新居レポート - 2009 第4戦 バーレーンGP
バーレーンGP 新居レポート
2009年4月27日
いつもご声援ありがとうございます。開幕戦オーストラリアからスタートし、4戦あったアジア・オセアニアラウンドも序盤戦の締めくくりを迎えました。舞台となったのは中東バーレーン。それではさっそくバーレーンGPの報告をいたしましょう。
「トラブルさえなければ結果は出る」と万全を期してバーレーン入り
2月には711周、3,847Kmを走破するテストを行っており、そこで得られた豊富なデータをもとにセットを決めた。またここはグランプリ17戦中最もブレーキに厳しいサーキットとされている。
前戦中国GPは我々にとっても本当に歯がゆいグランプリとなりました。金曜日のヤルノ(トゥルーリ)に発生したSTDECUのトラブルに加え、土曜日はティモ(グロック)のギアボックスを交換したために、5番手降格。そして、日曜日は大雨の中、ヤルノは追突されてしまい、まともな戦いができないままに3日間を終えてしまったという感じでした。したがって、今回のバーレーンGPで我々がもっとも大切にしていたことは、どんな些細なトラブルも起こさずに、自分たちが持っている力をしっかりと出すことでした。
中国GPから2週連続での開催ということで、クルマには目に見えるような大きな改良はしませんでしたが、もちろん見えない部分での改良は今回も施しました。またバーレーンはTMGがあるドイツと時差が1時間しかないこともあり、セットアップ作業も不安なく進めていくことができました。さらに、このバーレーンは2月にテストを行っていてアドバンテージもあるコースでしたから、万全の態勢でグランプリに臨みました。
オフのテスト結果を有効利用できた
テスト時と異なるのが気温と路面温度。10℃以上も高温になるため、タイヤの使い方を見極めなければならなかった。フリー走行から2種類のタイヤの特性を確かめ、戦略上でも鍵となることが予想されていた。
金曜日はトラブルに見舞われることもなく、順調にプログラムを消化することができました。セットアップ作業も、シーズン前のテストで試したものをベースにさまざまなものをトライ。最終的にテストで確認していたセットに落ち着いたのですが、2台そろって精力的に走り込みを行ってくれた成果が出たのだと思いました。
2月のテスト時に比べて気温も路面温度も10℃以上高かったので、軟らかいほうのスーパーソフト(SS)タイヤがどのようなパフォーマンスを披露してくれるのかが楽しみでした。フリー走行2回目でヤルノ3番手、ティモ8番手という順位もそうですが、高温下でも安定したタイムを刻めると分かったことが、初日最大の収穫といってもいいでしょう。
開幕から3戦目の中国GPまで、トラブルやペナルティを受けることなく、ドライコンディションで走りきったレースがありませんでした。バーレーンではぜひ3日間ドライコンディションで戦いたいと考えていましたが、事前には日曜日に砂嵐に見舞われる予報がでていました。しかし、金曜日にはその予報が撤回され、日曜日もドライコンディションでレースが行えそうだということにも勇気づけられました。
チーム初のフロントロウ独占。目指すは表彰台の頂点!!
ヤルノはブレーキングに不安を残し、ティモも電気系統のトラブルを抱えるなど万全な状態ではなかったものの、チーム一丸となって臨んだ結果、予選で見事フロントロウを独占した。これはチームが参戦して以来初の快挙。
土曜日の予選の結果、チームにとってF1参戦以来初めて、フロントロウを独占することができました。これも日頃から我々パナソニック・トヨタ・レーシングを応援してくださっている皆さんのおかげだと感謝しています。ドライバーが頑張ってくれたくれたことは言うまでもありませんが、彼らにいいクルマを与え、セットアップしたエンジニアやメカニックたちの働きがあってこそだと思います。さらにレースチームだけでなく、ファクトリーで仕事をしている多くの従業員たちの努力も忘れてはなりません。
とはいえ、フロントロウを独占するまでのこの週末の道程は決して平坦ではありませんでした。まず午前中にティモがトップタイムを記録した直後に、電気系のトラブルでストップしてしまいました。幸い配線を交換するだけで解決したので、午後の予選に影響はありませんでした。予選に入っても、ヤルノはブレーキフィーリングに苦しみ、ティモは風の変化に戸惑ったりしました。その中で2台そろって最終ピリオドに駒を進め、さらにフロントロウを獲得できたのは、クルマが持っているポテンシャルの高さがあったからだと分析しています。
フロントロウから2台がスタートする今回は、「表彰台」ではなく、「表彰台の頂点」を狙って戦おうと、日曜日のレースに臨みました。
タイヤ選択が裏目に。悔しい結果だがチームの力を実感
戦略の鍵となったタイヤ選択に、惜しくも優勝を阻まれる結果となった。それでもヤルノがチームとして今季3度目となる3位表彰台を獲得した。マシンの性能の高さは証明されたため、今後に期待がかかる。
今シーズン3回目の表彰台でしたが、優勝するチャンスがあっただけに、残念な結果だったとしか言いようがありません。敗因は、1回目のピットストップ時のタイヤ選択にあったと考えています。ライバル勢よりも、やや軽い燃料でスタートしていたため、1回目のピットストップと2回目のピットストップの間の周回(第2スティント)を長くとる作戦でした。長めの第2スティントで、より安定したラップタイムを刻むことができるミディアムタイヤを両ドライバーに装着したのです。ところが、1回目のピットストップでミディアムタイヤに交換したふたりのドライバーのラップタイムが予想していたよりも伸びず、この作戦が誤算となってしまいました。
今振り返れば、トップを走行していたティモは3ストップ作戦にして、第3スティントまでスーパーソフトを履かせること。ヤルノには2ストップ作戦を採り、やはり第2スティントまでスーパーソフトで走らせるという作戦にしていれば、違った結果が出たかもしれません。しかしこれは結果論であり、その時下した決断を覆すことはできません。優勝できなかったことは悔しいですが、裏を返せば、例え戦略がベストでなくても、表彰台に上がることができたことは、我々のクルマがかなりの競争力を持っているという証拠です。今回の失敗を貴重な反省材料にして、ヨーロッパラウンドに入ってからも魅力あるレースを心掛けて、再び優勝を目指したいと思っています。今後もパナソニック・トヨタ・レーシングへのご声援をよろしくお願いします。