WEC

世界と戦うジャパンパワー 中嶋一貴編 vol.5

確実にクルマは良くなったのだと思います

世界と戦うジャパンパワー 中嶋一貴編 vol.5 確実にクルマは良くなったのだと思います

こんにちは、中嶋一貴です。いよいよFIA世界耐久選手権(WEC)も折り返しを過ぎて、ヨーロッパから離れた国々でレースが始まりました。この週末はメキシコシティ。メキシコは初めてです。ご存じのように標高が2300mを越えるところにある街で、富士山の五合目に匹敵する高地です。空気が薄いと言うことで、これまでのレースとは少し違ったものになるのではないか、と言われていますよね。 TMGからは「1週間前の日曜日には現地に入ること」という指示がありました。ただ僕は以前から月曜日に入る予定で飛行機などの予定を立てていましたので、予定通り月曜日に入りました。他のメンバーは日曜日には入っていたようです。

で、高地のメキシコシティに来て空気の薄さが影響したかと言われれば、特別な影響を受けることはなかったです。普通に生活している分には別に何も変わりませんね。空気が薄いと息が辛いんじゃないかと思いましたが、大丈夫でした。走っても別段変わりませんね。ただ、階段を登ったときには少し苦しいかなって感じですね。クルマを運転していても、他のレースと同じです。日本でも富士山を登ったりしていますから、自然に身体が対応してくれる様になっているんだと思います。

(注:かつてメキシコシティのこのサーキットは、超高速の最終コーナーを持っていた。しかし、そのコーナーではドライバーが息を止めて走るほどの難所で、明らかにドライバーの身体に悪影響を及ぼすため廃止されたという話だ。)

アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスは初めて走るサーキットです。中速コーナーは面白いんですが、第1コーナーから短いストレートを過ぎて最初のクネクネした低速コーナーが続くところは走っていて面白くないですね。こういう個所があると遅いクルマを抜くのも難しくなりますし。コース全体から見ると、後半のセクター2、セクター3は遅いクルマに引っかかるともう抜けないので、ここでタイムを失う可能性は高いですね。最終セクションは元野球場のスタンドの間を抜けて行くのですが、スタンドがお客さんで満員になれば壮観でしょうね。

高地で空気が薄いという点がLM P1-H車両のハード部分にどう影響するかと言えば、色々大変みたいですね。特に冷却が大変なようです。クルマのバランスとしては結構良いんですが、グリップがやや低い。これも空気の薄さが関係してダウンフォースが少ないからでしょう。ブレーキもきついんだと思います。でも、レースに大きな影響があるとは思えません。走る側としては普通に運転しますよ。

決勝レースは予選までと比べると上手くいきそうだったんです。予選ではポルシェに1秒差をつけられていましたが、レースのペースはほとんど変わらなかったですからね。ほとんど先頭の車両が見えていたところで戦えていたと思いますし。ただ、個人的には僕のスティントはクルマの調子があまり良くなかったんです。それでもなんとか頑張って走っていたら、突然クルマが不調になって・・・。アラームが鳴ってピットへ入って、残念ながらそこで終了になってしまいました。パワートレーンの電気系のトラブルだそうです。

#6号車は前半、タイヤの最適空気圧をなかなか見つけられずに苦戦していたようですが、我々の#5号車はスタートでセバスチャンが乗った時にもそういう問題はなかったようです。でも、レースが進んで行くにしたがって、タイヤにデブリ(コース上のゴミ)が付着してクルマの挙動が悪化したのか、僕が乗ったときのバランスは余り良くなかったですね

レース前はコース上の混雑が心配だったんですが、僕の時は、実際にはそれほど問題じゃなかったですね。スタートを担当したセバスチャンは大変だったでしょうけどね。

我々のレース全体的を総括すると予選から決勝レースに向けて、どんどん良くなって来たと思いますね。結果的に#6号車が3位表彰台に登りましたからね。確実にクルマは良くなったのだと思います。

次はオースチンですが、オースチンはメキシコと違って非常に暑いと思います。メキシコでは、テストの事故で体調不良のアンソニーが欠場して僕とセバスチャンの2人でした。でも、オースチンでは3人が交替で乗らないと暑さで参ってしまうので、早くアンソニーには体調を整えてもらいたいと思います。

  • 車検へ向かうTS050 HYBRID
  • 初めてのメキシコでのレースに備えてコースウォークをする
  • 元野球場だったサーキット
  • ドライバー交代をするTS050 HYBRID 5号車
  • 決勝レースを戦うTS050 HYBRID 5号車
  • 決勝レースを戦うTS050 HYBRID 5号車
  • 中嶋一貴

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