WEC 参戦記 2017 小林可夢偉編 vol.2
「この悔しさを必ずル・マンで晴らしたい」
初日、木曜日の公式練習走行でベストタイムを記録できました。練習走行とはいえ、全体でベストタイムを記録できるというのは気持ち良いし、嬉しいものです。スパは好きなサーキットで、攻めがいのあるサーキットですので、ここで最速タイムが出せたのは、本当に自信に繋がります。しかし、目的は練習走行で最速タイムを出すことではありません。目標は、決勝レースで勝てるクルマ作りをすることですので、この練習走行から始まって土曜日のレース決勝前までに、我々の#7号車を最高の状態に煮詰めていくのが重要でした。
しかし、せっかく掴んだこの良い流れを維持していけば、決勝レースでも満足のいける結果を得ることができると信じて予選に臨みました。今回のレースでは、前戦シルバーストーンでクのラッシュによって走行機会を逸したホセ・マリア・ロペスが加わるはずでしたが、事故の負傷が完治せず、ドクターストップで出走できなくなってしまいました。よって、僕とマイク(コンウェイ)の2人でレースを戦うことになりました。予選のタイムアタックはまずマイクが走り、1分53秒911という良いタイムを出してくれました。僕は古いタイヤでのアタックだったのでそのタイムを上回るのは難しいかもしれないけど、できるだけタイムアップ出来たらと思っていました。しかし、アタックの周の最後のシケイン、タイム計測ラインまであとわずかな地点で、目前のLMP2のマシンがスピン、間一髪のフルブレーキングで避けました。そこまで全体ベストに近いタイムで来ていたのでポールポジションも期待出来たのですが、タイムアタックは台無しになりました。再度、アタックを試みましたが、タイムアップならずで、結局ポールポジションは逃してしまいました。悔しかったですね。
でも、クルマは目標通り決勝で結構自信を持っていけるセッティングにまで仕上げることが出来ました。実は、初日にベストタイムを出したときも、満タンだったんです。重いクルマであのタイムが出たので、その時点でレース本戦でもいける感触は掴めていました。古いタイヤでもペースは良く、タイヤの摩耗も問題なさそう。あくまでも、決勝レースで最高の成績を残すことに目標を定めていました。
そして、そのレースですが、結果から言うと大変残念でした。2位でした。2位で残念と言うのは、絶対優勝できると思っていたからです。決勝レースでは間違いなく我々の#7号車が最速のクルマでした。序盤から順調で、中盤までに50秒のリードを作りトップを走っていましたが、2度のフルコースイエローに邪魔されたと思っています。決して我々の作戦が間違っていたのではありません。単純にタイミングが悪かったということです。不運と言うしかありません。我々がピットストップした直後に、それも2度にわたってフルコースイエローのフラッグが提示されました。なんだか我々のピットストップを待っていたような・・・。
それでも、レースの最終盤、最後のピット作業を終えた時点で、前を行く#8号車とは6秒差まで追いつき、追い上げました。最後まで調子は良かったので全力で追い上げれば抜けたかもしれません。最終ラップで#8号車の直後まで追いつきましたが、チームの1、2体制でのゴールを迎えることを最優先に考えて、リスキーな追い抜きは止めました。結果的にチームにとれば最高の結果になったと思います。ただ、個人的には悔しさでいっぱいです。この悔しさを必ずル・マンで晴らしたいと思います。