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WEC 参戦記 2017 中嶋一貴編 vol.7
「1-2フイニッシュは格別です」

WEC 参戦記 2017 中嶋一貴編 vol.7 「1-2フイニッシュは格別です」

中盤戦を振り返ると、第5戦メキシコに比べて第6戦COTA(オースチン)はとても暑かったのですが、我々のクルマに合っていたようです。第4戦のニュルブルクリンクやメキシコに比べるとクルマ自体も良かったし、作戦も含めて進歩があったと思います。ですので、富士ではもう少し改善が進むので、期待の持てるレースを展開できればと思っていました。

富士はトヨタの母国レースですし、これまでにもTOYOTA GAZOO Racingは好結果を挙げて来ました。ですが、昨年、我々は4位と良い結果を出せなかったので、今年こそは表彰台の真ん中を目指そうと気合を入れて臨みました。

ところが、天気予報では金曜日の1日目から日曜日のレース決勝までは雨。一瞬、2013年みたいなこと(悪天候でスタート後セーフティーカーに牽引されて僅かな周回数を走っただけでレースが終了)が、頭をよぎりました。晴れてクリーンなレースをして勝ちたいですよね。レースを楽しみにサーキットに来場されるファンの皆様のためにも、そうならないことをひたすら祈っていたんですけど。

残念ながら予報通り初日の公式練習日、2日目の予選日も雨。雨は思わぬリスクがあるので嫌ですが、みんな同じ条件なので、誰にもアドバンテージはないですから、ここで頑張るしかないと気持ちを切り替えました。今回使うことになるウェットタイヤですが、周回を重ねるとフィーリングが悪くなってきます。それが我々だけでなくライバルも同じなのか気になります。もし我々だけだとしたら、決勝は厳しいものになりますからね。この時点では、正直、レースはやってみないと分からないと思いました。

予選は僕とセバスチャン(・ブエミ)がアタックしましたが、2人ともトラフィックに引っかかり、タイムをロスしてしまいました。それがなければ1分34秒台は出せたはずで、ポールポジションを取る力はあったと思います。もったいないですね。

結局、3日目の決勝日も雨。今年の富士のレースは3日間とも雨にたたられてしまい、日本でのレースを楽しみに来場されたファンの皆様には本当に感謝を申し上げたいと思います。レースは心配したとおりの雨と霧に見舞われ、6度のセーフティーカー出動と2度の赤旗中断が出た荒れた内容になってしまいましたが、自分自身は声援に応えるべく集中して全力で走りましたので結果が出て本当に良かったです。序盤を過ぎたところで、セバスチャンから引き継ぎ、結局最後まで走ることになりました。調子は良かったので、前半でライバルの#2号車をパスして周回遅れに出来たのは作戦的にも有利になったと思います。上手くトップに立ち、後続との差を広げましたが、赤旗やセーフティーカーの度に差がなくなったのは、少々きつかったです。それでも、抜かれるとこはないという自信はありました。レースは残り約1時間半、トップのポジションにいる状態で給油ピットインに入る寸前、天候悪化による2回目の赤旗中断になりました。早めの再開になれば最終的にトップでゴール出来る見通しはありましたが、6時間のレース終了間際での再開になると給油ピットインのために一旦トップを譲るので、レース再開のタイミングが気になりましたが、結局、霧が晴れずに夕暮れになって、このまま再開されることなくレースは終了となりました。

1-2フイニッシュを狙っていたので、それが達成出来て嬉しかったです。チームとしても最高の結果。我々のウェットコンディションでのペースが凄くよかったので、十分に優勝に値する速さはあったと思います。僕自身にとっても3度目の富士での優勝、特に日本のファンの皆様の前での勝利は格別ですね。

マニュファクチャラーズとドライバーズの両タイトルの差は少し縮まったと言っても、依然、大きな差があります。残り2戦、可能性がある限り、全力を尽くして頑張ります。

  • 雨と霧の悪天候の中走行するTS050 HYBRID 8号車
  • 真剣な表情のセバスチャン・ブエミ選手と中嶋一貴選手
  • 表彰台の真ん中を目指すと改めて決意する中嶋一貴選手
  • 悪天候ながらも快走するTS050 HYBRID 8号車、7号車
  • TS050 HYBRID 8号車の1位での帰還に拍手で迎えるスタッフ達
  • 富士6時間レースを制し喜びを分かち合う中嶋一貴選手、アンソニー・デビッドソン選手、セバスチャン・ブエミ選手

小林可夢偉編

      中嶋一貴編

          国本雄資編