Vol.1 挑戦の第一歩

vol.1"挑戦の第一歩"

イギリス

第1戦 シルバーストーン4時間レース

2019年8月30日-9月1日
シルバーストーンサーキット

TGR WECチャレンジドライバーの山下健太が、8月30日(金)から9月1日(日)にかけて、イギリス・シルバーストーンサーキットで行われた、FIA世界耐久選手権(WEC)第1戦シルバーストーン4時間レースに、LMP2クラス・ハイクラスレーシング(デンマーク)から参戦し、総合12位、クラス7位でフィニッシュしました。

サーキット入り

初戦の舞台シルバーストーンを歩く

山下にとって今回のレースは、初めての海外シリーズ開幕戦というだけでなく、LMP1シート獲得に向けた挑戦への第一歩となります。その舞台となったシルバーストーンサーキットは、飛行場の跡地に作られた平坦ながら高速コーナーが連続するハイスピードサーキットとして有名で、その歴史は長く様々なカテゴリーで使用されています。山下は2016年にこのサーキットでF3をテストした経験はありますが、実際にレースをするのは今回が初めてでした。

月曜日にイギリス入りした山下は、火曜日、水曜日の2日間、現地のシミュレーター施設を使って、今回のシルバーストーンをはじめ、今後WECで走るサーキットなどを習熟走行。木曜日にはサーキットをチームメイトやエンジニアと1周歩いて周り、縁石や走行ラインなどを確認しました。

  • 今シーズンをともに戦うパターソン選手とフィヨルドバッハ選手

    今シーズンをともに戦うパターソン選手とフィヨルドバッハ選手

8/30(金)公式練習日

初の公式セッションで見せた"速さ"

迎えた金曜日。フリー走行1回目では、車体トラブルで走行時間が制限されてしまいましたが、金曜フリー走行2回目では、さっそく新品タイヤを履いて予選シミュレーションをトライ。そこでLMP2クラスのトップにあと0.021秒まで迫る2番手タイムをマークしました。
「僕自身高速コーナーが好きですし、特にグリップが高い新品タイヤで走るととても気持ちがよいです。日本にはなかなかない6速全開で飛び込んでいくS字区間など攻めがいもあります。毎周面白いなと思いながら走っています」
予選に向けて好感触を得て初日を終えました。

  • WECシリーズにLMP2クラスで挑む山下健太

    WECシリーズにLMP2クラスで挑む山下健太

  • フリー走行2回目でLMP2クラスのトップにあと0.021秒まで迫る2番手タイムをマーク

    フリー走行2回目でLMP2クラスのトップにあと0.021秒まで迫る2番手タイムをマーク

8/31(土)予選

ファーストアタックを任される

土曜日は朝のフリー走行でレースに向けたロングランでタイヤの摩耗具合を確認。そして午後にLMP1&LMP2クラスの予選が行われました。
WECの予選はドライバーふたりがタイムアタックを行い、それぞれのベストタイムの平均値でグリッド順が決まります。
最初にアタックを担当した山下ですが、クルマに問題が発生し、クルマが跳ね続ける症状を抱えたままアタックをしなければならず1分41秒931。そしてチームメイトのアンダース・フィヨルドバッハも1分42秒897。ふたりの平均タイムは1分42秒414となり6番手で予選を終えました。
「まったく満足できないラップでした」と山下。
昨日のクルマの仕上がり具合から、本来のアタックができればもう少し上位も狙えたはずですが、「今回は開幕戦なので、とにかく明日のレースをきちんとフィニッシュしたい」と気持ちを切り替えて決勝に挑みました。

  • 公式練習の走行が良かったからと、チームがカナードを日の丸カラーにしてくれた

    公式練習の走行が良かったからと、チームがカナードを日の丸カラーにしてくれた

  • 最初にアタックを担当したが、クルマに問題が発生し思うようにタイムを伸ばせなかった

    最初にアタックを担当したが、クルマに問題が発生し思うようにタイムを伸ばせなかった

  • オートグラフセッションの様子

    オートグラフセッションの様子

9/1(日)決勝

迎えた初戦、与えられた状況の中でベストを尽くす

日曜日の決勝レース。山下は3番目に走行予定。4時間のレースが折り返し地点にさしかかった64周目、残り2時間13分にクルマに乗り込んだ山下。コースはブリティッシュウェザー特有の一度降った雨が上がり、路面が乾き始めた状況で、「コースインした時に縁石はまだ濡れていましたが、走行ラインは完全ドライでした。その後縁石も使えるようになってからのペースは悪くなかったのでそれはよかったです」と上位勢と遜色ない1分45秒台で周回を重ねていきました。ただ、ポジション的に乗り込んだ時点ですでにクラス6番手のクルマから1周遅れになっており、まずはしっかりとクルマをゴールに運ぶことを目指して走行しました。
85周目にピットインして第2スティントへ。ここでチームはオーバーステア対策のため、リヤタイヤをより耐久性の高いコンパウンドに交換。しかし第1スティントほどペースを上げることができず、1分46秒台での走行が続きます。
「アウトラップはよかったんですが、2周目からガクンとグリップが落ちてオーバーステアがひどくなった」。それでもこのペースで最後まで走れば、6番手を逆転できる可能性が見えた矢先、チームメイトがSC中に追い抜きをしていたため、ドライブスルーペナルティを受けてしまい、せっかく詰めていた6番手とのギャップを失ってしまいました。103周目にこのレース最後の3回目のピットインを行い、もう一度リヤタイヤだけ交換。状態は改善しませんでしたが、なんとか19周タイヤをもたせてクラス7位でチェッカーを受けました。
「正直なところレースをしたというより、フリー走行のロングランみたいに、ひとりで淡々と走っていた感じです。ただほぼ2時間走り込めたので、GTとの間合いだったり、LMP1クラスがどれくらい速いかがかわかったのは収穫でした。また、今回の1番の目的だったアクシデントやトラブルなく走るという目的は達成できました。チームの皆さんに感謝します。」

次戦は10月4日から6日のWEC第2戦富士6時間レース。山下にとって初めての母国開催レースとなります。
「富士は、ここ何年かほぼ毎週と言っていいぐらい走り込んでいるサーキットなので、チームを引っ張っていくぐらいの気持ちで戦います。できれば表彰台を争いたいという気持ちもありますが、まずはしっかりと自分の仕事ができるように頑張ります。応援よろしくお願いいたします」

  • 初めてのWEC決勝レースに挑む山下健太

    初めてのWEC決勝レースに挑む山下健太

  • 3番目に走行した山下健太は上位勢と遜色ないタイムで周回を重ねた

    3番目に走行した山下健太は上位勢と遜色ないタイムで周回を重ねた

  • 第2スティントはオーバーステアがひどく思うようにタイムを伸ばせなかった

    第2スティントはオーバーステアがひどく思うようにタイムを伸ばせなかった