Yaris Cup 2025
Grand Finalレポート
♯551廣島選手が4台の大混戦となった最終周のバトルを制して
昨年のグランドファイナルでの悔しさを払拭する勝利を挙げる
2024年から前身のVitz Raceと同じく全国を5地区にわけたシリーズ戦で競われている「TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup」。今季も全国7箇所のサーキットを使用して、「北海道」「東北」「関東」「関西」「九州」の各シリーズが激戦を繰り広げてきた。
4月6日に大分県のオートポリスで九州シリーズが開幕すると、関西シリーズ、関東シリーズ、北海道シリーズ、東北シリーズという順に2025年シーズンが幕を開けていき、各地区ともに3戦が実施された。東北シリーズは第2戦と第3戦がダブルヘッダーとなったが、その他のシリーズは1-3ヶ月のインターバルで3戦が組まれていて、11月30日の岡山国際サーキットで行なわれた関西シリーズ第3戦でシーズンが締めくくられた。
そして、各地区のランキング上位に出場権が与えられる「TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2025 Grand Final」が、今年も富士スピードウェイを舞台にして12月20日(土)に実施。エントリーは各シリーズのチャンピオンを筆頭にした実力者で、CVTクラスの9台を含めて39台がエントリーリストに記載された。
前日19日の占有走行上位にはYaris Cupの実力派が並んだ。
前日の12月19日(金)にはタイム計測が実施される専有走行が設けられていて、関東シリーズで連覇を果たした♯3小野田貴俊選手が2分14秒416のトップタイムをマーク。2位には昨年のグランドファイナルを制した♯1川福健太選手、3位には関西シリーズを制した♯99行 和久選手が続き、上位にはYaris Cupの実力派が並んだ。

朝から雨天となる予選は、行選手がポールポジションを獲得
ワンデイ開催となったGrand Finalの当日は、専有走行とは打って変わって朝から雨天となる。予選が始まる8時20分のときにはすでにコース上が濡れていて、ウエットコンディションでの走行となった。気温も10℃以下だったため、アウトラップと計測1周目は多くのマシンがウィームアップに充てていた。計測2周目には行選手が2分22秒台をマークすると、計測5周目には2分22秒211までタイムアップ。昨年のグランドファイナルでポールポジションを獲得した♯551廣島嵩真選手が2分23秒201で2番手のタイムを記録するが、両者のタイム差は約1秒近くあった。15分間の予選の終盤になるとタイム更新をする選手が増えてきたが、トップのタイムを上回ることはできず、後続に0.990秒の大差を付けて行選手がポールポジションを獲得した。

予選終了から3時間のインターバルで、決勝レースのスタート進行が始まる。今シーズンを締めくくる決勝レースということで、販売店の応援団や多くの関係者がグリッドに並んだマシンと選手へエールを贈っていた。予選時には雨が降っていたものの、その後は曇天だが降雨はなく走行ライン上のみ乾いた状況での決勝レースとなった。
Yaris Cup 2025 Grand Final 決勝

2025年シーズンの頂点を決めるGrand Finalは予定通りの11時50分にフォーメーションラップがスタート。ポールポジションの行選手は、フロントローの廣島選手を押さえて1コーナーを通過する。後方では4番手スタートの♯137千吉良 怜選手が1ポジション上げ、4番手には2ポジションアップした小野田選手、5番手には♯4CANDY TAKEKAWA選手が続いた。2周目に入ると早くも上位争いが熾烈となり、2番手の廣島選手がダンロップコーナーで行選手をパス。後方では小野田選手とCANDY選手のチームメイトが千吉良選手を攻略して3番手、4番手へ浮上した。3周目の1コーナーでは行選手が廣島選手をイン側からパスして、再びトップに戻る。行選手は、ペースアップして廣島選手を離したいところだが、両者はテールトゥノーズのまま5周目に入り、ダンロップコーナーのブレーキングで再び廣島選手が抜き返す。後方では小野田選手とCANDY選手がスリップストリームを使い合いながらペースが上げていくが、トップ2には追いつかない。6周目以降は、トップに立った廣島選手が隙を見せずに行選手を押さえていく。それでも2台のギャップは0.2秒から0.3秒ほどでテールトゥノーズの状況だった。2番手の行選手と3番手の小野田選手は2秒ほど離れていて、優勝争いと表彰台争いに分れていた。拮抗した状態はファイナルラップまで続くと、セクター2のアドバンコーナーで行選手が仕掛ける。廣島選手のイン側に入ろうとしたが、止まりきれず2台は接触してしまう。トップを走行していた廣島選手はハーフスピン状態になるが、すぐに立て直してトップを死守。このアクシデントに乗じて小野田選手とCANDY選手が追いつき、ダンロップコーナーでは4台のマシンが団子状態となる。ダンロップコーナーの立ち上がりでは、廣島選手と小野田選手が並び、3番手にはCANDY選手が続き、行選手は2ポジション下げて4番手に後退してしまった。廣島選手と小野田選手は続く第13コーナーでサイドバイサイドになるが、GR GTコーナーへイン側から進入した廣島選手がトップを守り抜いた。4台の熾烈なバトルは、残すところ最終コーナーとストレートの戦いとなり、ここで4番手まで落ちていた行選手がCANDY選手と小野田選手の2台抜きを試みる。
最終コーナーを立ち上がった時点で、トップは廣島選手、行選手と小野田選手がサイドバイサイドで並び、その後方にCANDY選手がつけていた。4台はスリップストリームを使いながらコントロールラインを目指し、廣島選手がトップでチェッカーを受け、2位には行選手、3位には0.012秒差で小野田選手、4位にはCANDY選手、5位には千吉良選手が入った。

