2021 Rd.2PORTIMAO
WEC 2021 第2戦 ポルティマオ8時間レース
プレビュー
TOYOTA GAZOO Racing（以下、TGR）は、GR010 HYBRID ハイパーカーで挑むFIA世界耐久選手権（WEC）第2戦ポルティマオ8時間レースで、更なるライバルを迎え、トヨタの耐久レース参戦史に新たな1ページを刻みます。
ポルトガル・ポルティマオ近郊に位置するアルガルヴェ・サーキットで来週末行われるこのイベントは、トヨタが世界トップレベルのスポーツカー耐久レースシリーズに参戦を開始して以来、記念すべき100戦目のレースとなります。1983年の富士1000kmレースでトヨタ・トムス83Cがデビューして以来、トヨタのプロトタイプレーシングカーは、これまで世界耐久選手権を99戦にわたって戦ってきました。
1か月前の今季開幕戦スパ・フランコルシャン6時間レースでハイパーカーでの歴史的初勝利を飾ったTGRは、アルピーヌに加え、新たなライバルとして今大会に1台が出場するスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスとハイパーカーカテゴリーで競い合います。開幕戦スパ6時間で勝利を挙げたGR010 HYBRID 8号車のセバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、ブレンドン・ハートレーはドライバーズランキングで首位に立っており、ディフェンディングチャンピオンである7号車のマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスは同3位からタイトル防衛を目指します。
WEC初開催となる今回のポルティマオは、トヨタにとって、スポーツカーレースの世界選手権を戦う21ヵ所目のサーキットです。トヨタが参戦した初レースの1983年の富士1000kmレースはポルシェ956を駆るデレック・ベルとステファン・ベロフが制し、トヨタ初のグループC専用車、トヨタ・トムス83Cは、星野薫と松本恵二、そして後に日本人初のル・マンウィナーとなる関谷正徳のドライブにより9位でフィニッシュしました。トヨタ・トムス83Cで同レースにエントリーしていたデレック・ダリー、ジェフ・リース、鈴木利男組の車両は練習走行中にクラッシュし決勝には出場できませんでした。
その後、トヨタは懸命な努力とチームスピリットにより改善を続け、成績とパフォーマンスは徐々に向上しました。そして、シリーズフル参戦3年目となる1992年のモンツァで、TS010によって世界耐久選手権で初勝利を達成しました。この初勝利以来、トヨタのチームで世界耐久選手権に最も多く出場し、最多の勝利を挙げているのはブエミで、これまで60戦に出場し、18勝を挙げています。
トヨタはこれまで、99戦にわたる世界耐久選手権への参戦のうち、半数以上の56戦で表彰台に上がり（78回）、31勝をあげました。そしてチームの目標は来るポルトガルでこの数字をさらに増やすことです。
ポルティマオでの世界耐久選手権は初開催ですが、TGRにとっては親しみ深いサーキットでもあります。ポルトガルのアルガルヴェ地方に位置する全長4.684kmのこのコースでは、ここ数年、チームが定期的に耐久テストを行ってきました。チームが最後にポルティマオで走行したのは、昨年12月、GR010 HYBRIDの初めての耐久テストを行った時です。
ハイパーカーカテゴリーでは、シーズン中の車両仕様変更が認められていないため、GR010 HYBRIDは前戦のスパでの仕様と同じです。しかし、ドイツ・ケルンと東富士のエンジニアは、この5週間、前戦で起こった技術的課題を解決するために、車両セットアップや制御系の最適化に全力を注いできました。
ドイツ・ケルンからトレーラーで3日間かけて運ばれるGR010 HYBRIDは、6月10日（木）に車検と最終的な準備を行い、11日（金）の午後に行われる公式練習1回目に臨みます。12日（土）は2回の練習走行に続き、決勝のスターティンググリッドを決定する予選を実施。8時間で戦われる決勝レースは13日（日）の現地時間午前11時（日本時間午後7時）にスタートが切られます。
