開発者インタビュー

ALPHARD G SPORTS Concept

G's TOYOTA G SPORTS

ミニバンの既成概念を打破したドライビングプレジャーを追求。高級感を昇華しつつ、スポーティーでアグレッシブなスタイルを提案

G's TOYOTA G SPORTS
開発者
開発者南 輝之氏の写真
南 輝之氏
トヨタ自動車株式会社
スポーツ車両統括部
子供の頃にスーパーカーブームが到来。スーパーカーがあると聞けば友達とともに見に行っていたという。特に好きだったクルマはカウンタックで、ガルウィングのクルマへの憧れを捨てきれず、分相応なところでAZ-1に乗る。今はコペンが愛車となっている。

“High End of Athlete Minivan”をキーワードにG'sが提案する「アルファード G SPORTS Concept」。重厚感のあるボディーをスポーティーでアグレッシブなスタイルに変化させ、カッコ良いミニバン、そしてミニバンに走りを求める人に提案するコンセプトカー。ミニバンの既成概念を打破したその中身に迫る。

開発者南 輝之氏のインタビュー写真

──この「アルファード G SPORTS Concept」のターゲット層は20代から40代の男性ということですが、ちょうど南さんもこの年代に入りますよね。

南 輝之氏(以下南):

おっしゃる通りです。まさに私の様に若い頃にスポーツカーに乗っていた人で、家庭を持った環境でミニバンに乗らないといけないが、走りにこだわるお父さん、クルマ好きなお父さんがターゲットです。私の場合は5人家族で、ここ最近はエスティマも所有しています。

──若い頃はどんなスポーツカーに乗ってきたのですか。車歴も合せて教えて下さい。

南:

最初に乗ったのはMR-2で、MR-2はトヨタに入社後、購入しました。スポーツカーが欲しく、セリカかスープラが欲しかったのですが、諸般の事情でMR-2になりました(笑)。しかし、MR-2は乗ってみると面白いクルマでした。当時スキーもやっていたのでMR-2にスタッドレスを履いてスキー場行っていました。雪道で操るのがとても楽しい車でしたね。
その次はスポーツカーではないのですが、ウインドサーフィンを始めたのでハイラックスサーフに乗りましたが、やっぱり走りたくて、ミラターボを購入してミニサーキットに走りに行ったり、ダートを走ったりして遊んでいました。その次はAZ-1で子供の頃はスーパーカーブームだったので、友達の家の板金屋にスーパーカーが入ったと聞くと見に行ったり、隣町のクルマ屋さんにスーパーカーが入ったと聞くと自転車をこいでみんなで見に行ったりしていました。スーパーカーに魅了されていた中でも、カウンタックのガルウィングのドアの開き方を初めて見た時の感動は忘れられません。いつか、そういったクルマを乗ってみたいと思っていましたが、カウンタックなんて高価で買えませんからAZ-1を中古車で探して乗っていました。弊社ではセラがありましたが、あれはちょっとかわいかったので(笑)。
AZ-1は癖のあるクルマでしたが、逆にそういったクルマだったのでうまく乗ってやろうとのめり込んでいきました。軽自動車でも侮れないクルマですよ。トヨタがこういったクルマを作ってくれないかと待っていましたが、なかなか出ないので次はダイハツのコペンを購入し、今でも乗っています。

──お子さんは男の子だそうですが、クルマに対して興味は持っているようですか。

南:

息子が二人居ますが、クルマには全く興味を示してくれません。以前はモータースポーツ部にいたため、「一緒にサーキットに行こう」と誘ってみたこともあるのですが、全然興味を示してくれませんでした。こういった仕事をしている自分の子供がクルマに興味を持ってくれないのはショックでしたね。
ですから、G'sに携わるようになって、もっと若い人に魅力あるクルマを出していきたい、興味を持ってもらえるようなクルマを作りたい、と思うようになりました。

──そんな南さんが開発に携わった「アルファード G SPORTS Concept」ですが、ミニバンでスポーティーな走りを追求することに戸惑いはありませんでしたか。

南:

最初は戸惑いもありましたが、開発を通してアルファードは魅力あるクルマだなぁ、と思うようになっていきましたね。そして、補強を施しG'sの走りの味をつけてG's化することでさらに良いクルマになってきたと思います。動き出した瞬間にベース車とは違う乗り味が体感できるようにしています。具体的には30mmローダウン専用高性能サスペンション、19インチ大径ホイールとタイヤを装着して、ミニバンながら意のままに操れる足廻りにしています。それに合せ、床裏ブレースとスポット増打でボディー剛性もアップさせているほか、FRブレーキは制動力を向上させる大型キャリパー&ローターを採用しています。

