GAZOO Racingは、11月2~4日に開催された全日本ラリー選手権第9戦(最終戦)新城ラリーに1979年のWRCチャンピオンであるビョルン・ワルデガルドを招聘。3日・4日の2日間、数回にわたりデモンストレーション走行やサイン会、トークショー等を実施。往年のラリーファンや一般のクルマ好きの方々にラリーの魅力を間近に体感いただいた。各クラスのチャンピオン争いが決着する2012年シーズン大詰めの1戦ということもあり、会場には多くのギャラリーが足を運んだ。
ワルデガルドは1943年11月12日、スウェーデン出身。1979年にはフォード・エスコートRSおよびメルセデス・ベンツ450SLCを駆り、WRCドライバーズ選手権制定後初の王座を獲得した。また、ランチアやポルシェなど、実に多様なマシンをドライブした経歴の持ち主でもある。1981年にはトヨタ・チーム・ヨーロッパ(TTE)に所属。セリカ2000GT、セリカ・ツインカムターボ、セリカGT-FOURと乗り継ぎ、トヨタ車だけで計6勝を挙げている。まさにトヨタの80年代WRC活動を支えたドライバーのひとりだ。
今回デモ走行を披露した車両は、トヨタ・セリカ・ツインカムターボ。グループBと呼ばれる当時の車両規定に則り製作された。ミッドシップエンジンや4輪駆動のライバルが猛威を振るう当時にあって、シンプルな後輪駆動のセリカ・ツインカムターボはサファリなどのタフなラリーで活躍。今回ヨーロッパから空輸された個体は1986年のアイボリーコーストラリー(コートジボワール)で勝利を挙げたものだ。フルレストアを受け、状態は良好に保たれている。
デモ走行では抽選会で当たったラッキーなファンを助手席に乗せ、走行会場のグラウンドを疾走。FR車ならではの豪快なドリフトと、ツインカムターボエンジン「4T-GT」のエキゾーストノート、なによりワルデガルドの今なお色褪せないテクニックに、集まった観客はくぎづけ。サイン会ではワルデガルド自身も驚くほど長蛇の列ができ、福井敏雄元TTE副社長とのトークショーでは当時の懐かしい話や裏話が飛び出すなど、非常に内容の濃いイベントとなった。
ワルデガルドはさらに、イベント会場の近隣に位置するスペシャルステージ「ほうらいせん」の一部でも走行を披露。初めて走る日本の林道、しかも初日はすっかり日の暮れた時間帯にもかかわらず、かなりのペースでセリカ・ツインカムターボを操った。暗い林道をセリカのランプポッドが照らし出すと、あちこちから歓声が上がり、まるで昔のWRCを見ているかのような雰囲気に包まれた。2日目は昼間に走行、やはりギャラリーからは大きな声援が飛んだ。