トヨタがル・マン24時間に残した軌跡
The History of TOYOTA at Le Mans
2021-2023
ハイパーカー導入の新時代も勝利を重ね2022年で5連覇!
だが翌年の100周年大会は2位に終わる。
最高峰クラスがそれまでのLMP1(Le Mans Prototype1)からハイパーカー(LMH=Le Mans Hypercar)に変わり、新時代を迎えた2021年。予選では小林可夢偉の駆るGR010 HYBRIDの7号車が、新時代最初の、そしてチーム5年連続となるポールポジションを獲得。雨の下でのスタートとなった決勝でも、マイク・コンウェイ、小林、ホセ・マリア・ロペスの7号車がそのままトップに立つと、レースの大半をリードする。
一方、セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、ブレンドン・ハートレーが乗る8号車は、スタート直後に他車に追突されてスピン。そこから追い上げて、再び上位に復帰。7号車とトップ争いを展開するが、18時間を経過した頃から燃料システムにトラブルが発生。しかし、チームは車両をピットガレージに戻さず、その対応策を立案。なんとドライバーが走行中に特定のセッティングを行うことで対処した。
その後、7号車にも同じトラブルが発生するが、8号車と同じ対策で乗り切る。このまま7号車のアンカー、小林可夢偉が2位を走る8号車の中嶋一貴を従えてチェッカーフラッグを受けた。これは、小林にとっては悲願の総合優勝であり、TGRのル・マン4連覇とともにGR010 HYBRIDのハイパーカークラス初代王者という大きな成果をもたらした。
第90回記念大会となる2022年は、リパブリック広場での公開車検が3年ぶりに実施され、ようやく通常のル・マンが帰ってきた。
ハイパーカー2年目のTGRは、7号車にマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペス、8号車にセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の布陣でル・マン24時間に臨む。予選で7号車の小林が暫定ポールポジションを、ハイパーポールでは8号車のハートレーが会心のアタックでTGRに6年連続ポールポジションをもたらす。7号車も2番手につけ、最前列を独占した。
好天で迎えた決勝。7号車の先行で1-2体制を築き、順位を入れ替えながら首位争いを展開。レース折返しを前に首位は8号車。のちに7号車がトップを奪還、8号車はタイヤパンクに見舞われ2台の差が広がる。だが午前8時前、7号車は電装系トラブルでシステム再起動を要し、コースサイドに車両を停止。8号車が首位に返り咲く。7号車はスローパンクチャーにも見舞われたが、1-2体制を堅守。また、残り30分にはロペスが最速ラップをマーク。首位の8号車とともに最後まで力強い走りを披露した。ポールポジションを獲得した8号車のハートレーが首位でチェッカーを受けると、7号車も同一周回でこれに続き、1-2フィニッシュを果たす。TGRはハイパーカークラス2年連続の優勝を飾り、2018年の初優勝以来5連覇を達成した。
2023年のル・マン24時間は100周年記念大会。32万5千人もの大観衆が詰めかけた。最高峰LMHクラスにはLMDh車両の参加が可能になったこともあり、ポルシェ、フェラーリ、プジョー、さらにキャデラックといったメーカーのワークスマシンがエントリー。全クラス合計で62台が出場した。TGRは前年同様、GR010 HYBRIDの7号車をマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペス、そして8号車をセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮が駆り、6連覇を目指した。
だがテストデーを前にLMHクラスの最低重量が見直され、GR010 HYBRIDは最大の37kg増となる。それでも2台のGR010 HYBRIDは、短い時間で対応策を講じ、この年も2台共にハイパーポールに進出。だがハートレーが渾身のアタックを見せた8号車は僅差の3位。小林が駆った7号車はトラックリミット違反によるタイム抹消もあり、5位と7連続ポールポジションを逃した。
決勝レースは序盤からアクシデントや、天候急変で荒れた展開となった。2台のGR010 HYBRIDは8号車が1周目からトップに立ち、7号車も表彰台圏内に上がると、その後も2台は常に優勝圏内を快走する。
ところがスタートから8時間、僅差でトップを追っていた7号車に不運が襲う。スローゾーンへと向かう7号車に2台の車両が追突。再走を試みる小林だったが、ダメージが大きく、リタイアを余儀なくされた。
一方、8号車はその後もフェラーリ51号車と激しいトップ争いを展開。終盤に入っても僅差のバトルを続けるが、ブエミ、ハートレー、平川の8号車は結局2位でフィニッシュ。目標の6連覇は果たせなかった。3位にはキャデラックが入り、欧、日、米のチームが表彰台を分け合う結果となった。