特別戦 FUJI
Yaris Cup 2024 特別戦
全国5シリーズのチャンピオンが出そろったグランドファイナルは
北海道と東北を制した川福健太選手がフロントローから逆転で優勝を飾る
2021年にVitz Raceから移行した「TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup(以下、Yaris Cup)」は、今季で4年目のシーズンを迎えた。これまでの3シーズンは、全国を東西に分けた“東日本シリーズ”と“西日本シリーズ”の2シリーズで競われてきたが、2024年は前身のVitz Raceと同様に、全国を5地区にわけて「北海道シリーズ」「東北シリーズ」「関東シリーズ」「関西シリーズ」「九州シリーズ」として開催されることとなった。北海道シリーズは十勝スピードウェイ、東北シリーズはスポーツランドSUGO、九州シリーズはオートポリスのサーキットで競われ、関東シリーズは富士スピードウェイとモビリティリゾートもてぎ、関西シリーズは鈴鹿サーキットと岡山国際サーキットが舞台。各シリーズは3戦のシリーズとなっていて、関西シリーズが5つのシリーズに先駆けて4月28日に開幕戦を開催した。各シリーズは順調に3戦のシリーズを消化していき、日本一のヤリスカップカー遣いを決める「TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2024特別戦(グランドファイナル)」が12月21日(土)に富士スピードウェイで開催された。
今回のグランドファイナルは各シリーズの上位7台とCVTクラスの上位3台に参戦権が与えられ、富士スピードウェイには9台のCVTを含めた33台がエントリーした。
レースウィークの公式プログラムは、12月20日(金)の専有走行からスタート。32台のマシンが30分の練習走行を実施し、昨年のグランドファイナルを制した♯1小野田貴俊選手がコースレコードに迫る2分14秒240のトップタイムをマークした。
予選と決勝レースは21日(土)の1日で実施するワンデイでの決戦となる。予選は8時35分から50分までの15分間で競われ、12月末の早朝ということで快晴だが気温は3℃と冷え込んだ状況のなかで行なわれた。
効率的なスリップストリームをいかに使えるかがキーポイントとなる予選のため、各シリーズを戦った選手達がいくつかの集団にわかれてコースイン。計測1周目に好タイムをマークしたのは関西シリーズでチャンピオンに輝いた♯551廣島嵩真選手で、タイムは2分14秒332。2番手には2022年、2023年に西日本シリーズを制している♯38神谷裕幸選手が、2分14秒500で続いた。ディフェンディングチャンピオンとなる小野田選手は2分14秒773で、この時点では5番手。計測2周目以降も集団となりタイムアップを図っていくが、路面コンディションが上がっていかないのかタイムが伸びない。その中で計測4周目には北海道シリーズと東北シリーズの両方でチャンピオンを獲得した♯22川福健太選手が、2分14秒396をマークし2番手に食い込む。15分の予選は最後まで集団での走行となったが、結果として廣島選手がポールポジションを獲得。フロントローの2番手は川福選手、3番手には神谷選手、4番手には2分14秒571をマークした♯5大木隼人選手が並んだ。
予選が終了してからわずか3時間のインターバルで10周の決勝レースは始まる。早朝に比べると暖かいものの気温は12℃で、厚手の上着が欲しい気候となっていた。1周のフォーメーションラップを挟み、日本一のヤリスカップカー遣いを決めるグランドファイナルは11時55分にスタートした。
ポールポジションの廣島選手は、ポジションを守ったまま1コーナーをクリア。2番手の川福選手はやや加速が鈍り、1コーナーでは4番手から好スタートを決めた大木選手に並ばれる。セクター2は前後のバンパー同士が当たるほどのテールトゥノーズで大木選手がプレッシャーをかける。しかし川福選手は2番手を守ると、ホームストレートでは廣島選手のスリップストリームに入り1コーナーに2台が並んで進入。2台はコースオフしながらも川福選手がトップに立った。この混乱で2番手は大木選手、3番手は神谷選手、廣島選手は4番手まで後退してしまった。しかし3周目には廣島選手が神谷選手をパスして3番手になると、前を走る2台を追った。トップに立った川福選手だが2番手の大木選手からつねにプレッシャーをかけられ、1つのミスでポジションが入れ替わる状況に置かれる。4周目の1コーナーでは大木選手がイン側から隙をつくが、川福選手が必死にポジションを守る。4周目には廣島選手が2分15秒024のファステストラップを記録し、上位2台に追いつく。レース後半は3台のバトルになるかと思われたが、6周目を過ぎると廣島選手のペースが鈍り7周目に神谷選手に抜かれると8周目には100Rの外側にマシンを止めてしまった。これで上位2台による争いとなり、終盤もテールトゥノーズの展開が続いた。大木選手はホームストレートではスリップストリームに入るが抜くにはいたらず、チャンスをうかがったものの川福選手が隙を見せず、10周目にトップでチェッカー。2024年のグランドチャンピオンは、北海道シリーズと東北シリーズを制した川福選手が獲得した。
