WEC CHALLENGE REPORT 〜山下健太の挑戦〜 第6戦 スパ・フランコルシャン6時間レース

vol.6"アルデンヌの洗礼"

ベルギー

第6戦 スパ・フランコルシャン6時間レース

2020年8月13日-15日
スパ・フランコルシャン・サーキット

TGR WECチャレンジドライバーの山下健太が、8月13日(木)から15日(土)に行われた、FIA世界耐久選手権(WEC)第6戦スパ・フランコルシャン6時間レースに、LMP2クラス・ハイクラスレーシング(デンマーク)から参戦。決勝レース直前に大雨が降り非常に難しいコンディションのなかスタートを任され、そのままレースの約半分近くの2時間46分を走行し、エースドライバーの役目を果たしました。チームはクラス5位でチェッカーを受けましたが、チームメイトの搭乗時間不足などに対するペナルティを受け、最終結果はクラス7位となりました。

8/13(木)公式練習

オールージュを初めて駆け上がる

木曜午後4時半から始まったフリー走行1回目は、山下ともうひとりのチームメイト・パターソン選手のコース習熟を目的とし、まずはフィヨルドバッハ選手がクルマを確認したあと、山下が引き継ぎ7周を走行しました。その後パターソン選手と山下で交互に乗り換えて1時間30分のセッションを終えました。

「コースはすぐに覚えましたが、オールージュは本当にすごいですね。みんなからすごい、すごいというのは聞いていたんですけど、1周目走った時に目が回りました。レースをしていてあんな感覚になったのは初めての経験です。クルマはかなりオーバーステアが強い感じですね」

  • 米国オースティン戦以来6カ月ぶりにチームと合流

    米国オースティン戦以来6カ月ぶりにチームと合流

8/14(金)予選

セットアップに苦しみながら、可能性を見出した予選

翌金曜朝9時30分から11時まで行われたフリー走行2回目では、予選と決勝に向けた走行を開始します。山下はこのセッションで初めてニュータイヤを試した後、燃料を積んで決勝レースを想定した状態でのクルマのバランスを確認しました。
「クルマはリヤのコーナーダンパーのスプリングレートを下げて昨日よりかなり柔らかくなり、キャンバーも減らしてありました。それでもクルマは軽くても重くてもまだオーバーステア気味です。とくに高速コーナーが全開でいけてないのは解決したいです。あと新品タイヤのグリップのピークも感じることができませんでしたので、内圧とかを調べてもらっています」

午後2時から1時間のフリー走行3回目は、まずフィヨルドバッハ選手が新品タイヤで予選シミュレーションを行い、セッション中盤から山下も新品タイヤで予選シミュレーションを行う予定でした。しかし山下がコースインしたその周に、ターン14の側溝が外れるアクシデントが発生したため、セッションは赤旗になってしまい、結局フリー走行の時間内にコースを修復することはできず、セッションは終了。山下は計測1周もできずに予選を迎えることになりました。

午後6時30分から行われたLMPクラスの予選。これまで通り山下とフィヨルドバッハ選手が担当し、フィヨルドバッハ選手が最初にアタック。しかしベストラップがコース外走行でタイム抹消となり、新品タイヤのピークが過ぎた計測2周目の2分6秒760が暫定タイムとなります。次にアタックした山下はセクター2まで順調でしたが、セクター3でLMP1とLMP2の2台のトラフィックにひっかかり、コンマ6以上ロス。その結果2分4秒407となりました。 山下の走行後もう一度フィヨルドバッハ選手は山下が履いたタイヤでアタックをし、2分5秒013と自身のタイムを更新。2台の平均は2分4秒710となり、ハイクラスレーシングはLMP2クラス6番手グリッドからスタートすることになりました。

「トラフィックがなければ余裕で2分3秒台に入っていたと思うので悔しいです。クルマはリヤが不安定だったので完璧とは言えなかったですが、フリー走行の時よりは若干タイヤのピークを感じることができました」と山下。山下の予選アタックについてレースエンジニアは「予選までにケンタが新品タイヤで走れた周回数は6周ぐらいしかない。トラフィックがなかったら経験があるドライバーと同じタイムは出ていたんだから、文句なしのラップだったと思う。ミシュランタイヤの使い方も掴めてきたんじゃないかな」と分析しています。

