WRC

2017シーズン インタビュー Vol.2

Jari-Matti Latvala

TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team
ドライバー ヤリ-マティ・ラトバラ

“以前は安定感に欠けていたけど、今は違う。2018年はタイトルも可能だと思ってる”

エースとして2017年シーズンを戦ったラトバラスウェーデンでは復帰後初勝利をもたらした。“安定感”を手にいれたチームの大黒柱は待望の王座も視線の先に捉えている。

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Text/RALLY PLUS

─2017年を振り返ると、どのようなシーズンでしたか?
「全体的に見ればコンスタントにリザルトを残すことができたし、満足しているよ。これまでは序盤戦に致命的なミスを犯したシーズンもあったけれど、17年は最初から本当にうまくいった。ポルトガルで小さなアクシデントを引き起こしてしまったのも、サルモネラ菌に感染して体調が悪かったからだし、それでも走り続けて9位でラリーを終えることができた。自分のドライビング面に関しては、シーズンをとおして調子が良かったと思う」

─いくつかのラリーで残念なメカニカルトラブルに見舞われましたね。
「確かにフィンランド、ポーランド、ドイツ、スペインはマシントラブルに悩まされたね。最終戦のオーストラリアでミスを犯したことに関しては、自分に対して本当にガッカリしたよ。でも、なぜそうなってしまったかは理解しているし、問題はない。もっと上を目指せたかもしれないけれど、安定して走り続けることができて、いいシーズンだったと思う」

─シーズン開幕前、トヨタ・ヤリスWRCをドライブした時、勝てるラリーカーになると予想していましたか?
「1年くらい前、モンテカルロに向けたテストをした時の感触はかなり良かった。スノー路面でのテストも、力強い手応えを感じることができた。でも、メキシコに向けたグラベルテストをした時は、『これは簡単にはいかない』と思ったよ。メキシコはかなり難しい展開になることが分かったし、実際にそのとおりになったよね。標高や気温の高いステージでは、まだ経験不足が露呈してしまった。それでも、かなり最初の段階からヤリスWRCには、いいイメージを持っていたよ」

─1年を戦い終えて、ヤリスWRCのアドバンテージはどこにあると感じていますか?
「エアロダイナミクスだね。高速ラリーではこの長所がスピードを生んでいる。あとはエンジンもかなり強力だと思う」

─確かにライバルと比べると、空力にはかなりユニークな印象がありますね。
「ひと目でヤリスWRCと分かるアグレッシブな外観を持っているよね。ダウンフォースはかなり強力だし、ドライブしていてもエアロによってマシンが地面に押し付けられるのが分かるからね」

─逆に課題は、どのあたりに残っていますか?
「コーナリングにおける回頭性だね。例えばヘアピンやS字コーナーなどタイトなコーナーが多いテクニカルステージでは、ヤリスWRCにはまだ改善の余地がある」

─それはセンターデフのセッティングに課題があるのでしょうか?
「そうだね。現時点で最も改善できるポイントがあるとすれば、センターデフだと思う。センターデフに関しては、まだ開発や評価が十分に行えていないんだ。シーズンを終えたいま、この点についてはフォーカスすべきかもしれない」

─テストが足りていないということですか? それともコンポーネントに問題があるのでしょうか?
「シーズンがスタートしたら、様々なことを学びながらも、次のラリーに向けて準備しなければならない。限られた時間のなかで、僕たちはエンジンの進化に懸命に取り組んだ。シーズン序盤は冷却系に問題があったから、その開発にも集中しなければならなかった。さらに電気系のトラブルもあったから、そちらにも目を向ける必要があったんだ」

─実戦を戦いながら、問題を解決しなければならなかったわけですね。
「シーズン終盤にはトラクションやサスペンションのトラブルにも見舞われたしね。とにかく時間が足りなかった。それでも、いま挙げたような問題はすべて解決されたし、ようやくセンターデフに集中できるよ。ここがシーズンオフテストでのターゲットになる」

─長所のひとつに挙げてもらったエンジンについて、もう少し詳しく聞かせて下さい。
「初めてヤリスWRCをテストした時、パワフルだったけど、スロットルを開けた時のレスポンスがあまり良くなかった。この点に関してはずっと改善を続けたし、スタートダッシュを良くしようとローンチシステムも改良した。それからエンジンマネージメントも、当初は課題だったね。気温が高いと、エンジン温度が上がりすぎてしまうんだけど、それをコントロールする術がなかったんだ。いまではパワーを落として、温度を正常な状態に戻すように電気的にコントロールしている。とても洗練されたシステムになった」

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