9台が参戦したCVTは、関西シリーズの3戦をすべて制している♯120堀内秀也選手が、予選で2分16秒138のコースレコードを樹立。決勝レースも逃げ切って、ポールトゥウィンを果たした。
●以下ドライバーコメント
<Grand Finalチャンピオン>
♯22川福健太選手
ピースMS剛式Yaris
予選はどの集団についていくかがキーポイントになると考えていました。富士スピードウェイを得意とするグループと一緒に走りたかったのですが、コースインからタイミングを合わせるのは難しいと考え、コース内で集団についていきました。結果的に、スリップストリームを上手く使え、狙っていた予選の後半でタイムを伸ばせました。フロントローからのスタートだった決勝レースは上位陣で逃げようと思っていたのですが、スタートでのホイールスピンやセクター3での感覚から、トップに立って展開をコントロールすることが優勝への道だと判断しました。すると2周目の1コーナーでチャンスが訪れ、廣島選手をパスできました。その後は大木選手にプレッシャーを掛けられましたが、テールトゥノーズで走ることでお互いの得意とするコーナーが分かりました。とにかくタイヤの性能を落さず、終盤に勝負をかけられても挽回できるようにしました。防戦でしたが、コントロールしながら最後まで走り切りました。サポートしてくれている周りの人たちには優勝すると言ってきたので、有言実行ができて良かったです。
<北海道シリーズ、東北シリーズチャンピン>
♯22/90/930川福健太選手
今シーズンは、年明けまでどのレースに出場するか決まっていませんでした。知り合いからヤリスを貸し出してくれると申し出があり、まずはスポットでヤリスカップを戦ってみることにしました。これまで十勝スピードウェイとオートポリスではレースに参戦した経験がなく、この2箇所を走れれば全国の国際サーキットを走破したことになります。そんな切っ掛けで転戦を始めたのですが、結果的には3台のマシンに乗って全国の5シリーズに参戦していました(笑)。チャンピオンを獲れた北海道と東北は、予選での速さも見せられたのですが、決勝レースでの駆け引きや勝利を引き寄せる展開を組み立てられたことが要因だと考えています。
<関東シリーズチャンピオン>
♯1小野田貴俊選手
昨年はグランドファイナルで勝つことができ、今季も出られるレースはすべて勝つつもりでした。ただ2位が2回で優勝が1回と、2位が多くなってしまいました。富士スピードウェイは結果が出ましたが、モビリティリゾートもてぎでの合わせ込みが足りていないと感じました。それでもシリーズチャンピオンを獲得したことは非常に嬉しいですし、安定した成績を残せたことが要因になりました。チームは着実に成長していますし、足りないところを指摘してくれるほどバックアップしてくれています。長年にわたって戦っているチームがありますが、それらのトップチームに肩を並べられるようになったと感じています。来シーズンのことはわかりませんが、ステップアップしたい気持ちは常に持っています。
<関西シリーズチャンピオン>
♯551廣島嵩真選手
昨年は西日本シリーズの2位となり予選では速さを見せられたのですが、決勝レースで強さや粘りが出せなかったと思っていました。今年はもちろんチャンピオンを目指していたのですが、開幕戦の予選で7位となり意気消沈してしまいました。ただ、決勝レースでは展開にも恵まれて2位となり、第2戦と第3戦は連勝ができました。チャンピオンを獲れた要因としてはライバルの癖やデータをしっかりと把握し、自分の展開に持ち込めたことです。また、これまで決勝レースで揉まれ続けたことで、メンタル面の成長も感じられました。一筋縄ではいかないシリーズで2勝を挙げることができ、応援してくれた皆さんに強さを見せられたと思います。
<九州シリーズチャンピオン>
♯50三浦康司選手
2021年に西日本シリーズを戦ってから2年間はヤリスカップに出場していませんでした。ヴィッツレースではシリーズチャンピオンを獲ったこともありましたが、速く走らせる乗り方が異なっていて戸惑いがありました。それでも神谷選手などのライバルが多くの情報を与えてくれたこともあり、ある程度の手応えを持ちつつレースに挑めました。ただ、レースウィークにしかヤリスのカップカーに乗る時間がなく、限られた時間の中で成績を残すのは難しかったです。メンタル面も含めて強いドライバ-になりたいと努力しているので、チャンピオンを獲れてそれが実現できました。