WEC

SUPER GTトップドライバーが語るWEC富士

〜松田次生&平手晃平が教える WEC富士の見どころ&楽しみ方〜 前編(1/2)

SUPER GTトップドライバーが語るWEC富士 〜松田次生&平手晃平が教える WEC富士の見どころ&楽しみ方〜 前編(1/2)

SUPER GTトップドライバーも魅了されるWEC

松田次生選手はGT500クラスで2度の、平手晃平選手は1度のドライバーズチャンピオンを獲得しているトップドライバーだ。
彼らは世界耐久選手権(WEC)をどう見ているのか?また一般的にはレースのスタイルが似ている用に思えるWECとSUPER GT。その同じ点、違う点など現役のGTトップドライバーだから分かる部分を語ってもらった。
すると、WEC富士はGTファンにもぜひ見てもらいたいレースであることが分かってきたのだ。

WECについて語る松田次生

「僕にとっても、
WECは目指すべき頂点です」
松田次生

―― WEC第7戦「6 Hours of Fuji」(WEC富士)が,間もなく開催されます。基本的には国内でレース活動を展開しているおふたりは、WECの魅力についてどう考えていらっしゃいますか?

松田次生(以下、松田)  僕は、世界選手権の位置づけとして、WECもひとつの最高峰だと思っています。その中にル・マン24時間レースも含まれていますしね。僕にとっても、目指すべき頂点です。

平手晃平(以下、平手)  世界のトップカテゴリーとして有名なのはF1ですが、もうひとつのトップがWECだと思います。そこでは各国の自動車メーカーが技術開発でしのぎを削っていて、激しく戦っているという点に関心があります。
アウディがディーゼルターボのすごいものを出してきたと思ったら、トヨタはハイブリッドで対抗して。そこにポルシェが乗り込んできた。
そういう最先端の技術を100%引き出す役割をドライバーが受け持つ。そういう意味で、レーシングドライバーとして関わりたいカテゴリーですね。

ル・マン24時間レースで競い合う3メーカー

―― 松田選手はこれまで2013〜2016年とWECにスポット参戦の経験がありますね。実際に参加したWECはいかがでしたか?

松田  2013年、2014年と今シーズンに僕が参戦したのは、トヨタやアウディやポルシェが闘っているLMP1クラスではなくて、その下にあるプライベートチーム中心のLMP2クラスでした。
実際に闘ってみて、F1ドライバーや有力なベテランや若手有望選手を含めて世界で"速い"と言われている選手が大勢参加していることに改めて驚きました。
僕は世界選手権という舞台で腕を磨きたかったので、これはやりがいのあるレースだなと魅力を感じました。

―― 平手選手はWECの経験はないものの、ル・マン24時間レースの観戦に行ったことがあるそうですね。

平手  WECのレースに出走したことはありませんが、ル・マンを観戦して「これはレーシングドライバーにとって難しいカテゴリーだな」と思いました。わからないことだらけですけど、外から見ているとLMP1、LMP2、LMGTE-PRO、LMGTE-AMクラスがあって、日本のSUPER GT以上にクラスごとの速度差が大きい。しかも夜も走りますからね。
「見ている側で良かった」という面もありましたが(笑)、でも難しいからこそ「ぜひ戦ってみたいレースだな」と思いました。

対談する平手晃平と松田次生

―― どこに魅力を感じましたか?

平手  自動車メーカーが先頭に立って、国をあげて技術の先端をかけて闘っていて、ドライバーもチームも何か大きなものを背負って闘っているという感じがしたんです。
今回は見ている側だけど、次は自分もあそこに加わって闘いたいなと思いました。レースの演出も上手なんですよ。ル・マン市内でパレードがあったりして、ドライバーがヒーロー扱いされるんです。
レーシングドライバーとして、こんな大舞台で走ってみたいな、と感動させられてしまいました。

ル・マン24時間レースの期間中に行われるドライバーズパレードの様子

トップドライバーだから分かるWECの凄さ

―― 松田選手にとって、実際にレーシングドライバーとして取り組んだWECはいかがでしたか?

松田  僕が出たLMP2クラスは、シャシーメーカーがいくつもあってそれにエンジンを組み合わせて走るクラスで、ポテンシャルという意味ではSUPER GTのGT500クラスよりも少し落ちるくらいかな。でも走るのが難しいんです。GT500は、タイヤのグリップが高いうえダウンフォースも大きいので、勢いで行ける部分、敢えて言えばクルマにまかせてしまえる面があります。

 でもLMP2は、ストレート速度を伸ばすためにダウンフォースは少なめだしタイヤの使用本数が決まっていて2スティント、3スティントを1セットで走ることもあって、全般的にタイヤが硬いんです。だから路面が悪いときには、ドリフトしながらコントロールして走ることになったりします。しかもその横をLMP1がものすごい勢いで抜いていく、みたいなエキサイティングなレースを経験しました。

 それで6時間走って何秒差という闘いを続けるので、気が抜けない。レースとしては非常にレベルの高いカテゴリーだなと改めて思いました。

松田次生選手は2016年にもKCMGからル・マン24時間レースにスポット参戦した

―― 松田選手の経験談を聞いて、平手選手はどう思いますか?

平手  出てみたいですね。今、自分がチャレンジしたことのないカテゴリーで一番興味があるのがWECなんです。長いレースを戦ってみたい。
今参戦しているSUPER GTシリーズは、基本が300km前後、最長でも1,000km。僕はそれ以上の経験がないので、それよりも長いレースをどうマネージメントして戦うのか、トライしてみたいんです。

松田  クルマをコントロールするのが難しいので、神経をずっと働かせるので疲れます。あと、(ル・マンの)長いストレートで350km/h出たときには、レーシングドライバーとして初めて恐怖を感じました。
「これ、何かあったら無事では帰れないんじゃないか」と。
SUPER GTでもスーパーフォーミュラで300km/hオーバーは経験していますが、320km/hを超えるとまったく視野が変わって違う世界が広がるんです。

サルトサーキットを走行するTS050 HYBRID

平手  外から見ているだけだと中のドライバーが感じている恐怖感はわからないですね。テレビのオンボード映像を見ていても、本当にリラックスして楽に走っているようにしか見えないんですけどね。

松田  あれが実は大変。ル・マンでは、350km/hからシケイン入るのに100km/h以下へ落とさないといけないから、ブレーキが本当にシビアですしね。富士スピードウェイのTGR(第1)コーナーも結構大変です。WECのシリーズ戦は、ドライバーにとっては思われているよりはるかに過酷なんですよ。

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