The Rivals in Le Mans 2025
ル・マンを競う
2025年のライバルたち
TOYOTA GAZOO Racingと覇を競う
7つのメーカーを紹介
2025年のル・マン24時間に挑むTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、
もちろん2022年以来の総合優勝を目指している。
今年のハイパーカークラスには、2台のTOYOTA GR010 HYBRIDを含め、
12チーム/21台がエントリーし、覇を競うことになった。
そこで、TGRのライバルになる7つのライバルメーカーを紹介したい。
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ALPINE
アルピーヌ
速さのF1に加え耐久の
ル・マンにも挑戦するフランスメーカーF1世界選手権にも参戦しているアルピーヌは、2024年からLMDhマシン、Alpine A424でWEC参戦を開始した。1955年に自動車メーカーとして創業し、1973年にルノーの傘下に入り、2021年にルノー・スポールと統合。現在、ルノーのスポーツモデル開発を担っている。
ル・マン24時間には1963年に1リッター4気筒エンジンを搭載するAlpine Renault M63で初参加。その15年後には2リッターV6ターボエンジンのRenault Alpine A442Bで総合優勝を遂げている。2016年にはフランスのチーム、Signatechと組んでAlpine A460でWECに参戦し、LMP2カテゴリーでドライバーとチームの世界タイトルを獲得した。
Alpine A424はオレカ製シャシーに3.4リッターV6シングルターボ・エンジンを搭載し、LMDh共通ハイブリッド・システムを備える。
2024年のル・マン24時間には参加した2台ともエンジントラブルでリタイアしたが、2025年のWECではレース毎に速さと信頼性を高めており、第2戦で2台がハイパーポールに進出し、1台が3位表彰台を獲得。続く第3戦でもフレンチブルーの2台は共にハイパーポールに進み、決勝ではレース序盤から最後まで優勝争いの一角を占め、1台が2戦連続の3位表彰台を獲得した。
Alpine Endurance Team
No.35 Paul-Loup CHATIN/Ferdinand HABSBURG/Charles MILESI
No.36 Mick SCHUMACHER/Frédéric MAKOWIECKI/Jules GOUNON -
ASTON MARTIN
アストンマーティン
ついに最上級クラスに帰ってきた
英国の名門“アストンマーティン”英国の名門、アストンマーティンがル・マン24時間の総合優勝を目指して最上級クラスに帰ってきた。2025年には、2台のAston Martin Valkyrieがハイパーカークラスに参加する。
その設立当初から積極的にレース活動を行って来たアストンマーティンは、ル・マン24時間にも1928年に初参加。1959年には総合優勝を果たしている。2005年からアストンマーティン・レーシングの名でGTクラスに参戦して常に優勝を争い、2008年からは総合優勝を狙うLMP1クラスに参戦。2009年に総合4位にはいるが2011年を最後に再びGTクラスに集中し、数々の好成績を残して来た。
Aston Martin Valkyrieはハイパーカークラスでは唯一、公道走行仕様の量産ハイパーカーをベースに開発された車両。カーボンファイバー製のシャシーに、自然吸気6.5リッターV12エンジンを搭載し、ハイブリッド・システムは装えていない。
チーム名にあるTHORは「The Heart of Racing」の略で、米国を拠点に、アストンマーティンのGT車両でIMSA、WEC、SRO World Challengeに参戦して数々の好成績を挙げてきたチーム。
2025年から2台体制で参戦を開始したWECでは、第3戦スパで1台が1位と同周回の13位で完走している。
Aston Martin THOR Team
No.007 Harry TINCKNELL/Tom GAMBLE/Ross GUNN
No.009 Alex RIBERAS/Marco SORENSEN/Roman DE ANGELIS -
BMW
ビー・エム・ダブリュー
今季のWECではTGRに次ぐ
3位につけル・マンに臨む2024年から2台のLMDhマシン、BMW M Hybrid V8でWEC参戦を開始したBMW。ル・マン24時間には1999年以来、25年振りのプロトタイプカテゴリー参戦となった。この年、BMWは6リッターV12自然吸気エンジンを搭載するLMPカー、BMW V12 LMRでLMGTPマシンのToyota GT-Oneと最後まで激闘を繰り広げ、総合優勝を果たしている。
