新居レポート - 2009 第1戦 オーストラリアGP

オーストラリアGP 新居レポート

2009年3月30日

いよいよ、2009年シーズンが開幕しました。8年目を迎えたパナソニック・トヨタ・レーシングにとって、今年ほど開幕戦が待ち遠しく感じたシーズンはありません。このような状況の中で、レースを続けられることに本当に感謝していますし、今年こそ、その期待に応えたいと思っています。それではさっそく、オーストラリアGPの模様を報告いたします。

今までで一番、楽しみに感じたシーズン開幕

今年採用された車両規則により、クルマの姿が大きく変わった。リアウイングが小さくなったのと反対に、フロントウイングは相対的に大きく、複雑な形状をしている。

今年の車両、TF109は自分たちでも驚くほど高い評価を頂いており、我々もウインターシーズンからその手応えを感じながらテストを行ってきました。今年も目標は「勝利」ですが、TF109がそのレベルにあると実感していました。開幕戦を翌日に控えた木曜日は「やっとレースができる」という気持ちでいっぱいでした。
ただし、テストはあくまでテスト。また、レースには絶対ということはなく、確認に確認を重ねていても、何が起きるかフィニッシュするまでわかりません。今シーズンから復活したスリックタイヤでF1を戦うのは我々にとって初めての経験でしたし、フロントウイングのフラップの調整も実際にグランプリで行うのは初めてでした。
ほかにも、オーストラリアGPでは予選とレース時のピットレーンの制限速度が80km/hから100km/hに引き上げられましたので、その影響でピットストップ戦略も見直さなければなりません。さらに、今年はセーフティカーに関するレギュレーションにも変更がありましたので、緊張感を保ちながらグランプリに臨みました。

夕方のセッションは難コンディション

フロントウイングを間近で見ると構造がよくわかる。翼端板には複数のエレメントが装着され、ウイング本体もノーズの先端から長いステーによって吊り下げられている。

フリー走行1回目は悪くない出だしでした。我々は最初の90分間のセッションはずっと硬いほうのミディアムタイヤを装着して走行していたのですが、走り出しからある程度のタイムが出てて、軟らかいほうのスーパーソフトタイヤで走行していた何台かのライバル勢と比較しても、悪くないタイムでした。
ところが夕方4時半からスタートしたフリー走行2回目になると状況が一変。セッションの途中までは悪くなかったのですが、その後、難しい状況となってしまったのです。通常であれば、時間の経過とともに路面にタイヤのラバーが乗って、セッション後半にラップタイムが上昇するのですが、今回は開始から30分ぐらいしてからタイムを上げることが難しかったのです。これは我々だけでなく、他のチームにも言えたようで、セッション後半に自己ベストを更新するドライバーが少なかったのは、そのためではないでしょうか。
このような現象に陥ってしまったのは、路面温度がセッション後半に下降していったことが考えられます。通常、フリー走行2回目で晴れていれば、路面温度が上がって、セッション終盤にタイムも速くなっていくのですが、今回は走行がいつもより2時間半も遅い午後4時半にスタートしたため、ほとんどのドライバーのタイムがセッション後半に伸び悩みました。土、日曜日もセッションの開始時間がいつもより3時間遅いので、その辺を注意して2日目以降に臨みました。

僅差の上位争いを戦いつつも、まさかの最後尾スタート

昨シーズン途中から導入されたシャークフィンはTF109でも採用。またサイドポンツーンは空力的な効果を得るために非常に複雑な3次元的な曲面形状となっている。

昨年のオーストラリアGPに続いての2台揃ってのトップ10。しかも、昨年の6、9位よりひとつ順位が高い6、8位は、決して悪くはない結果でした。しかし、勝利を目指している我々にとっては、残念な結果だったことも確かです。フリー走行3回目まではヤルノ(トゥルーリ)の調子が良く、ティモ(グロック)もフリー走行3回目の終盤にいいセッティングを見つけることができ、予選は2台揃って上位へ行けると信じていました。ところが、予選第1ピリオドの最初のアタックでヤルノが「クルマのフィーリングが違っている」と混乱し始めてから、歯車が噛み合わなくなってきました。
それでもなんとか2台揃って最終ピリオドに進出できたのですが、トップ10のドライバーが僅差の戦いをする最後のアタックでは、100%の自信でアタックしないと好結果にはつなげることができず、ヤルノは8位に終わってしまいました。一方、ティモは予選に入っても好調でしたが、最後のアタックでわずかにミスしてしまいました。3位以下はコンマ2秒に6台がひしめき合う大混戦だったので、あのミスがなければ、もっと上に行けたと思います。
さらに予選終了後に、レース審議委員会からリアウイングに対してレギュレーション違反の指摘を受け、予選結果から除外されてしまいました。我々は社内の検査も十分に行い、強度には問題がないと信じていただけに、パフォーマンスに影響が出ない部分での問題によって予選順位を失ったことは残念でなりません。とはいえ、審議委員会の裁定を厳粛に受け止め、レースを最後まで走り抜くつもりで、気持ちを一新しました。

見事作戦が成功、しかしまたもや不可解な裁定で降格

サーキットの性質をふまえて採用したタイヤ・ピット戦略は成功、ヤルノは最後のスティントで3番手まで浮上、ティモも5番手でフィニッシュしたのだが……。

リアウイングに関しては、予選後に指摘を受けた部分を補強したのでピットレーンからスタートすることとなりました。また、タイヤのパフォーマンス変化が読みづらく、アルバートパーク・サーキットではセーフティカーの出動が珍しくないということから、2台に異なるタイヤを装着してスタートさせました。ヤルノにはスーパーソフトを、ティモにはミディアムを装着したのです。その作戦は功を奏して、先にスーパーソフトを履いて、レース後半に安定した性能を発揮するミディアムを温存していたヤルノが、他車のクラッシュにも助けられて3位表彰台を獲得し、ティモも5位でフィニッシュしてくれたことは非常に勇気づけられる結果でした。
しかし、終盤に3番手を走行していたヤルノが、レース終了後に審議委員会から「セーフティカー走行中にハミルトンを追い越した」として、25秒のペナルティーを科せられて順位降格となりました。この件に関して、納得できない部分もあって国際控訴裁判所に控訴する意思を即日、表明しました。証拠となる資料などを収集して、48時間以内に正式に控訴できるよう手続きを行っています。
今回のオーストラリアGPは木曜日から抗議が出され、土曜日には予選のタイムが抹消。そして日曜日は3位から降格となり、ほとんど力が出せないまま終えることとなりました。それでも、ピットレーンからスタートして2台がポイントを獲得できるスピードを披露してくれたことは、車両開発に間違いがなかったという点で自信になりました。
今回は本当に残念に結果に終わり、応援してくださっている皆様には申し訳ないと思っています。次のマレーシアGPは。これまで我々のクルマと相性がいいので、今度こそ、満足のいく戦いを披露したいと思いますので、ご声援のほどよろしくお願いします。


アルバートパーク・サーキットでの新居章年。TF109のペースに自信を持って望んだだけに、結果には一層悔しさが募る。次は相性抜群のマレーシアで期待はさらに高まる。

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2009 チャンピオンシップポイント

ヤルノ・トゥルーリ
32.5pt / 8th
ティモ・グロック
24pt / 10th
小林 可夢偉
3pt / 18th
59.5pt / 5th

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