我々は常に次の挑戦、次の勝利、次の技術革新のために未来を見据えていますが、トヨタの耐久レースにおける歴史を振り返ると感慨深いものがあります。TGRのチーム全員が、参戦100レース目という記念すべき歴史の一員であることを誇りに思っています。今までの歴史、レース参戦に多大な貢献をしてきた先駆者たちへの思い、そして、今までのエキサイティングなレースやそれに伴ってきた多くの課題といったことを振り返る機会を、今回の記念レースが与えてくれると思っています。100戦目のレースを祝うとともに、我々はジム・グリッケンハウス氏と彼のチームのWEC初挑戦を心より歓迎します。そして、彼らの参加によって、ファンの皆様にとってもレースがエキサイティングなものになることを望んでいます。競争が熾烈なハイパーカーカテゴリーにおいて、今年はグリッケンハウスと共に戦っていきますが、今後アウディ、フェラーリ、プジョー、ポルシェも加わってきます。次の挑戦への準備はできていますが、開幕戦スパでは改善点も見つかり、この数週間、ポルティマオへ向けた準備のため、信頼性向上とオペレーション強化のためにハードワークを継続してきました。
ポルティマオのコースは走行テストで走っているのでよく知っていますが、レースとして他の車両と走った経験はありません。しかし、厳しいシーズンスタートのあと、準備を充分にしてきました。ハイパーカーカテゴリーの新たなライバルの参戦をうれしく思います。ライバルの存在は、我々がどの位置にいるのか、ル・マンへ向けて何をすべきか示す良い指標になります。エキサイティングな上位争いができることを期待しています。
WECのシーズンが本格的に始まり、レースシーズンのリズムに戻れたのは素晴らしいことです。このレースが我々にとっての世界チャンピオン防衛に向けた本来のスタートになることを望んでいますし、とても楽しみにしています。開幕戦スパではGR010 HYBRIDについて多くのことを学んだので、それを活かしてポルティマオに臨み、改良を続けて行きます。苦戦したプロローグのあと、スパの決勝レースでは勝てるだけの素晴らしいポジションにつけられましたが、勝利は叶いませんでした。それ故にポルティマオでは目標はひとつです。
ポルティマオは既にGR010 HYBRIDの走行テストで走っているので、スパに比べれば、準備という点で若干進んでいると思います。雰囲気の良いコースで、ポルトガルは天候も安定しているでしょう。このコースで好きなのは中間セクションで、アップダウンが激しく、まるでジェットコースターのようなので、常に何が起こるかわからず、気が抜けません。とてもチャレンジングなコースなので、GR010 HYBRIDでレースをするのが待ち遠しいです。
初のハイパーカーでの勝者として歴史に名を残すことができたのはとても嬉しいことですが、スパはシーズンスタートの1戦に過ぎず、GR010 HYBRIDと共に更なる勝利を目指していきます。ポルティマオは、我々の真のライバルとなるグリッケンハウスが参戦することもあり、興味深いレースになるでしょう。接戦となり、簡単な週末にならないことは間違いないですが、ハイパーカー同士のバトルはエキサイティングなものになるでしょうし、再び表彰台の中央に立つべくプッシュしていきます。
トヨタの耐久レース参戦の歴史の中で最多勝利を飾ってきたということはもちろん光栄ですし、さらに勝利を重ねて行きたいと思っています。今回、トヨタの世界耐久選手権参戦100戦目という記念すべきレースが迎えられたことは素晴らしいと思います。しかし、私の目標は既に未来に向かっており、次のレース、そして何と言ってもル・マンです。その次に重要な今大会ポルティマオはプロローグがあったスパよりも走れる時間が少ないので、正しいセットアップをいち早く見出し、練習走行で多くの情報を得なければなりません。連勝へ向けて全開でアタックします。
GR010 HYBRIDと共にポルティマオでレースを戦うのが楽しみです。特に今大会は新たなハイパーカーカテゴリーでのライバルも出てきます。他のハイパーカーとGR010 HYBRIDを直接比較できるのは良いことです。いつもならル・マンへ向かっている時期なので、6月半ばにポルトガルに向かうというのはちょっと不思議な気分ですが、8月に移った最大のイベントであるル・マンへ向けての準備という点においても重要なステップですし、スパでの勢いを維持しプッシュしていきます。