BMWのル・マン24時間初参加は1937年。そしてその2年後には1976cc 6気筒エンジンを搭載するBMW 328 Touringが総合5位でクラス優勝を果たすと共に2台のBMW328が総合7、9位と、3台がトップ10フィニッシュを飾っている。
特徴的なフロントノーズのM Hybrid V8はダラーラ製のシャシーに4リッターV8ツインターボエンジン、共通ハイブリッド・システムと7速ギアボックスを組み合わせている。
WRTは2009年にベルギーで設立され他チームで、2023年からBMWのワークスチーム、BMW M Team WRTとして活動している。
2025年のWECではプロローグから速さを見せており、ここでトップタイムを記録。第1戦カタールでは予選で1台がフロントロウを獲得し、第2戦イモラでは1台が決勝で2位に入っている。
BMW M Team WRT
No.15 Dries VANTHOOR/Raffaele MARCIELLO/Kevin MAGNUSSEN
No.20 René RAST/Robin FRIJNS/Sheldon VAN DER LINDE -
CADILLAC
キャデラック
アメリカの雄“キャデラック”が
体制を増強してル・マン制覇に挑む北米を中心にモータースポーツ活動を展開し、ツーリングカーやGTカーのシリーズで数々のタイトルを獲得して来たキャデラックは2023年、Cadillac V-Series.RでWEC参戦を開始し、ル・マン24時間に復帰した。
そのル・マン24時間挑戦の歴史は古く、初参加は1950年。5.4 リッターのOHV、V8エンジンを搭載したType 61 Sedan “de Ville”とSpyderの2台がそれぞれ10位、11位で完走している。2000年から2002年まで最上級プロトタイプクラスに参加した。
V-Series.Rはダラーラ製シャシーに5.5リッターV8自然吸気エンジンを搭載するLMDhマシンで、3台が参加した2023年は2台が総合3、4位に入っている。そしてやはり3台が参加した2024年のル・マン24時間では予選で2、3位に入り、決勝での最上位は7位だった。
2025年のWECでは第1戦カタールを前に実施されたプロローグから速さを示し、2日間総合で2位のタイムを記録。第1戦では予選4,5位に入り、決勝では一時トップを走った。これまでの最上位は第3戦スパの5、6位。ル・マン24時間にはカスタマーチームを含め、ポルシェと同じくクラス最多となる4台のV-Series.Rをエントリーしている。
CADILLAC HERTZ TEAM JOTA
No.12 Will STEVENS/Norman NATO/Alex LYNN
No.38 Earl BAMBER/Sébastien BOURDAIS/Jenson BUTTONCADILLAC WTR
No.101 Ricky TAYLOR/Jordan TAYLOR/Filipe ALBUQUERQUE
CADILLAC WHELEN
No.311 Jack AITKEN/Felipe DRUGOVICH/Frederik VESTI
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FERRARI
フェラーリ
昨年はTGRと劇戦を繰り広げ
連覇を達成した名門“フェラーリ”100周年記念大会となった2023年のル・マン24時間に、50年ぶりのワークスマシンを投入し、TGRと最後まで激しいトップ争いを展開して総合優勝を遂げたフェラーリ。昨年もTGRとの熱戦の末、連覇を決めている。
高級スポーツカーの代名詞として知られるフェラーリのル・マン24時間初参加は、第二次世界大戦後初開催となった1949年で、初参加で総合優勝という快挙を成し遂げている。そして2023年にLMH車両のFerrari 499Pで10回目の総合優勝を果たした。
Ferrari 499Pは、フェラーリ296 GT3のものをベースとした2.9リッターV6ツインターボエンジンと独自のハイブリッド・システムを搭載。バッテリーにはフェラーリF1の経験も生かされているという。1973年のフェラーリ312Pを彷彿とさせるデザインを採用している。
AF Corseは元イタリア人レーシングドライバー、アマート・フェラーリが2002年に設立したチームで、FIA GT選手権、ル・マン24時間やWECにフェラーリのGTマシンで参戦し、数々の勝利を挙げている。
