新居レポート - 2009 第11戦 ヨーロッパGP
ヨーロッパGP 新居レポート
2009年8月24日
F1は約4週間のインターバルが明け、いよいよ後半戦に突入しました。夏休み明け最初はヨーロッパGP。舞台となったのは、今年2度目のF1開催となったスペインのバレンシアです。それでは、さっそくバレンシア市街地サーキットで行われたヨーロッパGPの模様を報告します。
2週間の夏休みがあったものの、アップデートパーツを多数持ちこむ
写真はリムブランキングを装着したクルマ。ハンガリーでテストを行い、その効果が確認できたため、前倒しして投入。昨年ダブル入賞のバレンシアだけに、ドライバー、チームともに長い休暇明けにも関わらず、気合いが入っていた。
8月1日から14日までの2週間、われわれはF1のコスト削減の一環として、ファクトリーでのF1活動を停止しました。長年、レース活動をしていて、これだけ長い期間休んだことはなかったので、正直戸惑いもありましたし、こんなにレースが待ち遠しく感じたことはありませんでした。
しかも、バレンシアは昨年、ダブル入賞を果たした相性のいいサーキット。前戦ハンガリーGPでもダブル入賞し、上り調子で臨んだ今回のヨーロッパGPは期待の持てるグランプリでした。
フロアも一部改良しましたし、ハンガリーGPで試したリムブランキング(ホイールキャップ)も予想以上の効果があることが確認できたため、当初の予定よりも早く今回のヨーロッパGPから実戦投入。2週間の夏休みがあったとはいえ、しっかりとクルマの開発は進んでおり、進化したTF109がバレンシア・ストリート・サーキットでどんなパフォーマンスを披露するのが楽しみでした。
公道サーキットならではの、ほこりっぽい路面コンディションにとまどった初日
バレンシア・サーキットは港に近く、普段は公道として利用されている。そのためセッション初日の午前中は、路面が整っておらず苦しんだ。それでも午後には路面も改善され、順調にタイヤ比較など、プログラムを消化した。
新しいパーツを持ち込んだこともあって、金曜日のフリー走行1回目に向けて、我々はさまざまなメニューを用意していました。それらを消化するために、早めにコースインさせたのですが、それが裏目に出ました。バレンシア・ストリート・サーキットは普段レースが行われていない公道コースなので、路面が非常にほこりっぽく、セッション序盤はかなり滑りやすい状態となっていたからです。タイヤを滑らせてしまったために、グレイニング(ささくれ摩耗)を発生させていまいました。グレイニングは一度発生させてしまうとなかなか消えないので、午前中のフリー走行でタイムが伸びなかったのはそのせいです。タイヤを新しくするという手もありましたが、午後には2種類のタイヤを比較するメニューが残っていましたので、午前中はグレイニングを発生させたタイヤで、走行を重ねるしかありませんでした。
午前中の反省から、午後のフリー走行では路面の改善が確認できるまで、ふたりをピットにとどまらせることにしました。そのため、フリー走行2回目は午前中に発生した問題に見舞われることなく、自分たちのペースで順調にメニューをこなすことができました。ベストタイムでトップ10に入ることができなかったのは、ニュータイヤでのパフォーマンスランをセッション中盤に済ませてしまっていたからだと思われます。ほこりっぽい路面のバレンシアは、セッションが進むにつれて路面コンディションが良くなるコースなので、ニュータイヤをセッションの終了間際に履いてタイムアタックを行ったドライバーたちが大幅にラップタイムを向上させたので、我々はトップ10外に落ちてしまいました。
今年のヨーロッパGPは3日間とも晴天が続いたので、路面コンディションが日を追って良くなりました。路面コンディションをどのように読むかがポイントとなったグランプリでした。
午前のセッションで得られた好感触から一転、予想外の予選結果
金曜日の好感触から一転したクルマのコンディション。原因が分からず「ミステリー」だとヤルノがこぼしていた。ティモも満足のいく予選とはならなかったが、同じく13番手から入賞を果たした、前戦ハンガリーの再現を狙っていた。
土曜日のフリー走行3回目で赤旗が出され、予選に向けた確認事項がいくつかできなかったことは確かですが、午前中の段階でヤルノ(トゥルーリ)はクルマに好感触を持っており、午後の予選でまさか第1ピリオドで落ちるとは、想像もしていませんでした。それでも、2回目のアタックで軟らかいほうのタイヤであるスーパーソフトを履けば、なんとかなると思っていましたが、スーパーソフトを履いてもヤルノのクルマは4輪が滑ってグリップがない状態が続き、残念な結果に終わりました。
一方、午前中にまだセットアップが決まっていなかったティモ(グロック)は、予選では逆にヤルノよりもいい手応えでアタックができました。第2ピリオドの最後のアタックでもセクター2まではトップ10内に入るペースで走行していたのですが、セクター3で失速しました。理由はリアタイヤのグリップ力が予想以上に早くなくなってしまったためでした。予選に入ってから路面コンディションが予想以上に向上して、ラップタイムが速くなったことが原因のひとつとして考えられます。いずれにしてもセクター3だけで約コンマ2秒を失ったティモ。トップから1秒以内に14人がひしめいたヨーロッパGPの予選第2ピリオドでは、このロスは大きく、最終ピリオド進出はかないませんでした。
予選順位が大きく影響するも、決勝終盤にファステストラップを記録
抜きにくいバレンシアでは、予選の順位が大きく響き、残念な結果となった。決勝でファステストを記録したティモは、クルマの仕上がりを評価していた。一方ヤルノは初日でのグリップ力は最後まで戻らなかったと話していた。
予選で不可解なグリップ不足に悩まされたヤルノのクルマを土曜日に確認した結果、メカニカルな問題はないことがわかったため、セッティングを変更してピットレーンスタートにはせず、通常通りグリッド上からヤルノをスタートさせました。スタート直後の混乱をうまくすり抜けて、18番手から1周目に15番手までポジションを上げることに成功しましたが、抜き所がほとんどないバレンシア・ストリート・サーキット。さらにレースは20台中18台が完走する平穏な展開となったため、後方からスタートしたヤルノにはそれ以上、上位に進出するチャンスはありませんでした。
一方、13番手からスタートしたティモは、スタート直後に他車に追突されるアクシデントに見舞われて、タイヤにダメージを負ったため、早々にピットインせざるを得ませんでした。これで19番手に下がってしまい、その時点でレースは事実上、終了してしまいました。それでも、レース終盤にティモがファステストラップを記録したように、ふたりのドライバーは最後まであきらめずに走ってくれました。
今回のグランプリは、いかに予選が大切であるかを身に染みて感じた一戦となりました。この反省を活かして、次のベルギーGPでは3日間しっかりと戦いたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。