WEC

SUPER GTトップドライバーが語るWEC富士

〜松田次生&平手晃平が教える WEC富士の見どころ&楽しみ方〜 前編(2/2)

松田次生&平手晃平が教える WEC富士の見どころ&楽しみ方 前編(2/2)

SUPER GT以上に厳しい「抜くこと」「抜かれること」

―― WECには総合優勝を競うLMP1のほか、LMP2、LMGTE-PRO、LMGTE-AMなど様々なクラスがあって混走しています。抜く難しさだけではなくて、抜かれる難しさもありますよね?

松田  僕はSUPER GTのGT500クラスを戦っていますが、GT500ではGT300を"抜く"ばかりなので、WECに出て初めて"速いクルマ(LMP1)にうまく抜いてもらうための技術"を経験しました。WECでは前にいくばかりではなくて"うまく抜かれる"技術も必要になります。

平手  僕は、SUPER GTでは抜かれる側のGT300クラス、抜く側のGT500クラスの両方経験がありますけど、それぞれ難しいですよね。速いクルマに乗っていれば遅いクルマを抜くのは簡単だろうと思われがちですが、ブレーキングポイントの違いがありますし、相手の動き方を読んで抜きに行かないと接触してしまいますから。

WECとSUPER GTについて話す平手晃平

「SUPER GTで高いレベルの
"抜く、抜かれる"を経験したドライバーは
WECでも活躍している」
平手晃平

―― 速ければ抜ける、というわけではないのですね。しかもGT300車両はGT300クラスの中で激しく闘っているわけだから、GT500車両に譲ればいいというものでもない...。

平手  抜かれる側は「ああ、ここなら自分のタイムにロスなく抜いてもらえるなと」いうラインやブレーキングポイントを探しながら走らないといけないんです。抜いたり抜かれたりするのにラップタイムで自分のベストから1秒、2秒遅れてしまうのは許容範囲としても、それよりも遅れると積もり積もって大きな遅れになってしまいます。だからできるだけロスしないように抜く、抜かれるをやらないといけない。

 そのポイントをレースウィークに入って自分で見つけてプラクティスの間に確かめておくんです。「どこで抜けばいいんだろう?」「どこで抜かれればいいんだろう?」ということをあらかじめ考えておくわけです。

 それに、自分が走るとき、よそのチームでは誰が走っているのかもチェックしておく必要もありますね。「あのドライバーならこういう走り方をするからこういう抜き方、抜かれ方をしよう」と予想が付くようにしておくんです。フォーミュラカーのような単独クラスで一斉に走って、速い方が勝ちというレースにはないテクニックですね。

SUPER GTでGT300クラスと混走するDENSO KOBELCO SARD RC F 39号車

松田  WECでも、そこが一番難しいところです。SUPER GTはGT500とGT300が混走していますが、ドライバーたちのレベルが結構高くて揃っているのでよほどのことがなければおかしなことはおきません。

 でもWECはF1経験ドライバーも走っていれば、アマチュアクラスもあって、レベル差のあるドライバーも走っていますから、相手がどんな動きをするか簡単には読めないんですね。ファンのみなさんは、そういう状況を意識して観戦するとおもしろいかもしれません。レースやっている方は大変なんですけど(苦笑)。

平手  SUPER GTで、高いレベルの"抜く、抜かれる"を経験しているからこそ、アンドレ(ロッテラー)やロイック(デュバル)やブノワ(トレルイエ)たち、日本からWECに行ったドライバーが活躍出来るんだと思います。僕はそこで鍛えられていますから、いつでもWECへ行く準備はできているんですけどね(笑)。

2016年開幕戦を戦うTS050 HYBRID

<前編 あとがき>
SUPER GTのトップドライバーも目標とするWEC。やはり一流だから分かる凄さがあり、一方でSUPER GTでの経験はWECでも通用することが分かりました。この辺りは、WEC富士観戦をより楽しくしそうです。後編では、いよいよ富士スピードウェイへやってくるWECについて、見どころや期待をお聞きすることにしましょう。