FIA 世界ラリー選手権(WRC)とは
40年以上の歴史を誇る
ラリーの最高峰
世界中のあらゆる道が
戦いの舞台となる
FIA 世界ラリー選手権(FIA World Rally Championship=WRC)は1973年に創設された。世界各地で開催されていたラリーの中から選ばれた13のイベントがシリーズ化され、世界選手権のタイトルがかけられたのがその始まりである。以降、WRCは40年以上にわたりスプリントラリーの最高峰として君臨。ラリーが盛んな欧州や南米では、F1に勝るとも劣らない人気を誇っている。
WRCは、SS(スペシャルステージ)と呼ばれる、交通が遮断された一般道を市販車ベースのマシンで走り、タイムを競うタイムアタック競技だ。サーキットレースとは違い、SSでは1台ずつの走行が基本となり、1~3分の間を置いてスタートする。SSは3~4日間に渡り何本も行われ、各SSの合計タイムによって、競技最終日の日曜日に勝敗が決まる。
SSはターマック(舗装路)、グラベル(未舗装路)、スノーなど様々なコンディションの道で行われ、ラリーごとにコースのキャラクターは大きく異なる。SSとSSの間は公道を走行して移動を行い、その移動区間(リエゾン)では他の一般車と同様交通ルールを守って走らなければならない。また、ドライバーと、コ・ドライバーのふたりがペアを組んで戦うのも、ラリーならではの特徴である。
ラリーウィーク
通常、チームはラリー開催週月曜日のサービスパーク設営から現地での準備が始まる。選手は火曜日からレッキ(コースの下見走行)を開始し、木曜日夕方のセレモニアルスタートで競技がスタートする。
多くの大会は木曜日のセレモニアルスタート直後にDAY1として最初のSSが行なわれ、その後日曜日のDAY4まで4日間にわたって15~25本のSSが行なわれ、表彰式で幕を閉じる。
※スケジュールは一般的な場合。イベントによって異なる場合あり。
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月曜・火曜
サービスパーク設営
ラリー期間中、サービスパークには各チームのサービスやホスピタリティが設営され、メカニックたちの仕事ぶりやエンジニアと話す選手たちの姿を間近で見ることができる。
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火曜・水曜
レッキ(コース下見)
全開走行区間であるスペシャルステージ(SS)をラリー前に下見走行し、コーナーの大きさや路面の状態などをチェックする。コ・ドライバーは、ドライバーが伝えるコースの情報をペースノートと呼ばれるノートに記し、本番ではそれを読み上げる。
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木曜
シェイクダウン(テスト走行) / セレモニアルスタート
競技開始を前に1台ずつポディウムに上り、多くのファンの前でスタートする。ラリーの始まりを彩る華やかなイベント。
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木曜・金曜・土曜・日曜
スペシャルステージ(SS)
木曜日から日曜日にかけて15〜25本(大会毎に異なる)のタイムアタックを行う。1本のSSは、2kmと短い場合や 50kmと長いSSもあり、競技は、移動区間であるリエゾンとあわせると1大会で1,000km以上の距離を走る。
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日曜
パワーステージ / 表彰式 / 記者会見
通常、競技はパワーステージという上位5名にボーナスの選手権ポイントが与えられる特別なSSで終了する。勝敗は全SSの合計タイムによって決まり、表彰式でラリーは幕を閉じる。
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トヨタがWRCに挑む理由
世界には様々な道がある。激しい凹凸が続く荒れ果てた未舗装路、ハイスピードなコーナーが連続するアスファルトの峠道、新雪の下にアイスバーンが隠れるスノーロード。トヨタが目指す「もっといいクルマづくり」を実現するためには、そういった一般の人々が普段走る道をより深く知らなければならない。そして、世界中のあらゆる道で「いかに速く走るか」を競うラリーというモータースポーツは、私たちトヨタにとって最高の鍛練の場であり、その最高峰であるWRCは、世界の道を知る上で最適な舞台である。市販車をベースに開発したGR YARIS Rally1 HYBRIDでラリーのトップカテゴリーに挑むことにより、人と技術は鍛えられ、得られた知識や経験が今後の市販車開発にフィードバックされる。それが、トヨタがWRCに再び挑む理由である。
トヨタとWRC
