WEC

世界と戦うジャパンパワー 小林可夢偉編 vol.8

バーレーンでは全力でタイトルを取りに行く

世界と戦うジャパンパワー 小林可夢偉編 vol.8 バーレーンでは全力でタイトルを取りに行く

1週間前に行われた鈴鹿のスーパーフォーミュラで1ポイント取ってきました...。今年のスーパーフォーミュラは最後まで空回り。なんとか速く走ろうと思うと反対にトラブルが出たり、飛び出したりで、1年間やって来て1点も取れていませんでした。それが、この前の鈴鹿での最終戦でわずか1点ですが取ることが出来てシーズンを終了しました。これがスランプというのでしょうか? この1点が今後の状況を変えてくれるのでは、と考えながら上海に来ました。

さて、今週はFIA世界耐久選手権(WEC)です。僕たちのTS050 HYBRID#6号車はドライバーズ選手権で2位に付けているんです。スーパーフォーミュラの不振を引きずるわけにはいきません。気持ちはしっかり切り替えて週末に臨みました。現在、ランキングリーダーのポルシェ#2号車のドライバーとの差が23点。上海の結果次第では最終戦バーレーンまでタイトル争いを持ち込むことができ、チャンピオン獲得も夢ではないと考え、可能性がある限り全力を尽くす意気込みでレースに臨みました。今シーズンはル・マンの2位、この前の富士の優勝など、まずまずの結果を上げながらレースを戦って来ましたので最後の一戦もしっかり戦いたいと思います。

上海での公式練習走行では、いろいろ試しながら車両のセッティングを仕上げていきましたが、土曜日の公式練習3回目になってようやくグリップが掴めてきたような感触があり、1分44秒819で2番手タイムを記録することができました。しかし、期待していた予選では4番手。1分44秒810のタイムでした。もう少し良いタイムが出てもおかしくはなかったかと思いますが、残念ながら上手くいきませんでした。今回の予選では、僕は乗っていないのでとやかく言えませんが、コース上の混雑に引っかかったりした結果だったようです。ただ、スタートは2列目4番手の順位ですから問題はありません。いつも言いますが、6時間のレースですから、予選順位はほとんど関係ないですからね。

毎戦そうですが、今回も決勝レースでは色々ありましたね。ポルシェ#1号車は思ったより速くて捕えることは出来ませんでしたが、頑張れば#2号車は何とかなると考えていました。レース中盤、ポルシェ#2号車と競り合って勝ったのですが、それが重要な流れのポイントでしたね。ペース的にもこっちの方が速かったので焦ってはいませんでしたが、あそこであまりロスするとトップのポルシェ#1号車との差が広がるばかりなので、そこは気をつけていたんですけど...。

僕が運転しているときではありませんが、パンクが2回ありました。両方ともマイク(・コンウェイ)がドライブしている時です。1回だけならそれほど影響はなかったのですが、2回ですから、タイヤ交換だけのためのピットストップでも普通のピットストップ1回分ほどのロスはあったと思います。パンクがなければ、もしかしたらポルシェ#1号車と戦うことができていたかと考えると、ちょっと残念です。

上海のコースはタイヤのマーブル(タイヤのゴムが削られたカス)が酷いですね。これがタイヤに着くと全然グリップしなくなります。マーブルが付かないように走行ラインを外さないように正確に走らなければいけないので結構大変でした。ポルシェ#1号車もタイヤに付着した大きなマーブルが剥がれてフロンカウルにダメージを負い、交換しているほどですから。

レースの最中で疑問に思ったのは、僕らがピットストップして作業を終えてコースインすると、ほぼ、同じタイミングでピットストップしたポルシェとの差が開いていくんですよね。ピット作業の時間は変わらないはずですし、給油だって燃料の流量が決まっているはずなので時間がそれほど変わるはずはないんですが、ピット作業を終えてコースに戻るとポルシェに差を広げられるんです。何なんですかね ... 。

最後の1時間になって、もう一度、僕とポルシェ#2号車との競り合いになりましたが、振り切る自信はありました。結局ポルシェ#2号車は僕に抜かれてから最後のピットストップでタイヤ交換もしたので、トヨタ#5号車にも抜かれて4位に後退しました。

シーズンも終盤になって僕らのTS050 HYBRIDの調子も良くなって来て、成績に結びついているように感じます。これがシーズン初めからならと思いますが、まあ欲張りは言わないようにします。ここ上海で2位に入ったことで、ドライバーズ選手権ではポルシェ#2号車とは17点差に近づきました。ポイントが小さくなり、最終戦で逆転できる可能性もあるので、バーレーンでは全力で戦ってタイトルを奪う気合いで臨みます。バーレーンはTS050 HYBRIDに合っているコースです。本当に全力でタイトルを取りに行きますので、皆さん応援よろしくお願いします。

  • 2016年シーズンは思うように結果の出なかったスーパーフォーミュラ
  • ピットにしまわれるTS050 HYBRID 6号車
  • 上海インターナショナルサーキットを走行するTS050 HYBRID 6号車
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  • 決勝レースを戦うTS050 HYBRID 6号車
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