THE SPIRIT OF TOYOTA GAZOO Racing 〜なぜWECに参戦し続けるのか?〜

"自動車"が誕生して100年を超えた今、
クルマ業界全体が大きな変化の時代を迎えている。

「電動化」や「自動化」といった大変革の時代に、
なぜTOYOTA GAZOO RacingはWECに参戦し続けるのか。

次の100年を見据えたTOYOTA GAZOO Racing流の答えがここにある。

なぜWECに参戦し続けるのか?

2018-19年シーズンに挑む2台のTS050 HYBRIDと6人のドライバー(セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、フェルナンド・アロンソ、ホセ・マリア・ロペス、小林可夢偉、マイク・コンウェイ)

2017年12月19日、TOYOTA GAZOO RacingはWEC(FIA世界耐久選手権)の2018-19シーズンへ続けて参戦することを発表した。

WECは、90年以上の歴史と伝統を持つル・マン24時間レースを中心に、世界各国を転戦する耐久レースの世界選手権。

ル・マン市内にあるル・マン24時間レースのオブジェ

TOYOTA GAZOO Racingは2012年よりメーカー系チームがハイブリッドカーで順位を争うLMP1-Hクラスに参戦。
アウディやポルシェといった耐久の王者たちに挑戦し続けてきた。

しかし、2016年にアウディ、2017年にはポルシェがWECから撤退。
これは2018年から始まる新しいシーズンにおいて、TOYOTA GAZOO RacingがLMP1-Hクラス唯一のメーカーとなることを意味する。

「競争相手のいないWECに継続して参戦する意味はあるのか」

世間ではこんな声も聞かれた。

それでもTOYOTA GAZOO RacingはWECに参戦を続けることを決めた。

WECの記念撮影を行う 2018-19年仕様のTS050 HYBRID 7号車

クルマが誕生して100年を超え、"電動化"、"自動化"など大きな変化の時を迎える中、「次の100年もクルマは楽しいぞ!」、そうしていきたいという決意を、私は強く抱いています。

我々のクルマは、ル・マンの道を"速く"駆け抜けることは出来ました。しかしながら、24時間走り続ける"強さ"を兼ね備えることは出来ませんでした。お客様に乗っていただくクルマをお届けしたいと願いながらも、まだその域に達していない...それが我々の今の実力です。

この道で技術を磨き合うライバルが去ってしまったことは大変残念ですが、スピード域の異なるクルマが混走し競い合う世界耐久選手権という競技、とりわけ、公道をも舞台にしながら24時間戦い続けるル・マンが「次の100年もクルマは楽しい」の実現に向けた最適な実験場であることに変わりはありません。

これは参戦継続の際に発表されたモリゾウこと豊田章男 トヨタ自動車社長のコメントの一部である。

TOYOTA GAZOO Racingは優勝だけを目指してWECを戦っているわけではない。

WECの厳しい闘いを通して鍛えられた技術を「運転が楽しい」「もっと走らせていたい」と思っていただけるようなクルマとして、お客様にお届けすることがTOYOTA GAZOO Racingの重要な使命だ。

だからTOYOTA GAZOO Racingは今シーズンも再びWECに挑戦するのだ。

2018-19 開幕戦 スパ・フランコルシャン6時間レースを戦うTS050 HYBRID 7号車

「ハイブリッドスポーツカーは出さないのか?」という声

2018-19年仕様のTS050 HYBRID 8号車

トヨタはレーシングハイブリッドカーで2012年よりWECに参戦し、昨年まで6度のル・マン24時間レースを含む合計48レースに出場している。

WECの参戦で鍛えられた電動化技術はトヨタが現在販売するクルマ、そして今後販売を予定しているクルマへと確実に還元されていっている。

しかしながら「これがWECで鍛えられた電動化技術を投入したクルマだ!」と呼べるようなフラッグシップとなるクルマはまだ存在していない。

「ハイブリッドのスポーツカーは出さないのか?」
豊田は昨年、初めて訪れたル・マンでこんな声を数多く聞いたという。

2017年のル・マン24時間レースを訪れたモリゾウこと豊田章男 トヨタ自動車社長

昨年、はじめてル・マンに行きましたが、トヨタを応援してくださる声援と共に、「こういうハイブリッドのスポーツカーは出さないのか?」という声も多くいただきました。私自身、そのようなクルマを世に出したいと思っていますし、それは「次の100年もクルマを楽しくする」ための1台になると思います。

豊田のこの思いは、1台のコンセプトカーとなって具現化された。
2018年の初頭に発表された「GRスーパースポーツコンセプト」、WECで鍛えられた電動化技術を生かした次世代スーパースポーツカーだ。

2018年の東京オートサロンで発表さっれた「GRスーパースポーツコンセプト」

レーシングカーからスポーツカーをつくるという新しい挑戦

GRスーパースポーツコンセプト

今、トヨタにとって新しいチャレンジが始まっている。
現役のレーシングカーから、スポーツカーをつくるという取り組みだ。

市販車両をレベルアップしてスポーツカーをつくるのではなく、レースやラリーで培われたノウハウを、様々な制約の中で、いかに市販車に落とし込むことができるか、挑戦することがTOYOTA GAZOO Racingの目指すクルマづくりと位置付けています。
そして、まさに現役のレーシングカーから、スポーツカーをつくるという、トヨタにとって全く新しい挑戦が始まっています。

その新しい取り組みから生まれたのがWECで鍛えられた電動化技術を生かした「GRスーパースポーツコンセプト」だ。

「GRスーパースポーツコンセプト」は、WECに参戦している「TS050 HYBRID」とほぼ同じ主要パーツで構成されたコンセプトカーで、実戦で鍛えられたV6ツインターボチャージャーエンジンやトヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)を搭載している。
高効率のEVシステムと、希薄燃焼エンジンの組み合わせたパワーユニットにより、究極のパワーと環境性能を両立した次世代のスーパースポーツカーだ。

GRスーパースポーツコンセプトは、V6ツインターボチャージャーエンジンやトヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)を搭載している

そして第2弾として、ジュネーブモーターショーで「GRスープラ レーシングコンセプト」も発表された。

「GRスープラ レーシングコンセプト」はトヨタの歴史において長らくフラグシップスポーツとして親しまれてきたスープラを16年ぶりにレーシングカーとして蘇らせたコンセプトモデルだ。

ジュネーブモーターショーで発表された「GRスープラ レーシングコンセプト」

SUPER GT(当時は全日本GT選手権)のGT500クラスで4回の年間チャンピオンを獲得や、ル・マン24時間レースへの参戦など、モータースポーツの世界でも多くのファンを魅了してきたスープラ。

市販バージョンよりも先にレーシングバージョンを公開したことにTOYOTA GAZOO Racingの強い思いがある。

次の100年も、クルマを徹底的に面白くするという、TOYOTA GAZOO Racingの挑戦は、まだ始まったばかりですが、お客様の笑顔のために、自動車産業の未来のために、心ときめくクルマづくりに拘り続けていきたいと思います。

間もなく迎えるル・マン24時間レース、そしてその先にある「次の100年もクルマは楽しい!」という未来に向けて。TOYOTA GAZOO Racingの新たな挑戦は今まさに始まったばかりだ。

ル・マン24時間レースへ挑むTS050 HYBRID