新車TS050 HYBRIDの開幕前テストを終えて
エンジン、ハイブリッドシステムは
去年とはまったく違う小林可夢偉
いよいよ今年のWECも開幕を迎えますが、これまでに今年WECを戦う新型車"TS050 HYBRID"のテストを行ってきたそうですが、どのようなクルマなのでしょうか?感触など教えてください。
新しいTS050 HYBRIDは、パワーユニット系でいうとぜんぜん違うクルマですね。ただし、車体に限った話をするとTS040 HYBRIDの正常進化版かなと思います。昨年のクルマで不足していたと感じた部分が、TS050 HYBRIDでは改善されているし、クルマとして進化していると思います。
TS040 HYBRIDとの一番大きな違いは蓄電装置で、6MJ対応のスーパーキャパシタが、8MJ対応のハイパワー型リチウムイオン電池に変わったことがすごく大きい。具体的には、電気を使って加速している時の加速具合と、加速時間が飛躍的に伸びている。ここ何年かでバッテリーの技術が大きく進化したんでしょうけど、今までと同じようなサイズで何倍かの容量を確保できて、しかも電気の出し入れもスーパーキャパシタと同じ様にできる。さらに、モーターも良くなって、より効率的にたくさんの電気を溜め、使えるようになっている。そこが、新しいクルマになった一番の強みかなと思います。TS040 HYBRIDよりも、ベースのパワーが上がっていることを如実に感じられます。
ハイブリッドシステムの進化に
驚かされます中嶋一貴
WECを戦うハイブリッドシステム「THS-R」は、ここ数年で大きく進化しましたね。
最初、モーターが後ろにしかなかったのが、TS040 HYBRIDで前にも付いてだいぶ変わりました。そして今年8MJ対応のハイパワー型リチウムイオン電池の採用でまた大きく進化しました。改めてハイブリッドシステムの進化に驚かされます。
ハイブリッドシステムのないレース車両は考えられないくらい。
レギュレーションで燃料が絞られているにも関わらず、エンジン自体のパワー感は昨年とほとんど変わらないように感じます。今年のエンジンとハイブリッドシステムの組み合わせは本当に力強く感じます。
エンジンだけ、電気(モーター)だけでは語れません。この組み合わせの進化は驚きです。ハイブリッドシステムって、偉大やなと思います。
何年か前と比べると、使える燃料の量がすごく減っているのに、逆にラップタイムが何秒も速くなっているのは、今年のハイブリッドシステムのおかげです。
そういえば新しいプリウスも燃費や走りが良くなっていると聞きますが、自分たちのWECプロジェクトが市販車にもフィードバックされているんだなと感じてます。
とは言え、新しいV6直噴ターボ・エンジンの熱効率は、去年までのV8自然吸気エンジン以上に高まっています。エンジン本体も実際は大きく進化していますね。
新しいV6ターボ・エンジンとハイブリッドシステムの組み合わせは、まだ煮詰めている段階なので、レースに向けてはもっと良いパフォーマンスに持って行けると思います。今はいろいろなシステムがあって、昔みたいにクルマにエンジンをポンと付けただけではなく、ターボがあって、バッテリーとモーターがあってという、凄く複雑な状態なんです。それを本当に効率良く、どうやって使うかというのを今やっている段階です。
現時点でも去年のクルマと比較すると、良くなっているとは思いますが、コンディションやタイヤもすべて違うので、比較するのは難しい。それでも、大きな違いを感じるし、ポテンシャルはあると思います。
空力的にも改善されている中嶋一貴
見た目には違いが分かりづらいですが、TS050 HYBRIDではエアロダイナミクスも大きく進化しているようですね?
コーナーを回っている最中の空力の使い方など、良くなっている気がします。
可夢偉が言うように、空力的にも去年ちょっと足りなかった部分が改善されていると思いますが、まだ開発段階なので、これからさらに良くなっていくはずです。全体的には、エンジンがターボになって静かになっているし、乗り心地に関しても去年の車と比べると良くなっている。いろいろな意味で、より耐久向きのクルマになったのではないかと思っています。