WEC

川井ちゃん、浜島さん、WECっておもしろいんですよ! 前編「F1とWEC。レースや車両、観戦スタイルの違い」

川井ちゃん、浜島さん、WECっておもしろいんですよ!
前編「F1とWEC。レースや車両、観戦スタイルの違い」(2/2)

まったく違うF1とWECのレース観戦スタイル

小林可夢偉

「WECに出たことで、
耐久レースのおもしろさを実感できるようになった」
小林可夢偉

―― パワーユニットの違いはなかなか興味深いお話ですね。少々ディープな方向に行きそうなので話題を変えましょう(笑)皆さんはWECにどんなイメージをお持ちでしょうか?

可夢偉 F1のようなスプリントレースだと1回でも接触とかペナルティがあったら、そこでレース終了じゃないですか。
でも耐久レースはこの間のメキシコ戦(WEC第5戦)みたいに、ドライブスルーペナルティがあっても表彰台・・・もしかしたら優勝もありえる。
F1はそうなったらノーチャンス。
実際にWECに出たことで、耐久レースのおもしろさを実感できるようになりました。

WEC第5戦メキシコ6時間レースでは、小林可夢偉選手もドライブするTS050 HYBRID 6号車が3位表彰台を獲得。レース序盤にドライブスルーペナルティを受け、順位を落とすも見事に挽回した結果だった
WEC第5戦メキシコ6時間レースでは、小林可夢偉選手もドライブするTS050 HYBRID 6号車が3位表彰台を獲得。レース序盤にドライブスルーペナルティを受け、順位を落とすも見事に挽回した結果だった。

川井 実は、僕の初めての大きなレースの仕事が1984年に富士で開催されたWEC in JAPANだったんだよ。85年、86年も取材に行って・・・一貴君のお父さん(中嶋悟氏)がトヨタでポールポジションを獲得したときもあったよね。青と白のクルマで。

一貴 1985年だったかな。そうですね。

川井 「おー、中嶋さんがポールだ、ポール!」ってみんな騒いでたのを覚えてるよ。でも、Tカー(スペアカー)でマークしたタイムだったから無効になっちゃって、幻のポールポジションになっちゃったんだよね。
ル・マンに取材に行ったのは、たしか91、2年に行ったのが最後だったかな。ユノディエールにシケインができる前後だよ。

中嶋一貴選手の父であり、日本人初のF1レギュラードライバーの中嶋悟氏はトヨタからル・マン24時間レース、WECに出場経験がある。写真は1985年のル・マン24時間レースのもの。写真中央にトレードマークである「NAKAJIMA」のヘルメットを被ってクルマに乗り込む中嶋悟氏が写っている
中嶋一貴選手の父であり、日本人初のF1レギュラードライバーの中嶋悟氏はトヨタからル・マン24時間レース、WECに出場経験がある。写真は1985年のル・マン24時間レースのもの。写真中央にトレードマークである「NAKAJIMA」のヘルメットを被ってクルマに乗り込む中嶋悟氏が写っている。

浜島 あの頃は、たしかF1とル・マン24時間レースのスケジュールが重なってなかった頃だよね?

川井 そうそう。あのときはF1メキシコGPがあって、その次にル・マン24時間レース、F1カナダGPと旅行した憶えが・・・今はとてもそんな無理なスケジュールできません!(笑)

可夢偉 それはなんでですか? 体力的に?(笑)

川井 今のF1って大量のデータを見なきゃいけなくて、大変でさぁ。だから、ただ単にレースを見に行くならいいけど、考えるのは・・・。
だからレースを見に来るファンの人達に言いたいのは「レースは考えてみちゃダメ」ってことだね!

浜島、一貴、可夢偉 爆笑。

可夢偉 え、でもそれってまさに「川井さんのこと」じゃないですか?(笑)

川井 特に耐久レースはF1みたいに「セクター2はレッドブルが速いんだよ」とか、考えてレースを見ちゃダメ!(笑)
個人的だけど耐久レースは、焼き鳥を買ってスタンドでビール飲みながら観戦するイメージかな(笑)あ、もちろんクルマを運転する人は飲んだらダメですよ!(苦笑)
耐久レースは、レース時間が長いからビール飲みながらワイワイと応援できる楽しさがある。これはF1にはないレースの楽しみ方だね。
この間のモンツァ(F1第14戦イタリアGP)なんて1時間17分で終わっちゃって『え、もう終わり?』って感じだったから。

ル・マンでビールを飲みながら観戦するファン。川井さん曰く、こういった楽しみ方ができるのも「耐久レースならでは」
ル・マンでビールを片手にレースを観戦するファン。
川井さん曰く、こういった楽しみ方ができるのも「耐久レースならでは」。

可夢偉 WECはレース自体が長いから、ずっと集中して見るよりも、なんとなくレースの流れをつかみながら、ところどころ見るのがいい。
あと観戦という部分では、(チケットの料金や入手の面で)パドックへ行きやすいし、結構間近でクルマを見られるし、ドライバーの数も多い。サイン会とかも長いですよ。

川井 サイン会の時間って長いの? 

一貴 ル・マンは1時間30分やりましたよ!!腱鞘炎になるかと思いました(苦笑)

浜島 それだけファンが来るんですか!?

一貴 ル・マンは来ますね。富士でもいっぱい来てくれますから、ありがたいです。

ル・マン24時間レースでのサイン会の様子。ファンの列が途切れることはなく、中嶋一貴選手は1時間30分サインし続けた
ル・マン24時間レースでのサイン会の様子。
ファンの列が途切れることはなく、中嶋一貴選手たちは1時間30分サインし続けた。

可夢偉 とにかくWECはファンとドライバーの距離が近いカテゴリーだと思います。レースがはじまったら思い思いのスタイルで自由に見てください・・・って僕は思いますね。
レースが長いから途中で展開がよくわからなくなってくるけど、そこはすごく便利なWECの公式アプリを使うと便利。順位、タイムとかいろいろ分かるんです。僕たち5号車、6号車のオンボードも見ることができるんですよ。

一貴 そういえば可夢偉は、ル・マンのレース中ずっとiPadでそのアプリ見てたね(笑)

可夢偉 ル・マンは夜中にサーキットでライブとかやっているし、走っていたら(コース脇から)クルマの中までバーベキューの臭いが漂ってきたりするんですよ!!
だからF1とは雰囲気がまったく違いますね。

中嶋一貴

「WECは、
いい意味でゆる〜く観戦できます(笑)」
中嶋一貴

一貴 パドックもF1とWECでは雰囲気が違いますよね。
WECは可夢偉も言ったようにドライバーとファンの距離が近い場所だけど、F1は限られた人たちしかいないイメージがあります。

川井 どっちかというとF1はマニア向けで、WECは家族向けって感じゃないかな?
家族サービスができるし。

可夢偉 WEC富士も6時間のレースだし、長いからキャンプをやるようなスタイルで見ている人もいますね。
あと僕のオススメのアプリもぜひ使ってみてください(笑)

一貴 いい意味でゆる〜く観戦できます(笑)

富士スピードウェイのコースサイドから観戦するファン

<前編 あとがき>
F1の裏も表も知る川井さん、浜島さん。だからこそ彼らもWECへの興味は大きいようです。次回の後編では、頂点レースの現場を知る皆さんだからこそ語れるタイヤの話やレース戦略、そしてWEC富士の観戦ポイントを語ってもらいます。お楽しみに。