WEC 参戦記 2017 中嶋一貴編 vol.4
「週末を通してタイヤの温度が上がらない問題に苦労しました」
ニュルブルクリンク6時間レースは厳しいレースでした。というか、ここは常に厳しい。これまでニュルブルクリンクでいい成績を残せたことがないので、今年は期待しましたが、残念ながら相変わらずでした。ニュルブルクリンクは余り相性のいいサーキットじゃないですね。
予選で躓いたのが痛かったですね。タイムアタックの周にLMP2に追いついたんですが、そのクルマはコースを譲ってくれたのかと思って突っ込もうとしたら反対に寄って来て...。どいてくれたわけではなかったんですね。こちらに寄って来たので、『ヤバい!』と思ってブレーキを踏んで避けたんですが、かなり危なかったです。
LMP2を避けたため4輪コースアウトをして1回目のタイムが抹消されたので再度アタックしなければいけなかったのですが、その時にはタイヤのグリップが落ちていてしまい、それにアタックに入る周にエンジニアとの意思疎通のタイミングが合わなかったことから、十分にバッテリー充電できなかったこともあって、必要以上にロスした感じです。
ただ、思ったよりトップとのタイム差は小さかったので、希望はありました。金曜日に色々とやったことがいい方向にいったはずです。全体的にだんだんとトップに近づく方向だったので、それがレースでも続いてくれればいいなあと考えていました。それが出来ればポルシェに食らいついていけるのではないかと思っていたんですが・・・。
レースはセバスチャン(ブエミ)がスタート担当で、前に並んだ2台のポルシェをなんとかしてくれるだろうと期待していたんですが、技術的な問題ではいかに彼でも為す術はなかったですね。いきなり、フォーメーションの周にトラブルが出てしまいました。燃料ポンプのトラブルで、モーターだけでピットに帰って来て、交換に約8分かかり、早々に5ラップ遅れになってしまいました。6時間の長丁場レースとはいえ、5周遅れを取り戻すのは並大抵ではありません。そこで、可能な限り上位でゴールしてポイントを取るように頑張りました。
その結果、ポイントが取れるところまで戻って来られたので、努力は無駄ではなかったと思います。今回はポルシェの方が我々より速かったことは間違いありません。そういう意味では最低限のロスに留められたのは良かったと思います。ただ、ポルシェは同じタイヤの2スティント目でも結構速く、我々が新品タイヤを履いても中々捕まえることは出来ませんでした。
クルマの状態は余りよくなかったですね。週末を通してタイヤの温度が上がらない問題に苦労しました。ダウンフォースの問題かもしれませんね。ポルシェと比べると不足気味だったのでしょうか。
TS050 HYBRIDが一番苦手なニュルブルクリンクのレースが終了したので、残りのレースには期待しています。クルマに合ったコースで好成績を残すことの大切さをつくづく感じています。これから先のレースは比較的得意なコースが多いので、可能な限りのポイントを取って選手権タイトルを狙いたいと思っています。皆さんの応援が背中を押してくれます。これからも宜しくお願いします。