WEC

TOYOTA GAZOO Racing WECチームの横顔

第8回 広報マネージャー

TOYOTA GAZOO Racing WECチームの横顔 第8回 広報マネージャー アラスター・モフィット

レーシングチームで最も大事なことはクルマを走らせ、そして勝利を掴み取ること。だが現代のモータースポーツにおいては、それだけでは足りなくなっている。そこで必要なのが、レーシングチームがなぜ走り、どう戦ってきたのかを多くの人々に知ってもらうこと、である。
私たちがこうやってTOYOTA GAZOO Racingの活躍を知ることができるのは、チームの広報の仕事があってこそ。そういう意味ではファンに一番近い仕事でありながら、ほとんど目に見えてこない仕事でもある。では、広報マネージャーのアラスター・モフィットはどんな仕事をしているのだろうか?

いかにチームの良さをより広く知ってもらうかが仕事

いかにチームをより良く見せるのかが仕事と語るアラスター・モフィット
 広報という仕事は、どんなことをするのだろうか?
「まず、新聞やテレビなどいわゆるメディアに対してプレスリリースや写真、ソーシャルメディアで発信している内容について情報提供をしています。そして、彼らからの問い合わせや取材依頼の調整、内容確認もしています」
 そうモフィットは答えてくれた。実は、このチームスタッフへのインタビュー企画で、各スタッフへの対応や写真のコーディネートをしてくれたのも彼なのだ。
 彼の仕事には、そこに加えて"マーケティング"という役割も付いている。
「それは車両やチームエリアに全てのスポンサーロゴが正しく掲出されているかの確認などです。あと、レース時のホスピタリティ設置のサポートもします」
 これらをまとめれば、"チームの良さをより広く知ってもらう"ことが彼の仕事なのである。

 とは言え、ただレース結果を伝えるだけではない。例えばTOYOTA GAZOO Racingは、ただ勝ち負けを争うだけでなく、レースに参加する意味として"もっといいクルマづくり"を掲げている。その意味もきちっと伝わらなくてはいけない。
「私の仕事で最も重要なことは、TOYOTA GAZOO Racingチームが決めた目標を、チームの広報として肯定的に伝えながら、さらに、できる限り正直で誠実でいることです」
 勝負、そして開発が係わるだけに、時に隠さなければいけないこともある。そのなかで「正直で誠実でいる」のは意外と難しい。
「だからこそ、ジャーナリストやファンから肯定的な手応え、記事や反響ですね、それがあると、とてもやりがいを感じるんですよ」
 そう穏やかな笑顔で37歳のイギリス人広報は語ってくれた。

もっとモータースポーツの近くで仕事をしたかった

サーキットにいない時も、オフィスで次のレースの準備をしている
 そういう仕事をするだけに、彼は日々チームと一緒にいる。現在は、チーム本拠のあるケルン(ドイツ)に住み、「サーキットにいない時も、オフィスで次のレースの準備をしているか、TMGのカスタマーモータースポーツアクティビティのような他のプロジェクトをしています」と言う。
 元々はモータースポーツに関するジャーナリストだったというモフィットは、2006年に今の仕事に付いたという。「TMG広報の話を聞いて、私はずっと情熱を傾けてきたモータースポーツのより近くで働けると思いました。だから、転職を決意しました。今は、日々ファンの方と直接交流することができ、とても幸運だと思っています。TOYOTA GAZOO Racingには、本当に素晴らしいサポーターがいますからね。特に日本のファンが一番素晴らしい! 今後もTOYOTA GAZOO Racingを応援してほしいし、そう思ってもらえるよう私もがんばります」

チームメイトの情熱や献身のレベルの高さに感心

広報マネージャー アラスター・モフィット  ファンとチームを繋ぐ仕事を日々行っている彼にとって、一番の目標はなんであろうか?
「それはチームの勝利ですよ! 毎年言っていますが、中でもル・マンに勝つこと。それだけに、今年のル・マンは、人の直接的な不幸以外で、これが私の人生で一番悲しい経験でした。
逆に良い思い出と言えば、2014年の最終戦サンパウロ6時間レースで、マニュファクチャラーズ・タイトルを獲得したときです。トヨタとして1999年に世界ラリー選手権(WRC)でマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得して以来の世界選手権制覇でしたらから。盛大にお祝いのパーティーをしたんですよ」

 チーム広報のモフィットに、インタビューの最後に付け加えることがあるかと聞くと、こんな言葉で締めてくれた。
「この仕事をしていて感じることは、チームの人々が何をやっているのかを、外部の方に十分伝えきれないことです。だから、TOYOTA GAZOO Racingについて言いたいのは、成功するために、全力を尽くしている人が集まっているチームだということ。そして、チームメイトから感じる情熱や献身のレベルの高さに感心し続けています。このチームにいられることを、私はとても幸せに思います」