2012年の全日本ラリー選手権もついに最終戦を迎えた。全9戦にわたって繰り広げられた熾烈を極めたチャンピオン争いは、全クラスとも未だその行方が確定していない。11月2日(金)~4日(日)、愛知県新城市で行われた全日本ラリー第9戦「新城ラリー2012」は、文字通りチャンピオン争いに終止符を打つ最終決戦の場となった。
新城市の桜淵公園を拠点とするこのラリーは、国の定める「地域再生計画」の認定を受け、地方自治体と民間が協力して実施する初のケースとしてスタートした。9回目を迎える今大会も数多くのイベントが用意され、2日間で約3万7000人の観客が訪れるビッグイベントとなった。
トリッキーなコーナーが連続し、一瞬でも気を抜くとリタイアとなってしまうという息をもつかせぬ難攻不落のSS(スペシャルステージ)が数多く用意されている今大会は、SS3を終えた時点でベテランの石田 正史(三菱ランサーエボリューション)がトップに立つが、今大会最長のSSとなる19.66kmのSS4で勝田 範彦(スバル・インプレッサ)が逆転。その後も後続とのリードを広げ、初日トップで折り返す。2日目の最初のステージとなるSS6で今大会3本目となるベストタイムをマークした勝田は、SS7以降は後続とのタイム差を見ながら安定したペースで走るという盤石の展開で今季4勝目を獲得。自身5度目となる3年連続のチャンピオンを決めた。
クラス別順位結果(上位3クルー)
※クラス区分の説明については、こちらを参照クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
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JN4 | 1 | 勝田 範彦/足立 さやか | スバル・インプレッサ |
2 | 石田 正史/宮城 孝仁 | 三菱ランサーエボリューションX | |
3 | 柳澤 宏至/中原 祥雅 | スバル・インプレッサ | |
JN3 | 1 | 山口 清司/島津 雅彦 | トヨタ・カローラレビン |
2 | 眞貝 知志/田中 直哉 | ホンダ・インテグラ | |
3 | 三好 秀昌/谷内 壽隆 | トヨタ86 | |
JN2 | 1 | 天野 智之/井上 裕紀子 | トヨタ・ヴィッツ RS G's |
2 | 岡田 孝一/漆戸 あゆみ | マツダ・デミオ | |
3 | 加藤 辰弥/西江 浩和 | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 小泉 茂/小泉 由起 | 日産マーチ |
2 | 松岡 竜也/縄田 幸裕 | ダイハツ・ストーリア X4 | |
3 | 篠原 正行/北川 紗衣 | ダイハツ・ストーリア X4 |
今大会で優勝すると逆転チャンピオンの可能性があった奴田原 文雄(三菱ランサーエボリューション)は、SS1とSS4の遅れが響き初日は3位で折り返すが、2日目に入るとベストタイムを連発し、2位の石田を射程圏内に捉える。だが、SS9を走り終えた時点でターボトラブルが発生し、リタイアとなる。そのため、石田はそのまま逃げ切り2位に入賞。3位には第4戦で優勝した柳澤 宏至(スバル・インプレッサ)が入賞した。
シリーズポイントでは1ポイントの間に村田 康介(ダイハツ・ブーンX4)、眞貝 知志(ホンダ・インテグラ)、三好 秀昌(トヨタ86)が並ぶという僅差の勝負となっているJN3クラスは、シリーズトップの村田がSS1でリタイアとなる波乱の展開となった。初日のSS1でベストタイムを奪った山口 清司が、そのままリードを守り今季初優勝を獲得。注目のチャンピオン争いは、眞貝が三好を抑え2位に入賞し、自身初となるJN3クラスチャンピオンを獲得した。
JN2クラスは、シリーズトップの川名がSS2でコースアウトのためリタイアとなり、シリーズ2位の天野に逆転チャンピオンの可能性が生まれた。だが、そのためには“優勝”が絶対条件となるため、まだタイトルの行方は混沌としたままだ。ラリーは、初日は岡田 孝一(マツダ・デミオ)がトップで折り返すが、2日目のSS6でコーナーを曲がりきれず大きくタイムロスしてしまう。この間隙に天野が一気に岡田とのタイム差を詰め、続くSS7でついに逆転に成功。そのまま逃げ切り、今季3勝目とともに3年連続のJN2クラスチャンピオンを獲得した。
今年の開幕戦で全日本デビューを果たし、その後も全戦に出場して今シーズンの注目となったGAZOO Racingのトヨタ86。最終戦は2012年のTDP(TOYOTA YOUNG DRIVER PROGRAM)ドライバーとして今年の全日本F3選手権に参戦中で、第13戦菅生ラウンドで念願の初優勝を獲得した勝田 貴元をドライバーに起用し、話題を集めた。全日本ラリーチャンピオンの勝田 範彦を父に持つ貴元は、今年で19歳になる若手期待のレーシングドライバーだ。初チャレンジとなった今回のラリーは、初日のSSでマシンを立ち木に当ててしまうなど苦戦が続き完走とはならなかったが、仕切り直しとなった2日目は大きなトラブルもなくゴールを果たした。
「子供の時から父(範彦)が走る姿を見ていたので、ラリーというのはどういうものかということは知っているつもりでしたが、実際に自分で走ってみると、予想以上に大変だということがよく分かりました。サーキットはコースを完璧に覚えることができますが、ラリーは毎回走るところが変わるのでそれができない。ペースノートがどれだけ大事かということを実感しました。でも、すごく楽しかったし勉強になりました」と貴元。将来の夢は「F1のワールドチャンピオンになること」と大きな夢を持つ貴元だが、「ラリーもこのままでは終わりたくないです。もし次に出場する機会があったら、今度はもっと正確なペースノートを作りたい」と、ラリーの魅力をしっかりと感じたようだ。