●以下コメント
<Grand Finalチャンピオン>
♯551 廣島 嵩真選手
新大阪きらく!おきつ内科クリニックYaris
昨年のグランドファイナルではポールポジションを獲れましたが、決勝レースでリタイヤして悔しさが残っていました。今シーズンはスポットで2戦のみの参戦でしたが、グランドファイナルに向けて準備を行なってきたので、それが間違っていなかったので安心するとともに、リベンジができて非常に嬉しいです。
予選では2番手でしたがブレーキの調子が良く、抜く自信はありました。抜いたのは2回ともダンロップコーナーのブレーキングで、その前のアドバンヘアピンのペースが良かったのもアドバンテージでした。最終周の接触は驚きましたが、すぐに立て直せて後方とのギャップもあったので結構、冷静に対処できたと思います。そのあとの第13コーナーからGR GTコーナーでの小野田選手とのバトルが、決勝レースでもっともヒヤッとしました。ここで抜かれたらお仕舞いだと思い、過去一で頑張ったつもりです。クリーンなバトルをしてくれた小野田選手には感謝しています。
チームの皆さんにはさまざまな場面で支えてもらったので、この勝利やノウハウをしっかりと伝えられたらと思っています。

<北海道シリーズチャンピオン>
♯34 渡辺 圭介選手
ヴィッツレース時代から十勝スピードウェイには通っていて、ヤリスカップになってから5年目で念願のシリーズチャンピオンになることができました。3戦で2勝という結果でしたが、ランキング2位の選手は速さがあって最終戦では競り負けてしまいました。今シーズンは、サーキットの走行経験で上回っている優位性がありましたが、来シーズンはどうなるか分かりません。しっかりと練習を重ねていって連覇できるように頑張っていきます。
<東北シリーズチャンピオン>
♯4/14 CANDY TAKEKAWA選手
本当は関東シリーズでチャンピオンを獲ることを狙っていたのですが、平行して参戦していた東北シリーズでチャンピオンになれました。予定が変わったのが開幕戦でチームメイトの小野田選手の調子が悪く、私が2位だったため東北シリーズを狙っていこうということになりました。第2戦、3戦は連戦で、スポーツランドSUGOのドライは得意なのですが決勝レースがウエットとなったので、非常に手に汗握る展開でした。それでも、チャンピオンになれたのはやはりチーム力だと思います。
<関東シリーズチャンピオン>
♯3 小野田 貴俊選手
シーズン前のもく北シリーズでチームメイトのCANDY選手が関東シリーズを狙おうと思っていました。ただ、シーズン途中に投入した後期モデルのマシンが本調子にならず、どうにもならない状況でした。それでもチームがテストする機会を用意してくれて、走行を重ねるうちに富士スピードウェイでは前期モデルに匹敵するパフォーマンスを発揮できるようになりました。そのため最終戦では2位に入れて、接戦でしたが関東シリーズで2連覇ができました。
<関西シリーズチャンピオン>
♯99 行 和久選手
フル参戦してから今シーズンで4年目になるのですが、ようやくチャンピオンが獲れて少しは関係者に恩返しができたかなと思っています。体制はほかの選手がうらやむくらいなので、結果が出せずに悔しいシーズンが続きました。ただ、開幕戦の鈴鹿サーキットで勝つことがき、そこで自信がついたのが大きかったです。第2戦も2位、第3戦は優勝とメンタル面の成長も感じられました。チームの皆さんのサポートがあったからこその結果で、本当に感謝しています。
<九州シリーズチャンピオン>
♯414 冨川 和紀選手
今シーズンから九州シリーズにフル参戦することが決まって、開幕前からテストで走り込みました。それなりのタイムが記録できていて、この調子なら上位争いができると感じていました。開幕戦で2位に入ることができチャンピオンへの意識が生まれたのですが、結果的には優勝がなかったので悔しさがあります。広島トヨペットのサポートを受けてエントリーしていて、現場でもしっかりと作業を行なってくれたお陰でもあります。また、九州勢の選手の温かさを感じていて、その雰囲気にも救われました。