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──元々のベース車は乗り心地を優先したクルマ、スポーティーな味付けは大変だったのではないでしょうか。

南:

操縦安定性と乗り心地の両立は一般的に相反するもの言われます。そのため、テストドライバーや設計者の苦労は相当なものだったと思います。最終的にはどちらか一方だけではなく、乗り心地を見ながら高い次元の走りとの両立を狙ったチューニングを心掛けています。車高が高く重量のある車を、ベース車のバランスを崩さずに、いかに機敏に動く様に変身させるかが大変でした。

──ドライバーはベース車とは違うドライビングが楽しめそうですね。でも、後ろに乗る人の乗り心地が悪くなってしまうことはないですか。

南:

ミニバンってこんなにスポーティーにできるのか、と感じていただけると思います。G'sの味つけなら、ミニバンに乗っている感じはしないのではないかと思います。例えば、山道で内輪が浮くぐらいタイトなコーナーでも、「アルファード G SPORTS Concept」ならそんなことはありません。S字のコーナーのラインもきれいにトレースすることができ、まさにスポーツカーに乗っているような、ミニバンを運転していることを忘れるぐらい凄く良くなっています。もちろん、後ろに乗る家族の人たちが気持ち良く乗ってもらえるように足回りのチューニングには留意し、ベース車の乗り心地を犠牲にする様なことはしていません。

──アルファードは元々いかつい顔でしたが、デザインはさらに迫力が増しましたね。

南:

ルームミラーに映った時の印象もデザインを行う上でポイントとなっています。ミラーに映った姿も存在感があるものにしたかったですから。
デザイン的にはベース車との違い、G'sらしさを出せるかがポイントとなりました。デザインは個人の感性でも受け取り方が違うので難しいところで、デザイナーや関係者の苦悩は図りしれませんでした。しかし、その甲斐あってベース車の持つ高いインテリジェントとアグレッシブさをさらに昇華させ、高次元で融合させられたと思います。

──内装、特に運転席まわりも変化をさせていると思いますが、どのように変えているのですか。

南:

内装は元々ベース車が持っている高級感を更に昇華して、スポーティーさと本物感を出すようなアイテムを入れました。ベース車の木目のところはピアノグラックに変更して、運転席まわりをスポーティーに引き締めています。また、センタークラスターもダーク調のスパッタリングに変更して金属光沢とスポーティーな高級感を出すようなデザインとしています。
メーターは放射線状にスリットを入れたアルミ調のデザインになっている。イメージとしては高級腕時計を思わせるシルバーのメーターパネルにすることで黒一色に染まりそうになる室内空間に、アクセントをつけて映えるようにしています。フロントシートはスポーツシートとし、全シートの表皮にアルカンターラを使っています。ハンドル・シフトノブは本革に赤いステッチを合せています。
個人的には、走り心地も室内に座った時もミニバンを感じさせないようにしたかったので、スポーティーな雰囲気にしています。ただ、2列目以降はシート表皮などを変更していますが、従来のラグジュアリー性はそのままとしています。

──開発者の南さんから、イベント会場に来場される方に特にどこを見て欲しいですか。

南:

室内ならドライバーズシート周辺、メーターやセンタークラスターの質感を見て欲しいですね。外観的にはインテリジェントでアグレッシブな全体デザインを見て頂きたいです。スポーツ感を演出するために視覚的にも重心を下げるような、アンダープライオリティーの考え方を取り入れています。下だけ見たらスポーツカーで、上に視線を移せばミニバン、というデザイン構成にしています。また、ベース車はアッパーグリルを強調したデザインですが、G'sではロアグリルを高級感のあるスモークメッキで強調してアンダープライオリティー化しております。
このようなコンセプトカーとしてアルファードは初めてですが、ノア&ヴォクシーを出した時にアルファード&ヴェルファイアでもやってくれ、という声を多く頂きました。試乗して頂くのが一番良いのですが、それができないのが残念ですが、まずはこの「アルファード G SPORTS Concept」を見ていただき、お客様の率直な感想を頂ければと思っています。“ミニバンの既成概念を打破する”そのコンセプトを達成するためにさらに開発を続けていきたいと思っています。

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