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2014チャンピオン/RI4Aエンジン開発ドライバー 中嶋一貴
with RI4Aエンジン開発担当エンジニア 佐藤真之介
前編(1/2)

前編「エンジンへの信頼が築いたアドバンテージ」

開幕前のテストには完成の域に達していたRI4Aエンジン

--トヨタが投入した新エンジン"RI4A"は、開幕戦鈴鹿の予選でトップ7を独占、レースでも表彰台を独占と初戦から好成績を挙げました。エンジンを供給する佐藤エンジニアとしては、開幕戦前から自信はありましたか?

佐藤真之介(以下佐藤)ハードウェアの仕様としては、2013年12月のテストで決まっていました。あとは、味付け、マッピングの部分でしたが、それもその時点でほぼ決めていました。各チームの車両がシェイクダウンする鈴鹿のファン感謝デーには11台、自信があるものをお渡しできました。
ただ、開幕前のテストを見ていた方は気付いたかと思いますが、何台か止まってしまったクルマもありました。電子制御系に問題があり、余裕持ったフェールセーフがかかってしまった。問題は小さかったのですが、ちょっと目立ってしまいましたね。次の富士テストでは解決しており、開幕戦には不安はありませんでした。

--テスト仕様からシーズン用の車両となったわけですが、中嶋選手の感触はいかがでしたか?

中嶋一貴 中嶋一貴(以下中嶋)テストで乗っていたので、どんなものかはある程度分かっていました。でも、最初に乗ったときは「アレ?」って感じましたね(笑)。実は、エンジンがデリバリーされた時点で、(テストで施した)セッティング的なものがリセットになっていたんです。もちろん、数回走ってすぐに自分の好みに直しましたけど。
RI4Aエンジンに関しては、最初からまったく不安なく、安定していたし、速かったし。(ライバルエンジンに対して)明らかにアドバンテージもありましたしね。これらはオフのテストから見えていたことですが、それが変わらずキープできていたので、今年はいいシーズンになりそうだなとポジティブな開幕前でした。

--開幕に当たり、各チームから要望などありましたか?

佐藤僕は、エンジンに関しての窓口となって、チームさんから要望を受け、開発を進めるという立場でした。RI4Aエンジンでは、2013年に5回あった開発テストを、持ち回りで4チームにやっていただきました。その時点で共有できるデータはほぼすべて共有していました。テストに参加できなかったチームにも走り出す前に全部提供しました。それもあって、特に(改良や希望など)リクエストはなかったですね。これはどうなってるのと言う質問程度でした。こちらとして対応することはなかったです。

中嶋合同テストが始まる前には、一通り(開発は)終わっていたという感じでした。TEAM TOM'Sとしても好感触で開幕を迎えられました。...まあ成績ではあんな感じでしたが(苦笑)。基本的に開幕鈴鹿、第2、3戦の富士では、エンジンに関して何も言うことはありません。僕にとって残念なのは、トヨタエンジンのドライバー陣に強力なライバルが多くいること(笑)。まあ、それを言い出したら切りがないですね。

--シーズン序盤はTOYOTA Racingのドライバーたちのつばぜり合いの連続でしたね。エンジンを供給する側からは、どう見えましたか?

佐藤もうぶつかりさえしなければ、壊さなければ思い切ってやってくださいって(笑)。仕事でやっている僕が見てもおもしろいレースをしてましたから、お客さんもきっと楽しんでくれたと思います。

エンジンの高い信頼性が好成績に繋がる

--エンジンだけでなく、シャシーもダラーラ社によるSF14になりました。エンジンとのマッチングやセットアップに関してはどうでしたか?

トヨタRI4Aエンジン 中嶋エンジンの特性が変わってしまうと、それに合わせてシャシーのセットも変えなければなりません。その点、RI4Aエンジンは冬の間から一貫して良いレベルで安定し、新しいトライもあって、正常に進化したので、シャシーもそれに合わせて(セットを)やれました。
エンジンが安定していた分、やれる作業が(ライバルに対して)進んでいたと思いますね。ドライバビリティに関しても、テストの時点から良いレベルに達していましたから。

佐藤各チームにデリバリーされてから、エンジンが不具合を起こして足を引っ張るようなことはなかったと思います。そういう意味では、シーズン中は各チームがセッティングに時間を使っていただけたのかなと思います。

--シーズン前半では、第3戦富士で中嶋選手が勝利しましたね。

中嶋あれは、僕が勝ったというだけ。それ以外は何もないレース(苦笑)。判断が良かったと言う方もいますが、それもたまたまです。TEAM TOM'Sでは、36号車、37号車と全く別に動いてます。あの時もアンドレ(ロッテラー選手)と東條エンジニアは入らないと決めたので、僕は小枝エンジニアから入れと言われた。開幕戦は(立場が)逆だったし。作戦を詰めていくと、どうしても近いものとなります。でも、同チームである限り2台同時の作業はできませんから。

--若手の平川亮選手とのバトルも見ごたえありましたよ。

中嶋あれは完全に僕の独り相撲ですね(苦笑)。勝手に飛び出して。平川選手がミスってくれたからね。難しい状況でしたが、富士は、飛び出すリスクも広いランオフエリアでカバーできますから。それにしても、思ったよりレインがグリップしなかったのもあって...。まあ、気持ちが先に行っちゃったかな(苦笑)。

第3戦 富士、平川亮選手とバトルする中嶋一貴選手