WEC

世界と戦うジャパンパワー 小林可夢偉編 vol.4

残りのレースに向けて改善できるところは改善していきたい

世界と戦うジャパンパワー 小林可夢偉編 vol.4 残りのレースに向けて改善できるところは改善していきたい

こんにちは、小林可夢偉です。ル・マンでは僕たちは2位に入ったんですが、優勝できるチャンスは十分にありながら2位ではあまり意味がなかったので、それほど感動したとは言えませんね。僕らはチームとしても優勝を狙っていましたから。2位に入ったことより、そこで勝てなかった方が悔しいですね。

最初、ル・マンの後にはリフレッシュするため、フィンランドまでサウナに入りに行く予定を立てていたんですが、結局諸事情のため行けなくなってしまいました。サウナは大好きなんですけどね。急きょ予定を練り直し、半分仕事、半分休養も兼ねてスペインへ。ここで心身共にしっかりコンディションを整えてから日本に戻りました。

帰国した後は、富士のスーパーフォーミュラのレースに出て来ました。今回のスーパーフォーミュラ、大不調でした。正直、何が悪いのか分かりません。クルマとタイヤが合っていないのはもちろんなんですけど、セットアップの方向性を探して彷徨っている途中です。

でも、日本ではスポンサーさんへの報告やスーパフォーミュラレースで忙しくしていたのが幸いしてか、ル・マンの悔しさは忘れて前向きになって、ここに来ることができました。ニュルブルクリンクは久し振りです。このコースはF1時代に何度か走りましたが、F1はホッケンハイムと隔年開催だったので、正直、余り印象は強くありません。初めて走る気持ちで臨みました。

金曜日の練習走行、土曜日の予選でハイダウンフォース仕様のTS050 HYBRIDに乗りました。ル・マン仕様とはもちろん全然フィーリングが違いましたね。このコースはタイトなコーナーが多いのでハイダウンフォース仕様じゃないと速く走れないと思いますが、2日間走った限りでは一発の速さに関してはいまひとつという感じでした。クルマがコースに合わせきれていないと言いますかね。でも、僕たちはレース本戦に向けてクルマを作りあげて来ていますので、本当の実力はレースを見てみないと分からないと思っていました。正直いって、このWECは予選結果がどこでも関係ないんで。スパでも僕らは予選はたいしたことなかったけど、決勝のペースは速かったでしょ。このレースはそこが一番重要なので、決勝でこのパッケージがどこまで戦えるのか、逆に楽しみでもありました。

WECのレースはF1のようにピンポイントで頑張るというのではなく、遅いクルマをどう巧みに抜いていくかとか、そういう経験が大切だと思うんです。今回、予選までに僕が走ったのは全部でたった21周です。たったそれだけでいきなり予選ですからね。それも、走った時はほとんど雨だったし。で、いきなりレースでしょ。実は、このWECって、十分練習ができないんですよ。外から見ると結構走っているように見えるんですが、1台を3人で回しますから、ひとりの周回数は意外と少ないんです。だから経験を積んでいくのもそう簡単ではないんです。

事前の予報によると、今回のレースは気温が上がりそうで、体力的にきついって言うドライバーもいましたが、僕は大丈夫。基本的に暑いのは大丈夫なんです。実は、この車にはバッテリー用の冷却装置は付いているんですけど、ドライバー用はないんですよ。ただ、ここは天候不安なニュルブルクリンクなので、暑くなるといっても突然雨が来たり、その逆だったり、ここの天気予報は信じられないですからね。

結局、レースは残念な結果に終わりました。ペースは全体的にポルシェ、アウディに付いていけるものではありませんでした。僕らは僕らで精一杯ベストを尽くしたのですが、作戦通りにはタイヤが上手くはまらなかったのかなと思います。それがひとつですね。もう一つは車両トラブルがありました。その修理で3周遅れになったので、その時点で自分たちにできることは全部やってみましたけれど、やっぱり最大の敗因は選択したタイヤが機能しなかったことでしょうか。色々やったけど、ほんとうに手応えがなかったという感じでした。

僕は高温対応のタイヤしか走っていないので、余り他と比較できませんが、1回目のタイヤは駄目だったのに2回目に履いたタイヤは良かった。1回目は新品、2回目は予選で使った中古タイヤです。後者の方が全然良かった。ちょっとミステリーでしたね。でも基本的にはグリップが良いとか悪いといったレベルの問題じゃなかったです。そもそもスイッチが入らなかった。どのコーナーでもグリップしないんですから。

こうしてここでのレースは厳しい結果になりましたが。よく考えてみるとシーズンはまだ半分残っているんです。駄目なときには駄目なりにポイントを取っていくことが大事です。もちろん、ここでもう少し前に行きたかったのですが、残念ながらどうしようもない状況でした。こういうときもあります。残りのレースに向けて改善できるところは改善していきます。次のメキシコを見ていてください。

  • 苦戦だったスーパーフォーミュラ第3戦 富士
  • ニュルブルクリンクを走行するTS050 HYBRID 6号車
  • ピット作業をするTS050 HYBRID
  • ニュルブルクリンクを走行するTS050 HYBRID 6号車
  • マイク・コンウェイと小林可夢偉
  • 決勝レースを戦うTS050 HYBRIDの2台
  • 中嶋一貴と小林可夢偉

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