、チームの目標は、最大限のポイントを獲得してシーズンのスタートを切ることです。

    村田久武(TOYOTA GAZOO Racing WEC チーム代表):

     ハイパーカーによる耐久レースのエキサイティングな新時代が始まりました。ル・マンでは多くのトップチームと競い合うことになります。ファンの皆様はそれを心待ちにしていると思いますし、我々も同じ気持ちです。TOYOTA GAZOO Racingが、この新時代のスターティンググリッドに立てることを誇りに思います。我々のWECプロジェクトの第一段階を締めくくったTS050 HYBRIDでは、レーシングハイブリッド技術の向上に徹底的に取り組み、お客様のための「もっといいクルマづくり」に繋げてきました。ここからは第二段階に入り、将来、もっとエキサイティングなスポーツカーをお客様にお届けできるよう、レーシングハイブリッド技術の限界をさらに押し上げ、再び「ワンチーム」で戦っていきます。GR010 HYBRIDを通して、人を鍛え、技術、プロセスをさらに強化していきます。絶対に負けられないという気持ちで我々をプッシュしてくる競合チームを相手に、決して簡単なシーズンにはならないとは思いますが、私たちは決して諦めません。

    パスカル・バセロン(テクニカル・ディレクター):

     スパ開幕戦は、GR010 HYBRIDがシーズン前テストを終え、生まれたばかりの我々のハイバーカーが新たな段階のスタートを切るということを意味します。我々は2020年10月にポール・リカールでGR010 HYBRIDを初めて走らせて以来、集中的なテストプログラムをこなし、クルマのキャラクターと新たなミシュランタイヤについて着実に学んできました。TS050 HYBRIDと比較すると、車重やパフォーマンスのパラメータに大きな違いがあり、新たに必要となるシステムも全く異なるため、エンジニア、ドライバーの双方ともに短期間で多くのことを学ぶ必要がありました。テストにおいてはよくあることですが、時には順調にいかないこともありました。アラゴンでは3日間のテストデーが予定されていましたが、激しい雪と、悪天候などに妨げられ、予定通りに完了できませんでした。幸運にもシーズンの開幕が遅れたことで、スパの前に更なるテストを行うチャンスができたので、最終的には目標としていた走行距離をこなすことができ、デビュー戦の前に、狙い通りの全てのテスト項目を完了できました。

    小林可夢偉(GR010 HYBRID #7):

     今の難しい世界状況の中で、またレースができることをとても嬉しく思います。決して理想的な環境ではありませんでしたが、チームは素晴らしい仕事でGR010 HYBRIDの改良を進め、デビュー戦への準備を整えてくれました。我々はテストの中でクルマについて多くを学びました。新型車両投入時にはよくあることですが、予想外の驚きもあるかも知れません。これから実際のレースを戦い、コース上のトラフィックや、ハイパーカークラスの強力なライバルとの中で新型GR010 HYBRIDがどれだけ戦えるのか、その挑戦を楽しみにしています。

    GR010 HYBRID 7号車の小林 可夢偉
    マイク・コンウェイ(GR010 HYBRID #7):

     新しいシーズン、そして新たなハイパーカーの時代が始まることにワクワクしています。最高のチームメイトである可夢偉とホセ、そして素晴らしいチームに恵まれ、タイトル防衛という目標に向けて準備は万端です。GR010 HYBRIDでは既に多くのテストをこなしてきていますが、最高の性能を引き出すためにはさらにやるべきことがあり、改良を続けていかなくてはなりません。スパはそのためにも重要なステップであり、レースがとても楽しみです。

    ホセ・マリア・ロペス(GR010 HYBRID #7):

     マイク、可夢偉と共にワールドチャンピオンを獲得した昨シーズン最終戦のバーレーンからずいぶん長い時間が経ったように感じます。もちろんその時も最高の気分でしたが、再びレースを戦い、タイトル防衛、そして今度こそル・マンで勝つために戦う時がきました。このような困難な状況下にもかかわらず、チームはハードワークでこのスパに向けてGR010 HYBRIDの準備をしてくれました。全く新しい車両を開発するという挑戦は常に素晴らしい体験ですが、まだその途上です。我々はスパで力強いパフォーマンスを示し、さらに改良していくため努力を続けます。

    中嶋一貴(GR010 HYBRID #8):

     GR010 HYBRIDでの初めてのレースへ向け、スパに向かうのが楽しみです。この冬はなかなか大変でした。特に僕個人は、幾つかのテストを日本でのレース活動のために休む必要があり、そしてようやく参加できたアラゴンのテストは雪で走れませんでした。このような状況で、全てが順調ではありませんでしたが、チームは懸命な作業でハイパーカー時代の開幕戦へ向け、GR010 HYBRIDを準備してくれました。チームの誰もがこの新たな挑戦を楽しみにしており、もちろん簡単ではないでしょうが、成功すると信じています。

    GR010 HYBRID 8号車の中嶋 一貴
    セバスチャン・ブエミ(GR010 HYBRID #8):

     長い冬季オフシーズンの準備期間を経て、ついにスパでのプロローグとデビュー戦を迎えられるのはとても嬉しいです。新型のGR010 HYBRIDとハイパーカーによる耐久レース新世代を、ファンの皆様もとても楽しみにしていると思います。今年初めから複数回のテストをこなしてきましたが、最初はクルマについて知る事から始め、ル・マンへ向けたセットアップの調整ができるまでに到りました。デビュー戦への準備は万全で、一刻も早くハイパーカーカテゴリーでライバルと戦いたいです。

    ブレンドン・ハートレー(GR010 HYBRID #8):

     新たなハイパーカー時代の最初のレースに向けての広範囲で大規模なテストプログラムを終え、充分な準備ができたと感じています。我々チームだけでなく、ファンの皆様の間でも、どんなレースになるのか、どれだけ接近したレースになるのかといった期待が高まっていることでしょう。誰もが素晴らしいサーキットであるスパでハイパーカーによる最初のレースを戦うことを楽しみにしています。