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WEC 参戦記 2017 小林可夢偉編 vol.7
「苦戦のスタートでも明かりが見えたレース 結果には満足しています」

WEC 参戦記 2017 小林可夢偉編 vol.7 「苦戦のスタートでも明かりが見えたレース 結果には満足しています」

今年はシーズンを通して苦戦しています。ときには十分に満足のいくスピードで走ることが出来ているのですが、それが結果に繋がりません。去年は富士のレースで勝つことが出来たので、今年もなんとしてもその再現をしたいと思っていました。富士は、長いストレートとトリッキーな後半のコーナーの組み合わせが特徴的なコースです。ここで勝つには、高速ストレートでも低速コーナーでも速く走れる高レベルな車両セッティングと正しいタイミングで正しいタイヤを選択し、ミスのないように走ることが重要です。

ドライ・コンディションでのレースを期待していたのですが、思いに反して富士の週末は残念な雨になってしまいました。ウェット・コンディションの調整が上手く出来ていないのでしょうか、練習走行から思うようにタイムが上がらなかったんです。

予選は、僕とホセ(・マリア・ロペス)が担当しました。最前列を狙えると思っていたので、4番手という順位は残念です。こんなに遅い予選は、WECで走り始めて初めてです。僕だけ遅いんじゃなくて、ホセも遅い。2人揃って駄目なんです。クルマに何が起こっていたのか解析する必要がありました。それが見つからないことには決勝レースも希望通り走れませんから。とにかく遅いですよ、僕らのクルマ。どこが悪いんですかね。とにかく、僕らのクルマだけ違った方向に行ってるんじゃないかと思うほどでした。翌日の決勝までに問題を潰さないといけない。#8号車は十分に戦える状態なので、僕らの#7号車も#8号車のセッティングを参考にすることになると思いますが、それが決勝までに出来るかどうかでした。

予選日の夜は車両セッティングの大変更を敢行しました。しっかりと確認走行が出来ないまま決勝を迎えることになって心配なところがありました。スタート・ドライバーは僕。幸いにも走り始めてすぐに、適正なセッティングを見いだすことが出来たと感じ、レースが進むに連れてクルマの状態は良くなって行ったのでホッとしました。序盤、ライバル#1号車との競り合いを制して、3番手でホセにつなぎました。

ホセが走行を行ってしばらくするとワイパーが動かなくなるトラブルが起こってドキッとしましたが、ちょうど給油ピットインのタイミングで、ワイパースイッチがあるステアリングを交換して直ったので、ホッとしました。ただ、ロスタイムが約1分あったので、#1号車には先行される形になってしまいました。それでも、すぐにホセが#1号車の真後ろに迫り、その後のセーフティーカーの出動と退去のタイミングを利用して、再び#1号車をパスしましたので、車両の調子は悪くないと感じられました。

レースが後半に入り、#8号車がトップで、僕らの#7号車が2番手に続いたところで、悪天候のために2回目の赤旗中断となり、そのまま再開されることなく終了をむかえました。

優勝した#8号車には祝福を送ります。それにしても、チームは厳しい状況の中で素晴らしい仕事をしてくれました。チーム全体にとって誇れる結果です。これまで苦しい戦いが続いてきましたが、このレースを機に残り2戦は全力で戦い、チームがマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得する力になれたらと思います。雨の中で応援していただいた多くのファンの皆様には心から感謝します。皆さんの声援をもって次のレースに挑みます。

  • コースウォークを行う小林可夢偉選手
  • 小林可夢偉選手
  • 車両セッティングの大変更を敢行する様子
  • ファンの皆さんにサインを書く小林可夢偉選手
  • 雨と霧の中を走行するTS050 HYBRID 7号車
  • ポルシェ 1号車と接戦の様子

小林可夢偉編

      中嶋一貴編

          国本雄資編