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WEC 参戦記 2017 中嶋一貴編 vol.5
「予想外の苦戦でライバルのペースに着いていけなかった」

WEC 参戦記 2017 中嶋一貴編 vol.5 「予想外の苦戦でライバルのペースに着いていけなかった」

メキシコは去年初めて訪れ、好きな国の一つになりました。去年はレース後に少し時間を取ってプチ観光し、随分と気分転換ができました。ただ、このところ日本のレースもWECもちょっと成績がついてきていないので、今回のメキシコは何としても良い成績を収めたいと考えていました。8月後半から毎週レースが続いていて、去年と比べると少し気持ちのゆとりがなかったかもしれませんね。ただ、エルマノス・ロドリゲス・サーキットはとても走りがいがあるコースで、好きなサーキットです。それだけに、是非上位を狙わなければ、と気合を入れていました。

一日目の練習走行は、不安定な天候に左右されて、予定外のタイヤを何種類か試すことになりました。しかし、どのタイヤでも安定した走行が結構難しく、タイヤを中心としたクルマの煮詰めをやらざるを得ませんでした。特にコースが乾いていく時のラップタイムに満足いかず、その対策に時間を費やされました。ただ、最終的にはまずまずのセッティングが見つかったと思います。

二日目、土曜日の予選では、最初のタイムアタックで少々ミスをしてしまったので、次のラップにもう一度アタックをしましたが、その時にはもうタイヤのグリップがなくなってしまい、結局タイムは1分25秒を切れませんでした(1分25秒255)。トヨタ7号車も含んだ他のLMP1ハイブリッドクラスのクルマ3台は、いずれも24秒台に入っており、我々は4番手の予選グリッドになりました。まあ、決勝は6時間レースですから、予選グリッドはあまり関係無いと思いますが、できれば最前列に並びたかったですね。

その決勝レースですが、予想外の苦戦で、ライバルのペースにはまったく着いていけませんでした。理由はグリップ不足です。それに尽きます。恐らくダウンフォースの問題でしょうか? 多分7号車も同じだったんじゃないかと思います。レースに向けてリヤウイングを立てたりして急にダウンフォースを付けるというわけにはいかないんです。前後バランスなどが完全に狂ってしまうので、もしそうするならフロントも含めて全部やり直さなければいけない。それをする時間はありませんでした。だから、レースも予選とほとんど同じセッティングで走りました。レースを通してバランス、グリップなどは良くなくて、特にコーナーは苦労しました。レースの最後ではドライバーズ選手権ポイントの関係で我々が7号車の前に出るという作戦を取ったのですが、それでもゴール時にはライバルから1周遅れになっていました。この差はどうしようもなかったですね。

3位表彰台の結果で、これは第2戦スパ・フランコルシャンで優勝して以来の表彰台となりました。まあ、この状況の中で我々も全力で戦ったわけで、その結果というわけですから、これを受け入れることしかできません。
次のオースティンはメキシコよりはましなレースができると思います。どれだけ競えるかは行ってみないことには分かりませんが、全力を尽くします。

  • 小林可夢偉と中嶋一貴とメキシカンハットを被る2人のメカニック
  • エルマノス・ロドリゲス・サーキットを走行するTS050 HYBRID 8号車
  • 中嶋一貴
  • エルマノス・ロドリゲス・サーキットを走行するTS050 HYBRID 8号車
  • ピット作業を行うTS050 HYBRID 8号車
  • エルマノス・ロドリゲス・サーキットを走行するTS050 HYBRID
  • 3位表彰台を獲得した中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、アンソニー・デビッドソン

小林可夢偉編

      中嶋一貴編

          国本雄資編