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SUPER GTトップドライバーが語るWEC富士

〜松田次生&平手晃平が教える WEC富士の見どころ&楽しみ方〜 後編(2/2)

SUPER GTトップドライバーが語るWEC富士 〜松田次生&平手晃平が教える WEC富士の見どころ&楽しみ方〜 後編(2/2)

GTトップドライバーお薦めのWEC富士の観戦ポイント

―― はじめてWEC富士観戦するファンに向けて、観戦のヒントをいただけませんか?

平手  やっぱり富士なら超高速ストレートからTGR(第1)コーナーへ向けたブレーキングですよね。1トン近いカタマリが急減速するので迫力が感じられますし、オーバーテイクも一番見られるポイントだと思います。
それから、LMP1の場合、回生のしかたでブレーキングが変わってきますから、そこも見どころです。

WEC富士観戦ポイント 平手晃平おすすめ メインストレート〜TGRコーナー
WEC富士観戦ポイント 平手晃平おすすめ メインストレート〜TGRコーナーの場所

松田  LMP1の場合、アクセルを抜いただけでエネルギー回生をするので、急減速するんです。その状態をリフト&コーストと言うんですが、アクセルを抜いてリフト&コースト状態になるとリアの両側でブレーキライトが点滅します。回生で減速していると示しているんです。
LMP2で走っているときには、リフト&コーストしているクルマに追突しないように、と注意を受けました。そこからブレーキペダルを踏むと本来のブレーキライトが点きます。
ブレーキライトだけに注目していると、リフト&コーストを使わないLMP2の方がブレーキをがんばっているように見えるんです。そこは注目点です。そういう減速の仕方の違いはおもしろいですからぜひ確認して欲しいですね。

―― TGRコーナー以外の観戦ポイントはどこですか。

松田  トヨペット100Rからヘアピンに入ってくるスピード。これには驚きますよ。去年もびっくりしましたが今年はさらにラップタイムが上がるはずですから、その迫力は見て欲しいですね。だってあの大きなクルマがほぼスーパーフォーミュラと同じスピードで走るんですよ。ツーリングカーとしてはコーナーが速すぎると言われているGT500車両よりもたぶん速いんじゃないかな。あのコーナリングの迫力はお薦めです。

WEC富士観戦ポイント アドバンコーナー
WEC富士観戦ポイント アドバンコーナーの場所

―― 300Rからダンロップコーナーは抜きどころになりませんか? 特にクラス違いのクルマに追いついたときなどは。

平手  あそこは難しいんです。よほどコーナーの手前で並べれば抜けますが、抜こうとした相手が切り込んできますから接触の可能性も高い。

松田  クラス違いのクルマを処理するポイントとしてはダンロップコーナーというよりもその先ですね。ダンロップで入り切れればいいですけど中途半端なら、敢えて抜きにいかないで、右、左と曲がった先の第13コーナーへ向けた立ち上がりを待った方がいい。当たってしまいますから。

 LMP2にはトラクションコントロールがついているので立ち上がりが速いんですが、LMP1はハイブリッドのアシストがあってしかも4輪駆動なので、「どんな加速だよ」とびっくりするくらいの勢いであっという間に抜かれます。LMP1はトルクのカタマリですよ。

平手  アシストがあるうえに4輪駆動ですからね。あそこからの加速は他に較べるものがない迫力ですよね。WECが日本へ来るのは1年に1度だけの機会ですから、ファンのみなさんにはぜひLMP1が見せる異次元の加速を見ていただきたいです。

WEC富士観戦ポイント 松田次生おすすめ13コーナー
WEC富士観戦ポイント 松田次生おすすめ13コーナーの場所

―― 4輪駆動でハイブリッドを組み合わせた最先端テクノロジーはWEC以外で見られませんからね。それにしてもダンロップコーナーの立ち上がりが勝負どころですか?

松田  LMP1のドライバーがすごいなと思ったのは、クルマの特性もあるんでしょうが、絶対にコーナーでは無理しないんです。LMP2に乗っているときに感じました。こっちは「抜きに来てもいいのに」と思うようなポイントでも敢えて入って来ることをしません。それで、コーナーの立ち上がりでドーンと抜いていく。なるべくリスクを減らしているんです。ただ、アンドレだけは別かな。彼はSUPER GT時代でも、相手おかまいなしだったからね(笑)。

スーパーフォーミュラとWECに参戦しているアンドレ・ロッテラー

―― 来場するファンにとっては好天気でのレースが見たいところですが、もし雨が降ったときはどういうところに注目してレースを楽しめばいいでしょうか?

松田  雨が降ったら当然TGR(第1)コーナーは注目ですね。ドライバーとしては、特に急に雨が降ったときなどは大変です。プロトタイプカーのタイヤは固めにできているから簡単に滑ってしまいます。

2015年 WEC富士のスタートシーン

平手  富士スピードウェイはストレートが長くて高速になりますから、もちろんTGRコーナーは腕の見せどころになります。

 あと雨のサーキットでは特に滑りやすくなる部分ってあるんです。TGRコーナーの先、コカ・コーラ コーナーへ行く手前、トヨペット100Rの進入にもそんなところがあります。そこは気をつけないと。少しコントロールを失うだけで、飛んで行ってしまいます。LMP1のようにダウンフォースを出しているクルマだとなおさら。富士の状況をよく知っている日本育ちのドライバーは、雨が降ったら強いと思いますね。

富士スピードウェイ パドックエリアの様子

「トップドライバーにタイミングさえあえば
近づけるというのがWECの魅力ですね」
松田次生

―― レース以外の面でもWECは楽しめますよね。金曜日は一般観戦券でパドックへも立ち入りが可能になっているそうですね。

松田 そうそう。F1級ドライバーたちもレースに参加していますし、でもF1レースほど規制が厳しくないのでタイミングさえあえば近づけるというのがWECの魅力です。

平手 普通にパドックを歩いていて、トップドライバーに出会いやすいですよね。「あれ?そんなところ歩いているのかよ」と思ったりする(笑)

ピットウォークなどで配られるTOYOTA GAZOO Racingのカード

松田 WECではファンサービスも義務づけられていて、各チームがファン向けにカードを準備しているのでそれにサインをもらうのもいいですね。

平手 チャンスさえあればクルマも間近に見られますからね。WECは年に1回、クルマ好きにはたまらない機会ですよ。
 レースでは、TS050 HYBRIDのワン・ツーが見たいなあ。ぜひ優勝してル・マンでの雪辱を果たして欲しいです。それで来年は僕もそこに混ぜて欲しいと思っているんですけどね。SUPER GTで戦いながら腕を磨いて、いつ声がかかっても対応できるように準備はできています。TOYOTA GAZOO Racingの首脳の皆さん、よろしくお願いします!(笑)

<後編 あとがき>
さすがSUPER GTトップドライバーであり、富士スピードウェイをよく知る松田次生選手、平手晃平選手によるWEC富士の見どころ紹介は、非常に興味深いものでした。現地やテレビでの観戦もより楽しめるのではないでしょうか。SUPER GTファンの皆さんも、ぜひWEC観戦に富士スピードウェイへ出掛けてみてはいかがでしょうか?