トヨタのモータースポーツ活動は、1957年に開催された豪州一周モービルガスラリー出場がその原点である。WRCには創設初年度の1973年にプライベーターを支援する形で出場し、同年はやくも初優勝を達成。その後はマニュファクチャラーとして参戦体制を強化し、サファリラリー3連覇など数多くの勝利を飾った。1990年に初めてWRCチャンピオンドライバーを輩出し、1993年には日本メーカー初となるWRCマニュファクチャラーズタイトルを獲得。三菱や、スバルと共にWRCを盛り上げ、日本車の全盛時代を築いた。1999年にワークス活動を終了するまでに、トヨタは3度のマニュファクチャラーズタイトルと、4度のドライバーズタイトル獲得という記録をWRCの歴史に刻んだ。そして2017年には、TOYOTA GAZOO Racing World Rally TeamとしてWRCに復帰。2018年に年間5勝、通算4度目となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得。2019年にはオィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組が初のドライバーズおよびコ・ドライバーズ・タイトルを獲得した。そして、3人のドライバーを一新して臨んだ2020年は7戦中4戦で優勝。オジエ/イングラシア組が、通算7度目のチャンピオンに輝いた。2021年は、オジエ/イングラシア組が、通算8度目のチャンピオンに輝き、ドライバーズおよびコ・ドライバーズ・タイトルを獲得、さらにマニュファクチャラーズタイトルも獲得し1994年以来の三冠を達成した。Rally1 HYBRID導入初年度の2022年はオジエがシーズンフル参戦を止めたが、ロバンペラ/ハルットゥネン組が年間6勝でドライバーズおよびコ・ドライバーズ・タイトルを獲得。チームも年間7勝により2年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、三冠を守った。
カテゴリー
WRC(FIA世界ラリー選手権)は世界各国で開催されていたラリーイベントをシリーズ化し、1973年に誕生した。選手権はドライバーおよびコ・ドライバーを対象とするもの、マニュファクチャラー(製造者)を対象とするもの、マニュファクチャラー以外のチームを対象とするものに分かれている。WRCでは様々なクルマの出場が認められているが、2022年シーズンより新たにハイブリッドシステムを備える「Rally 1」車両が、従来のWRカー(ワールドラリーカー)に代わり、トップカテゴリーとなった。マニュファクチャラーは1戦につき最大3台をノミネートする事ができ、うち上位2台がマニュファクチャラーズポイント獲得の対象となる。また、Rally1で出場するマニュファクチャラー以外のチームは「WRCチーム」としてエントリーすることができるが、その場合は各戦最大2台までのノミネートとなり、ヨーロッパ以外のラリーを1戦含む、7戦以上のラリーに出場しなければならない。
WRCでは、Rally1車両で出場する選手やチーム以外のコンペティターを対象とする「サポート選手権」が設定されている。WRC2はRally2車両による、WRC3はRally3車両による選手権であるが、2023年シーズンは選手権の枠組みが一部変更された。WRC2とWRC3はどちらも、チームが登録したドライバーおよびコ・ドライバーが選手権の対象となり、2023年はWRC2のみチームタイトルもかけられる。また、WRC2には、過去にRally2車両によるWRC2およびWRC3タイトル獲得経験がなく、WRCマニュファクチャラーズポイントを獲得するためにノミネートされたことがないドライバーと、そのコ・ドライバーを対象とする「WRC2チャレンジャー選手権」が新たに設けられた。Rally2は、以前はR5という名で呼ばれていた4WDのラリー専用車両であり、Rally1に次ぐ高い性能を備えている。現在はフォード、シトロエン、フォルクスワーゲン、シュコダ、ヒョンデが車両を製造し供給しており、トヨタも近い将来の投入を前提にGR YARIS Rally2コンセプトを開発している。Rally3は、FIAが定める5段階のラリー車両ピラミッドの中間に位置づけられる4WD車両であり、Rally2よりも市販車に近い仕様のため、価格面でも性能面でも若いドライバーにとっては敷居の低いラリーカーといえる。ただし、現在はフォードのみがクルマを提供をしている。
Junior WRC選手権は、1994年1月1日以降に生まれた若手ドライバーと、コ・ドライバー(年齢制限なし)を対象とする選手権。過去には「WRCアカデミー」というシリーズ名だった時代もあり、オジエとエバンスはジュニアカテゴリーでチャンピオンを獲得し、ステップアップのチャンスを手にした。以前は前輪駆動車であるRally4(旧 R2)車両のワンメイクシリーズだったが、2022年より4WDのRally3車両にアップグレードされた。2023年シーズンについては全5戦で争われる。