2025年のWECでは開幕戦から圧倒的な強さを見せており、開幕3連勝を飾ると共に第1戦ではワークスチームとサテライトチームで表彰台を独占し、第2戦イモラでは1台がポール・トゥ・ウイン。第3戦ではワン・ツー フィニッシュを果たした。
FERRARI AF CORSE
No.50 Antonio FUOCO/Nicklas NIELSEN/Miguel MOLINA
No.51 Alessandro PIER GUIDI/James CALADO/Antonio GIOVINAZZIAF CORSE
No.83 Robert KUBICA/Yifei YE/Philip HANSON
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PEUGEOT
プジョー
独特なクルマでル・マンを
沸かしてきた古豪“プジョー”プジョーは1896年に創業した世界最古の自動車メーカーのひとつで、レース活動も早くから行っており、1913年にはフランス・グランプリとインディ500を制している。ル・マン24時間には1926年に初参加。本格参戦した1937年には3台がトップ10フィニッシュを果たした。初の総合優勝はグループC時代の1992年で、トヨタと激闘の末に勝利し、翌年もトヨタを下して連覇した。ディーゼルターボのPeugeot 908 HDi FAPで参加した2009年を含め、計3回の総合優勝を遂げている。
2023年からPeugeot 9X8でWEC参戦を開始し、この年のル・マン24時間では2台のうち1台が8位に入った。
LMH車両として開発された9X8は、特徴的なフォルムを持ち、2.6リッターV6ツインターボエンジンと独自のハイブリッド・システムを備えており、バッテリーはTotal Energiesとフランスの電池メーカー、Saftの共同開発によるもの。
2024年のル・マン24時間にも2台が参加して11,12位。WECでは不振が続いていたが、2025年第3戦スパでは2台ともハイパーポールに進出し、1台が2023年のLMHプロジェクト開始以来ベストとなる4位に入った。決勝では1台が他車との接触でリタイアしたものの、それまでトップ5圏内を快走していた。
Peugeot TotalEnergies
No.93 Paul DI RESTA/Mikkel JENSEN/Jean-Eric VERGNE
No.94 Loic DUVAL/Malthe JAKOBSEN/Stoffel VANDOORNE -
PORSCHE
ポルシェ
総合優勝19回を誇る“耐久王”
ポルシェが再びの勝利を狙う1951年の初参加以来、ル・マン24時間では自動車メーカーとして最多の総合優勝19回を誇り、数々のクラス優勝も果たしてきたポルシェは2023年、レーシングチームとして豊富なノウハウを持つ米国のチーム・ペンスキーと手を組み、PORSCHE PENSKE MOTORSPORTとしてPorsche 963を武器にWEC参戦を開始した。
Porsche 963はLMDh規定に従って製作された車両で、シャシーはマルチマティック製。ポルシェ918スパイダー用のものをベースとした4.6リッターV8ツインターボエンジンとLMDh共通のハイブリッド・システムに、やはりLMDh共通の7速ギアボックスを組み合わせている。
3台が参加したこの年のル・マン24時間では16位完走が最上位となったが、翌2024年はWECで8戦中優勝2回を含め、5回の表彰台獲得でドライバーズチャンピオン獲得、TGRに続きマニュファクチャラーズ2位と、「耐久王」らしい強さを発揮した。ル・マン24時間ではポールポジションンを獲得。決勝最上位は4位だった。
2025年は3戦を終えて第2戦の8位が最上位だが、ル・マンにはPORSCHE PENSKE MOTORSPORTの3台と、PROTON COMPETITIONから1台と計4台の963が参加する。これはキャデラックと共にハイパーカークラスで最多だ。
PORSCHE PENSKE MOTORSPORT
No.4 Felipe NASR/Nick TANDY/Pascal WEHRLEIN
No.5 Julien ANDLAUER/Michael CHRISTENSEN/Mathieu JAMINET
No.6 Kevin ESTRE/Laurens VANTHOOR/Matt CAMPBELLPROTON COMPETITION
No.99 Neel JANI/Nicolas PINO/Nicolas VARRONE