WEC CHALLENGE REPORT 〜山下健太の挑戦〜 第5戦 ローン・スター・ル・マン6時間レース

vol.5"進化を求めた変化"

アメリカ

第5戦 ローン・スター・ル・マン6時間レース

2020年2月22日-23日
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ

TGR WECチャレンジドライバーの山下健太が、2月22日(土)から23日(日)にかけて行われた、FIA世界耐久選手権(WEC)第5戦ローン・スター・ル・マン6時間レースに、LMP2クラス・ハイクラスレーシング(デンマーク)から参戦。スタートからの2スティントとチェッカーまでの最終1スティントの計3スティントを走行した山下は、このレースでも持ち前のレースペースとオーバーテイクを披露。チームは総合10位、クラス7位でフィニッシュしました。

2/22(土)公式練習/予選日

新しいタイヤ+エンジニア+セットアップでチーム力が試された予選

ハイクラスレーシングと3名のドライバーにとってサーキット・オブ・ジ・アメリカズを走行するのは初めて。さらにこの週末から使用するタイヤがグッドイヤーからミシュランに変わっただけでなく、レースエンジニアも他のチームから移籍してきたエンジニアに交代するなど、未知の部分が多く、決勝レースまでの限られた時間のなかで、どこまでセットアップを合わせ込むことができるかチーム力が試されるレースとなりました。

この週末は土曜日に2回のフリー走行と予選、日曜日に決勝レースと2日間に凝縮されてスケジュールのため、金曜日に主催者の許可を得て山下とチームメイトはレンタカーでサーキットを試走。アメリカ入りする前にはTMGのシミュレーターでもテスト走行するなど、山下としてはできる限りの準備をしてフリー走行1回目を迎えました。

土曜朝8時からのフリー走行1回目、山下がチームのトップバッターとしてコースイン。ミシュランタイヤ+新しいエンジニアが作ったクルマのバランスを確認しながら、5周+5周+4周を走行。その後チームメイトふたりが走った後、さらに5周走ってみたものの、山下のベストタイムはトップのクルマに対して2秒5ほど遅れる走り始めとなってしまいました。「最初はオーバーステアが強くて、その後多少よくなりましたけど、全体的なグリップ感がないし、他のクルマのタイムにはまったく届きそうもないです。なんとかしないといけないですね」
午後0時45分から行われたフリー走行2回目では、トラクション対策を施したクルマで予選シミュレーションを実行してみましたが、トップとのタイム差は相変わらず2秒以上離されたまま。半信半疑で違うコンパウンドのタイヤも試しましたがパフォーマンスは改善されず。一方、タイヤのタレはほぼない状況で、レースに向けてはまずまずの手応えをつかんでフリー走行を終えました。
「全体的なグリップ感のなさは改善されていません。ピークのパフォーマンスを感じられないので。ただ決勝に向けてはいいのかなと思います」

午後6時10分から行われたLMPクラスの予選。これまで通り山下とアンダース選手が担当し、最初にアタックした山下のタイムが1分50秒771。続いてアタックしたアンダース選手が1分52秒724。2台の平均は1分51秒747となり、ハイクラスレーシングはLMP2クラス6番手グリッドからスタートすることになりました。
「正直なところミシュランタイヤに履き替えたことで、もっとピークのパフォーマンスが上がるかと期待していたんですけど、そんなに甘くないというか、まだ使いこなせていないことが大きいと思いますが実際には差が広がってしまいました。それは残念です。前回まで履いていたタイヤと比べて、許容量が大きいというか、ピーキーさは減っている印象なのでレースでは使いやすいのかなと感じています。レースペースは悪くないと思います」

  • 金曜日にはチームメイトとコースウォークを行い、初めてのサーキット・オブ・ジ・アメリカズを入念にチェックした

    金曜日にはチームメイトとコースウォークを行い、初めてのサーキット・オブ・ジ・アメリカズを入念にチェックした

  • 初めてのコースに挑む山下

    初めてのコースに挑む山下

  • 走行に向けて準備を行う山下健太

    走行に向けて準備を行う山下健太

  • チームスタッフとコミュニケーションをとる山下健太

    チームスタッフとコミュニケーションをとる山下健太

2/23(日)決勝

レース人生初のスピンを喫するも、新たな手応えを感じた一戦

迎えた日曜日の決勝レースは正午スタート。山下はスタートを担当し、レース序盤はクラストップから山下までの6台が5秒以内に連なる接近戦となりました。6周目に一台が接触で後退したことでポジションをひとつ上げた山下は21周目に1回目のピットイン。タイヤは交換せず給油のみでコースに復帰し、ピットイン前と同じクラス5番手で第2スティントに入りました。
この第2スティントの序盤、山下は燃費をセーブしタイヤを労わりながら走行。そして燃料が十分セーブできてからペースアップ。ライバル勢のタイヤのタレが見え始めた29周目に一台をオーバーテイクしポジションアップ。その後44周目までペースを落とすことなく力走し、クラス4番手でアンダース選手に交代しました。

その後2スティントを走行したアンダース選手は一時トップを走行。アンダース選手からバトンを受け取ったパターソン選手も他のブロンズ勢よりも速いペースで周回を重ねるなど、今後のレースに期待が持てるレース内容を披露。スピンやピットレーンスピード違反によるドライブスルーペナルティでタイムをロスしましたが、チームの誰もが以前よりは格段に戦える手応えを感じていました。

レースが5時間10分を経過した時点で、山下は再びクルマに搭乗し、最終スティントを担当。途中コースオフするシーンもありましたがポジションは守ってチェッカーフラッグを受け、ハイクラスレーシングはLMP2クラス7位、総合10位でレースを終えました。「レースペースは悪くなかったです。ただ周りに比べてすごく速いというわけでもないですし、劣っているなと感じるところもありました。この週末は本当にいろいろありました。自分自身もレース中に初めてスピンしましたし、いろんな経験をしました」

次戦WEC第6戦は3月18日-20日のセブリング1000マイルレース。
「セブリングは特殊ですごいバンピーで難しいコースだとみんな言っているので、そのコースを走れるのをとても楽しみにしています。今回うまくいかなかった部分を修正して、ミシュランタイヤをもっとうまく使えるようになればチャンスはあると思うので、表彰台を目指して頑張りたいと思います。応援よろしくお願いいたします」

  • 決勝スタートシーン 山下はスタートを担当した

    決勝スタートシーン 山下はスタートを担当した

  • 最初のスティントはクラス4番手で終えた

    山下が担当した最初のスティントはクラス4番手で終えた

  • ピット作業を行うハイクラスレーシング 33号車

    ピット作業を行うハイクラスレーシング 33号車

  • ハイクラスレーシングはLMP2クラス7位、総合10位でレースを終えた

    ハイクラスレーシングはLMP2クラス7位、総合10位でレースを終えた