ラリー車両解説
ヤリスWRC
ワールドラリーカーは、ラリー競技を戦うために開発されたWRCのトップカテゴリーマシンである。ラリーで最大の性能を発揮するために大幅な改造が施されてはいるが、ボディのベースは市販車に準拠している。あくまでも市販車の延長線上にあるマシンであり、ナンバープレートが装着されているため公道を走行することも可能だ。
ワールドラリーカー(WRカー)規定は1997年に初めてWRCに導入され、幾度かのレギュレーション変更を経て現在に至っている。エンジンは排気量1.6リットルの直噴ターボで、ヤリスWRCを含む全WRカーが直列4気筒エンジンを横置きで搭載。出力を制限するために36mm径の吸気リストリクター装着が義務づけられているが、最高出力は380馬力以上、最大トルクは425Nm以上に達する。そのビッグパワーと大トルクは、前進6速のセミオートマチック・ギアボックスと、アクティブ・センターデファレンシャルを備えたフルタイム4WDシステムによって、効率的に4輪に伝えられる。また、ボディに関してはオーバーフェンダー化による車幅の拡大や、大型リヤウイングなど専用エアロパーツが装着されており、高い走行安定性を実現している。
2021年の進化
ワールドラリーカー規定に基づいて開発されたヤリスWRCは、高いエンジン性能、インテリジェントな4WDシステム、路面追従性に優れたサスペンション、磨き抜かれた空力性能により、世界中のあらゆる道を安全に、速く走ることが可能なラリーカーに仕上がっている。2017年のデビュー以降もエンジン、エアロダイナミクス、サスペンションなどのアップデートを重ね、年々着実にパフォーマンスを向上。2018年にはチームを、2019年と2020年にはドライバーとコ・ドライバーをWRCシリーズチャンピオンに導いた。2021年仕様に関しては、前年の車両をベースに各部を改善。シーズン中にはさらなるアップデートを予定している。なお、2021年仕様のヤリスWRCは、新たに「GR」のレタリングを強調したカラーリングを採用した。
各路面に対応する
3種類のタイヤ
グラベル用とターマック用ではタイヤのホイールサイズが異なる。グラベルでは15インチ。一方ターマックでは18インチタイヤを装着する。1大会で使用できるタイヤの本数は規定で決められており、いつタイヤを交換するかも重要な戦略のひとつとなる。
大会やSSごとに違う
セッティング、装備
クルマの仕様やセッティングは参戦するイベントごとに異なる。グラベル、スノー、ターマックの各ラリーでは使用するタイヤが違い、ブレーキやサスペンションも大きく異なる。スムーズな路面を走行するターマックラリーではぎりぎりまで車高を低め、荒れた路面のグラベルラリーではクルマが路面と接しないように車高を高める。また、降雨など路面コンディションの変化に応じて、随時サスペンションや駆動系のセッティングを変更する。夜間の走行時には、ボンネットにライトポッドと呼ばれる補助灯を装着して視認性を高める。
サービスパークでの作業は
時間との戦い
サーキットレースではピットでクルマの整備および修理をするが、ラリーではサービスパークで作業を行う。競技がスタートすると作業をできる時間やタイミングは限られ、通常は朝のスタート前に15分、日中に30分、そして夜に45分作業する事ができる。なお、夜のサービスを終えたクルマはパルクフェルメと呼ばれる車両保管場に入れられ、翌朝のサービスまで整備作業を行なうことはできない。
主要諸元
エンジン | |
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形式 | 直列4気筒直噴ターボエンジン |
排気量 | 1,600cc |
最高出力 | 380馬力以上 |
最大トルク | 425Nm以上 |
ボア×ストローク | 83.8mm x 72.5mm |
エア・リストリクター | 36mm(FIA規定による) |
トランスミッション | |
ギアボックス | 油圧式6速シフト |
駆動方式・差動装置 | 4WD、機械式ディファレンシャルx2、アクティブ・センター・ディファレンシャル(トルクスプリットオプション) |
クラッチ | 焼結ツインプレート・クラッチ |
シャシー/サスペンション | |
フロント/リア | マクファーソン・ストラット |
サスペンションストローク量 | 非公開 |
ステアリング | 油圧式ラック&ピニオン |
ブレーキ・システム | ・グラベル用:300mm(空冷および水冷) ・ターマック用:370mm(空冷および水冷) |
寸量および重量 | |
全長/全幅/全高 | 4,085mm(空力パーツ込)/1,875mm/調整可能 |
トレッド幅 | 調整可能 |
ホイールベース | 2,511mm |
最低重量 | 1,190kg |
性能 | |
加速性能 | 非公開 |
最高速度 | 201kph(理論値) |