川井ちゃん、浜島さん、WECっておもしろいんですよ!
番外編「F1通も唸らせた!?WECの魅力」(1/2)
先日行われた世界耐久選手権(WEC)第7戦 富士6時間レース。
TS050 HYBRID 6号車が小林可夢偉選手の活躍もあり今シーズン初優勝。
可夢偉選手にとってはこれがLMP1-Hクラスの初優勝でした。
また中嶋一貴選手が乗る5号車も今シーズン最高の4位。
TOYOTA GAZOO Racingはホームレースを好成績で終えることができました。
たくさんの応援ありがとうございました!
その応援の中には、“F1通”として知られる2人の姿があったのをご存知でしたか?
そう、実は川井一仁さんと浜島裕英さんも、中嶋一貴選手と小林可夢偉選手との約束通り(?)、富士スピードウェイの某所から声援を送っていたんです。
そこで今回は「川井ちゃん、浜島さん、WECっておもしろいんですよ! 番外編」として、決勝レース終了後の興奮冷めやらぬおふたりに“初WEC”の感想を語っていただきました。
F1通のおふたりの目に、初めてのWECはどう映ったのでしょうか?
F1通のふたりも手に汗握ったレース終盤の攻防
―― 今年のWEC富士は、小林可夢偉選手がドライブするTS050 HYBRID 6号車が優勝しました。おふたりも約束通り?(笑)富士スピードウェイからの応援ありがとうございました。
川井一仁氏(以下、川井)
レース終盤はさすがの僕もヒートアップしましたよ!
特に残り10周、6秒以上あった可夢偉君の6号車とアウディ8号車のギャップが一気に4秒台になった場面なんかはね。
「ヤバイ!」とか、周回遅れに対して「さっさとどけ!」とか「後ろのアウディを押さえろ!」・・・とか、ギャーギャー言っていました(笑)
―― 熱い応援ありがとうございます(笑)おふたりがTS050 HYBRID 6号車が勝てる!と思ったのはどのタイミングだったんですか?
川井 僕が「可夢偉君が勝てる!」と100%確信したのは、残り2周を切った時点で、アウディ8号車が周回遅れの処理に手間取り、可夢偉君とのギャップが開いたときでしたね。
浜島裕英氏(以下、浜島)
私も6号車が勝つだろうと思ったのは最後の数周。
でも「絶対勝つ」とは確信できませんでしたね。ル・マンのこともありますし、やはり耐久レースはチェッカーを受けるまでは、何があるかわかりませんから。チームの内側の人間として、レースをたくさん経験すると、こうなってしまうのかも(苦笑)
トップチェッカーを受けたTS050 HYBRID 6号車。
ゴール時の2位、アウディ8号車と差はわずか1.439秒だった。
―― 小耳に挟んだのですが、レースが終盤に入る4時間過ぎの時点では、おふたりはポルシェ1号車の優勝を予想されていたとか・・・(笑)
川井
あの時点でトヨタの優勝は正直言って、やや難しいかなと思っていました。
もしセーフティカーやフルコースイエローなどが出なかったら、トップが走りきる周回数は243〜244周になると予想しました。
そこから計算するとアウディ8号車は1スティントあたりを33〜35周で切っていたので、燃料の使用量を少なくすればギリギリ行けるし、それでもペースも1分24秒台と速かった。
一方トヨタの6号車は、ポルシェ1号車と争っているときにストレートで簡単に抜かれてしまう・・・という状態だったので、「コース上でのポジション争いになったら、ポルシェが有利」と思ったからです。
レース中、TS050 HYBRID 6号車と激しい争いを繰り広げたポルシェ1号車。
レース4時間過ぎの時点では、川井さんと浜島さんはポルシェ1号車の優勝を予想していた。
川井
僕が「6号車が勝てるんじゃないか?」と騒ぎ始めたのは、アウディ8号車が最後のピットストップに入ったとき。
彼らは可夢偉君の1分13秒後ろでレースに復帰しましたから「おっ、これならトヨタはタイヤ交換しなかったら、アウディの13秒前にトップで戻れる」と。一緒に観戦していた人たちにも“WEC素人解説”したぐらいです。
F1時代からだけど、可夢偉君はタイヤの使い方が上手い。だから「タイヤ無交換でも可夢偉君だったら、なんとか最後までタイヤをもたせることができる!」と思っていました。
つい最近、ニコ・ヒュルケンベルグ(※)が「タイヤの使い方に関しては、チームメイトのセルジオ・ペレスから学んだ」と言ってたんだけど、そのペレスが以前「(ザウバー時代チームメイトだった)可夢偉からタイヤの使い方を学んだ」とコメントしていたぐらいですから。
F1ドライバーの中でも可夢偉君のタイヤの使い方は上手いって評判でしたからね。
(※)・・・フォース・インディアからF1に参戦しているドイツ人ドライバー。昨年はF1と並行して、ポルシェからル・マン24時間レースを含むWECの2戦にスポット参戦。ル・マンでは総合優勝に輝いた。
2009年のF1でトヨタTF109をドライブする小林可夢偉選手。
F1ドライバーの中でもタイヤの使い方に対する可夢偉評は高かった。
川井
でも、もたせられるのと、抜かれないというのは別の話。
実際、無交換に出たときは「おぉトヨタ、勝負するんだ」と思ったぐらい。
話がそれますけど「これなんだよなぁ、今の某イタリアのF1チームができないのは・・・」とは浜島さんと話していました(苦笑)
浜島
たしかに、そうですね(苦笑)
川井さんと同じで正直、私も残り2時間の時点ではトヨタが勝つと思っていませんでした。ごめんなさい(苦笑)
「勝つ可能性が出た」と思ったのは、これも川井さんと同じで最後のピットストップでタイヤ無交換を選択したとき。それでも、まだ厳しいと思っていました。とにかくアウディ8号車が速かったから。
レースをよく知るふたりが驚いたWECテクノロジー
―― さて両選手から事前にWECの話は聞いていたと思いますが、実際サーキットで生でご覧になったWECはいかがでしたか?
浜島 「LMP1-Hクラスのクルマの加速がすごい!!」これは本当にびっくりしました。私は予選のときにヘアピンの立ち上がりで、今のLMP1-Hのクルマの加速を見ることができたんですが、本当にすごいなと。
川井 僕はF1よりもラップタイムが安定しているのがビックリする。3メーカーとも時計のようにきちっとしたラップタイムを刻んでいくし、タイヤがまったくタレない(性能低下がない)。
浜島
昔に比べたら、タイヤの耐久性、構造耐久性やコンパウンドの耐久性も飛躍的に伸びているのがわかりますよね。
今は2スティント、3スティントは平気。昔なら下手したらバーストですよ。
あと、もうひとつのビックリはリタイアしないこと。昔の耐久のレース終盤では、フロントウインドウが他車から漏れたオイルでドロドロになって、コース上にはリタイアしたクルマがそこらじゅうに止まっていました。いやぁ、技術の進化はすごいですね。6時間をしっかりと走りきる。
川井 ハイブリッドカーを走らせる3メーカーはどれもすごい。それぞれパワーユニットの方式がぜんぜん違うのに、同等のラップタイムを刻んでいるし・・・これ1回、裸になったクルマを見てみたいよね(笑)
浜島 レース運営側で定めている性能調整も上手に設定されていると思います。