  • 久々となるWECの予選に挑む山下

    久々となるWECの予選に挑む山下

  • 経験にない縦Gを味わったオールージュ〜ラディオン

    経験にない縦Gを味わったオールージュ〜ラディオン

  • 走り始めからオーバーステアに苦しめられるも手応えを得た予選

    走り始めからオーバーステアに苦しめられるも手応えを得た予選

  • 2人の平均タイムでLPM2クラス6番手で予選を終えた

    2人の平均タイムでLPM2クラス6番手で予選を終えた

8/15(土)決勝

スパ・ウェザーに翻弄されるも、多くの経験を手に次を見据える

土曜日の決勝レースは午後1時30分スタート。これまでのレースでは山下がスタートを担当し、レース序盤にポジションを争うという展開でしたが、先週のELMSのレースでの手応えや、スパはセーフティーカーの出る確率が高いこと、序盤はほかのカテゴリーのトラフィックに出会う確率が少ないことなどを理由に、今回はブロンズドライバーのパターソン選手にスタートしてもらい、ポジションをできるだけ前でキープしながら、ルールで定められている最低乗車時間を走行した後、山下とフィヨルドバッハ選手で上位フィニッシュを目指す、という戦略を採る予定でした。しかし決勝レース1時間ほど前から大雨が降り始め、決勝前の7分間のウオームアップ走行も、土砂降りでまっすぐ走るのがやっとというコンディションとなりました。このウオームアップはパターソン選手が走りましたが、あまりにも路面が危険な状態だったため、チームはレース主催者に急遽スタートドライバーを山下に変更することを申し出ました。その申し出が認められ、山下はレーススタートを担当することになりました。

セーフティーカー先導でスタートしたレースは、6周目にグリーンフラッグ。クラス6番手でスタートした山下は11周目に1台を抜きクラス5番手にポジションアップします。その後、雨も止み徐々に走行ラインが乾き始めたことで、山下は20周目にピットインして予選で使ったドライタイヤに交換して第2スティントを走り始めます。

23周目、グラベルにはまったクルマを撤去するためにセーフティーカーが導入されますが、このSCラン中に山下はまだ濡れていた1コーナーでスピン。"スパ・ウエザー"の洗礼を受けます。その後28周目にレースが再開されますが、35周を過ぎたあたりから再び雨が降り始めます。山下は予定通り41周目にピットインして一度ドライタイヤでコースインしますが、セクター3の雨足が急激に強くなりその周でピットインしてウェットタイヤに履き替えてコースに戻ります。この第3スティントは雨足がこの日一番激しく、山下をはじめ多くのドライバーが「走るのは危険すぎる」と訴えるほどでした。そして53周目にセーフティーカーが導入されそのセーフティーカー走行が続くなか、60周目にフィヨルドバッハ選手にバトンタッチしました。

ここからフィヨルドバッハ選手はフルスティント2回+ショートスティント1回の2時間を走行し、ルールで定められているドライバーひとりあたりの最低乗車時間ギリギリとなる残り1時間15分でパターソン選手に交代する予定でした。しかし、パターソン選手に交代する直前に、コース上で発生したクラッシュによりセーフティーカーが入ってしまい、その後3周に渡ってピットレーンがクローズドとなりピットインできない状態となってしまいます。結局パターソン選手に交代できた時、レースの残り時間はすでに約1時間ほどで、ハイクラスレーシングはペナルティの対象となってしまいます。結局パターソン選手はクラス5位でチェッカーを受けましたが、レース審議員はドライバーの走行時間不足などの違反に対し、レースの総周回数から"6周+1分14秒"を減算するという裁定を下し、正式結果はクラス7位となりました。

スタートから3スティント計2時間46分を走行した山下は「僕の最後のスティントの雨は水しぶきとかじゃなくて、降っている雨で前が見えなかった。レース人生で一番ひどい雨でした。あの雨量でも赤旗にならないことも驚きです。SC中のスピンは自分のミスです。この週末の間にフルウェットからドライまで、考えらえるすべての路面を経験できたと思いますので、次にスパに来ても大丈夫だと思います」

  • 決勝前からの大雨によりSCスタート、山下がスタートドライバーを任される

    決勝前からの大雨によりSCスタート、山下がスタートドライバーを任される

  • 11周目にはオーバーテイクを決めて5番手に浮上

    11周目にはオーバーテイクを決めて5番手に浮上

  • まだ濡れているスパをドライタイヤで挑むも・・・

    まだ濡れているスパをドライタイヤで挑むも・・・

  • フルウェットからウェット、セミウェット、ドライと、

    フルウェットからウェット、セミウェット、ドライと、"スパ・ウェザー"の経験を積んだ