トヨタがル・マン24時間に残した軌跡
The History of TOYOTA at Le Mans
2016-2020
挑戦20回目に悲願の優勝!日本車&日本人ドライバーの初勝利に
2016年はスタートから21時間を経ても2台のTS050 HYBRIDと1台のポルシェが同一周回で争った。残り1時間、首位の5号車と2位ポルシェとの差はわずか30秒。残り3周、ポルシェの緊急ピットインでその差は広がり、TS050 HYBRIDの優勝は確実かに見えた。ところが残り5分、何と5号車が失速。ファイナルラップへと向かう最後のストレートで止まってしまう。勝利はポルシェのものとなり、2位に6号車が続く結果に終わった。
3台のTS050 HYBRIDで臨んだ2017年。小林可夢偉がコースレコードでポールポジションを奪うと、その7号車がスタートからリード。8号車、9号車も上位につける。だが開始から約8時間、8号車にフロントモーターのトラブルが発生。10時間に渡ってリードした7号車も深夜にクラッチトラブルでストップ。更に9号車も他車に追突されリタイア。修復に2時間を要した8号車が唯一8位で完走した。
2018年は他メーカーのハイブリット車こそ参戦しなかったが、規定で優遇を受けた非ハイブリッド車がライバルとして立ちはだかる。この年のTS050 HYBRIDは燃費を大幅に改善するも速さも維持。結果、2台は予選で1-2を決める。ポールポジションは2度目の中嶋一貴。最前列からスタートした決勝レースも、順位を入れ替えながらレースを主導。そのままチェッカーフラッグを受け、8号車が悲願の優勝を決めた。セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソと組んだ中嶋は、日本車で優勝した初の日本人選手となった。
2019年もライバルは非ハイブリッド車だった。予選で1、2位を占めたTS050 HYBRIDがスタートからレースを圧倒。2年連続の1-2フィニッシュを飾った。優勝した8号車の中嶋とブエミ、アロンソは、これでWEC2018-2019のドライバータイトルも獲得。中嶋はサーキットレースでの日本人初の世界王者となった。
新技術規則導入を翌年に控え、2020年はTS050 HYBRIDがル・マン24時間に参加する最後の年となった。非ハイブリッドのライバル車とのタイム差は僅かで、予選では7号車の小林可夢偉がTOYOTA GAZOO Racingに4年連続となるポールポジションをもたらす。だが、8号車予選は3位に留まる。レースは7号車がレース前半を圧倒するが、12時間過ぎに排気系のトラブルが発生。修復に30分を要して大きく後退。一方、8号車は前半、パンク等で遅れるが、中盤には2位まで挽回。7号車の後退で首位に立つと、以後はポジションを堅持。このままゴールして、TS050 HYBRIDの有終の美を飾った。7号車は挽回して3位でフィニッシュ。これで8号車のセバスチャン・ブエミと中嶋一貴はル・マン3連覇を達成し、同時にTOYOTA GAZOO RacingはWECの2019-2020チーム王座を決定した。