勝利を目標にTOYOTA GAZOO Racingは2台のTS050 HYBRIDを走らせる。レースを前にしてクルマがサーキットのピットに収まり、スタッフが整然と仕事をする。それは、WECの毎レースで当たり前のこと。
だが、そんな当たり前の日々を支える仕事があるのを知っているだろうか? TS050 HYBRIDを時間通りにピットに収めるための運送手段の確保。使用する道具やパーツ、消耗品の補充。スタッフたちの宿や食事。当たり前ながら、とても面倒で多方面に渡る管理を、一手に仕切っている男、それがチームマネージャーのジョン・スティーグスである。
チームのロジスティクス全般に責任を負う要職
「特に重要なのは、チームがハッピーでいられること。もしチーム内に不満があると、レースに悪い影響が出てしまうので、とても気を付けています」
ジョン・スティーグスに「あなたが仕事で心掛けていることは?」と尋ねたら、厳つい顔に似合わないそんな答えが返ってきた。
「同じくらいに重要なのが、備品がなるべく良い状態である事。最後に、チームという組織の中で、規則を尊重し、遵守する事です」
「ペンがない!」「はさみはどこだ?」「汗をかいた! タオルは!?」。皆さんも仕事や勉強などをしているときに、そんな些細なことでイライラしたことがあるはず。1年のほとんどの日々を、各国のサーキットに出掛けているレーシングチームでは、そんな備品を管理して輸送するだけでも大変であろう。しかも、複雑繊細なクルマ2台、膨大な機材、70~80にもなる人間の移動だ。考えただけでも目が回りそうだ。
「チームのロジスティクス全般(機材、トラック、海外部品の、何を、どのように、どこにから入手するのか)に関して、すべて私に責任があります。他にも、チームスタッフの労働環境や出張なども管理しています」
確かにレース中のピットインで機材やパーツが足りない、壊れていたら......。ドライバーやメカニックの宿泊先に問題があって、寝不足で仕事に臨んだら......。それはイライラどころか、敗北に直結する可能性がある。
チームマネージャーを務めるスティーグス、46歳の仕事は、地味ながらとても重要である。事務のスペシャリストではあるがレース中もピットにデンと控え、周囲へきめ細やかに目を向けてピット内を把握し、対応を欠かさない。まさに「チームがハッピーであること」が仕事なのだ。
勝利のためにWEC富士への準備も万端に
そんな神経を使う仕事の連続であるが、それだけにやりがいはあると言う。
「もちろん勝ったとき、そしてチームのみんなが幸せそうにしているところを見るのは、最高だよ。2014年に年間マニュファクチャラーズ・タイトルを獲得したことは、本当に素晴らしい経験だったね」
それだけに今季の目標を聞くと、当然のように「レースに勝つことです! チームの皆にとって、それが一番のご褒美ですから」と即答だ。
迫ってくるWECの日本ラウンド。富士スピードウェイでの戦いを前に、スティーグスから日本のファンへのメッセージを預かった。
「毎年、私は日本に来ると感じることがあります。ここには、たくさんの熱心なファンが待っていてくれると。本当に皆さんの応援には助けられているんです。
その応援があるから、私たちのモチベーションが引き上げられる。いつもありがとうございます。富士戦でもベストなパフォーマンスができるよう準備しています。TOYOTA GAZOO Racingの活躍を、ぜひ楽しみにしてください!」