開発者インタビュー

PRIUS α TOM’S Version

TOM'S

ベース車両の利便性を崩さず、走る、曲がる、止まるという基本性能をスポーティーにチューニング

TOM'S
開発者
開発者神山裕示氏の写真
神山 裕示氏
株式会社トムス 営業部 自動車関連用品営業課 次長
ちょうどブームだったこともあり、若い頃はバイクやクルマで峠を走り回っていたという神山さん。主にトヨタ車を乗り継いできており、AE86レビンやAE101レビンなど小型スポーツを楽しんできた

ハイブリッド・ワゴンとして人気のプリウスαをベースにトムスがスポーティーにカスタマイズを施した「PRIUS α TOM’S Version」。エコカー、ファミリーカーというカテゴライズからは、頭1つ抜け出すスポーティーな走りが楽しめる1台。シンプルながら洗練されたエアロフォルムは、街ゆく人の目を引きつける魅力を兼ね備えている。

開発者神山裕示氏のインタビュー写真

──トムスがカスタマイズするプリウスαは、家族を持ちファミリーカーを選ぶドライバーには魅力的な1台だと思いますが、この「PRIUS α TOM’S Version」の開発コンセプトを教えて下さい。

神山 裕示氏(以下神山):

ワゴン車であるプリウスαの利便性は損なわず、「走る」「曲がる」「止まる」というクルマの三大基本性能をバランス良く向上させると共に、さりげない美しさを持ったスタイルの実現が開発コンセプトです。
ターゲット層はちょうど私ぐらいの年齢の人で、結婚して子供が2人いる。休みの日には子供たちのおもちゃやスポーツ道具などを積んで出掛ける。時には実家に帰り、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に出掛ける、となれば3列目のシートを使い7人乗りとして使える。そういったプリウスαの利便性の高さは犠牲にしたくないが、1人の時は楽しく運転したい。そんなクルマを求めている人がターゲットとなります。

──まさにターゲットの1人でもある神山さんですが、現在はどんなクルマに乗っているのですか。

神山:

実は、今の愛車は自転車です。究極のエコカーってことで・・・クルマ大好きでこの仕事を選んだのですが、プライベートでは車を所有していません。まぁ、好き過ぎて1台に決められないと思って下さい(笑)。

──変な質問をしてしまいましたね。でも、若い頃は結構クルマに乗っていたと思うのですが、どんなクルマに乗っていたのですか。

神山:

最初はGX61のクレスタで昭和60年ぐらいの年式だったと思います。当時若い人が乗るような改造を施して楽しんでいましたね。
その後はAE86レビン、RX-7、AE101レビン、そしてスターレットターボと乗り継いできました。当時はワインディングを攻めるのがブームだった時代ですから、僕もそんな楽しみ方をしていました。
AE101レビンとスターレットはトムスに入ってから買ったクルマで、開発車に使うために自分で購入したクルマなんです。スターレットは会社内でなかなか開発に至らなかったので、自分で買って自分でやらせて下さいといったクルマです。クルマ好きが高じて、というところですが、本当は会社内でイニシアチブを握りたい、なんて考えもありました(笑)。でも、この頃は仕事が楽しくて給料もいらないと思っていたぐらいでしたね。

──そんなクルマ好きの神山さんが中心となって開発した「PRIUS α TOM’S Version」ですが、こだわったところはどこですか。

神山:

こだわりの部分といえば、真っ先に上げるのはサスペンションですね。トムスではレーシングカーについていたダンパーを改良した、オリジナルのダンパー「Advox」を展開しており、「PRIUS α TOM’S Version」にも装着しています。ダンパーの性能は自信ありますが、それをプリウスαに合せるのが難しかったですね。
プリウスαは乗車人数が1人から、時には7人まで変わります。ですからセッティングを7人乗った時に合わせれば、1人や2人の時は硬くなってしまう。逆に1人に合せてしまえば、7人乗った時に底付きしてしまう。そういった使い勝手も考えて、というところで合せ込むのが難しかったです。しかし、その甲斐あって高級感があってしなやかで、さらに路面を舐めるように走って行くことができるサスペンションセッティングを実現できたと思います。本当なら乗って走って「違うね」ということを体感して欲しいサスペンションですね。

──ハイブリッド車がベースなので留意した部分というのはあるのですか。

神山:

ハイブリッド車は動力系にはほとんど手を入れられないので、ドレスアップとサスペンションチューニングに重点を置いています。サスペンションに関しては先に述べた通りですが、エアロパーツに関しては、プリウスの派生モデルということで、プリウス(ZVW30)のデザインを継承しています。トムスのブランドイメージを崩すことなく、派手さはありませんが、さりげなくドレスアップを行い、分かる人には分かるスタイルを目指しました。

──今回、エアロパーツの開発は結構、苦労した点だとお伺いしましたが、それはどうしてですか。

開発者神山裕示氏のインタビュー写真

神山:

今は新しいクルマが発売される前に、例えばトヨタの場合はモデリスタさんやTRDさんには車両のCADデータが開発時に渡され、それを使いCAD上でエアロをデザインして試作車に装着して撮影してクルマと同時に販売、という流れです。
しかし、我々は車両を手に入れてから開発という昔ながらの方法でカスタマイズパーツを開発してきました。CADを使わず、実車に粘土で造形しながら形にしていく。古い手法ですが、リアルに物を見ながらデザインして、細かいところの変更も自由にできるというメリットもあり、良くも悪くも昔ながらの手法でやってきたわけです。しかし、世のすう勢がCAD中心となってきているため、トムスでも三次元測定機やCADのシステムを入れて専門の部署を作りました。今回はその体制での初の開発だったのです。
一番難しかったのはCAD上の画面で修正することに苦労しました。粘土なら自分で触って「こうして」って言うことができるのですが、CAD上だと修正を指示するのも難しい。デザイナーとデザインの着地点を同じにするのが難しく苦労しました。でも、結果的にはトムスらしく良くできたと思います。

──最後にオートサロンに向けてPRをお願いします。

神山:

「PRIUS α TOM’S Version」はトムスのコンセプトを忠実に再現したトムス仕様の1台です。トムスの原点はレーシングチーム。レーシングチームはホイールやショックアブソーバーを作っているだけではなく、例えばホイールはこれが良い、ショックアブソーバーはどこが良い、といった具合に良いモノを選んで、それを1台のクルマにまとめ上げて天候や路面コンディションに合せて競争して勝っていく会社だと思うんです。個々の部品を作る能力があるのでは無くて、それぞれのパーツをトータルでまとめあげてバランス良く仕上げていく、というのがトムスの仕事。ですから、市販車でも同じコンセプトで仕上げているのです。それが分かるのは乗っていただく、使っていただくことが一番だと思いますが、まずオートサロンの会場でその一端を見ていただければと思っています。

  • 開発写真
  • 開発写真

TOYOTA GAZOO Racing 東京オートサロン2012 トップページ  >  出展車両/開発者インタビュー  >  TOM'S 開発者インタビュー/株式会社トムス 神山 裕示氏