新居レポート - 2009 第12戦 ベルギーGP

ベルギーGP 新居レポート

2009年8月31日

いつもご声援ありがとうございます。4週間のインターバルを経て再開されたF1グランプリは、いきなり2週間連続での開催。先週バレンシアで行われたヨーロッパGPの次は、スパ・フランコルシャンでのベルギーGP。スパ・フランコルシャンはファクトリーがあるケルンのTMG(ファクトリー)からも近く、ドイツGPと同様、力が入る一戦となりました。それではさっそく、ベルギーGPの模様を報告しましょう。

空力に自信を持つTF109はスパと好相性。結果に期待が高まる

スパは横方向への負荷に加え、名物コーナー「オールージュ」では縦Gが生じる、今季開催コースの中でも特異なサーキット。しかしTF109はスパでの走行も特別視することなく走行できるように製作されている。今回は低ダウンフォース仕様で臨んだ。

前回のヨーロッパGPは、本当に実力を出し切れず、残念な結果となりました。ただ、レース中のラップタイムを見るかぎり、決してクルマが遅かったわけではなく、予選で我々がTF109のポテンシャルを発揮させることができなかったことが問題でした。
ベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャンは、中高速コーナーが点在する難易度が高いサーキット。ここを速く走るためには、洗練されたエアロダイナミクスが必要です。バレンシア・ストリート・サーキットでは予選でグリップ不足に悩まされましたが、空力でアドバンテージがあるTF109にとってスパ・フランコルシャンは相性のいいサーキットだったので、今回こそ期待通りの結果が残せるはずだと思っていました。
2週間連続での開催となったため、クルマに関する大きな変更はありませんでしたが、リアウイングはスパ・フランコルシャン用に開発された新しいものを投入。フロントウイングもスパ・フランコルシャン用に開発したものですが、こちらは前倒しで製作して、前戦ヨーロッパGPから投入。2週間連続での使用となりました。

スパウエザーをものともせず、トップと2番手タイムを記録した初日

バレンシアでの反省からフリー走行の進め方を変更し、より多くのデータを集めた。2台とも上位タイムを出し順調な初日となった。それでもヤルノ、ティモともにまだ改善できる点はあると気を引き締めていた。

予報どおり金曜日午前中に雨に見舞われたスパ・フランコルシャン。フリー走行1回目のヤルノ(トゥルーリ)のトップタイムは、雨に見舞われる前の30分間で記録されたものであったため、そのタイムの真価がはっきりしないところがありました。しかし昨年のフリー走行1回目でヤルノが出したベストタイムと、ヤルノが走り出してすぐに記録したトップタイム1分49秒675が、ほぼ同タイムだったことから、クルマの状態は悪くないと手応えを感じつつ午後のフリー走行に臨みました。
午前中、90分間の走行のうち、60分間以上がウエットコンディションだったこともあり、ドライコンディションとなった午後のフリー走行2回目は、予定していたプログラムを変更して行いました。それでも、初日に行うべきプログラムはほとんど消化できました。その中でティモ(グロック)が2番手、ヤルノも7番手と2台そろって上位につけたことは2日目以降に向けて力強い結果となりました。そして、バレンシアでもクルマは速かったのですが、そのスピードを予選で発揮させることができなかったのだということをあらためて認識しました。ティモのタイムは最後に更新されたわけですが、ティモが記録した時点での路面コンディションを考えれば、トップから100分の1秒遅れの2番手は上々の結果でした。
しかし、まだクルマのセットアップは完璧ではなく、煮詰めなければならないことはたくさんありました。具体的にはセクター2は速かったのですが、1コーナーとシケインの立ち上がりで少しタイムをロスしていたのです。TMGのファクトリーと連絡を取り合って、予選までにしっかりとした対策を施して、今度こそ2台そろって予選トップ10に進出するつもりで、初日を終えました。

4戦ぶりにふたりそろってQ3へ。ヤルノはトップと0.087秒の僅差で2番手を獲得

初日よりもダウンフォースをやや減らしての予選で、ヤルノは各セッションをQ1から2位、1位、2位でまとめた。週末をとおして決勝と同じ量の燃料を積んでの走行も十分で行っており、マシンの仕上がりはよく、決勝への期待が高まっていた。

金曜日の段階でクルマがある程度、仕上がっていたので、エアロダイナミクスのセッティングは変えずに、2日目に臨みました。その決断は悪くなく、土曜日のフリー走行3回目でも、安定したラップを刻むことができました。そこで、予選に向けて、まだ課題が残っていたブレーキング時の安定性を高めるために、メカニカル面での調整を行いました。
もうひとつ予選に向けて頭を悩ませたのは、ミディアムハードとソフト、どちらのタイヤを予選で使用するかということでした。通常であれば、軟らかいタイヤのほうがグリップ力があるので、予選アタックに使うところですが、今回は軟らかいほうのタイヤであるソフトを履くとリアのグリップ感が落ちるという症状が見られていたので、単純にソフトを選択するわけにはいきませんでした。そこでQ1ではミディアムとソフトでアタックすることにしました。結果的にソフトでも問題ないということと、Q2はQ1より5分間短く、3周目にベストタイムが出る可能性が高いミディアムで2回コースインするのは時間的に厳しかったため、Q2では2回ともソフトを選択しました。この選択が功を奏して、第8戦イギリスGP以来4戦ぶりに2台そろってQ3へ進出することができました。
Q2の結果から、Q3でもソフトを装着することにしましたが、レーススタート時の燃料を搭載した状態でソフトタイヤのグリップ感をあらためて確認するために、Q3アタック前に、一度使用したソフトタイヤで確認を行いました。そして、ドライバーからソフトで行けるという確認をとって、ふたりにニュータイヤを装着してコースアウトさせました。
ヤルノは惜しくもポールポジションは逃しましたが、予定通りのアタックを行ってくれました。ティモは決して満足のいくアタックではありませんでしたが、それなりにまとめてくれて、7番手に踏みとどまってくれたと思います。いいポジションを得て、久しぶりに良い形でレースを迎えることができました。

第1コーナーでの混乱とピットでのアクシデントにより絶好のチャンスを逸した決勝

第1コーナーへの飛び込みで混乱を避けきれず、ヤルノはレースを終える結果となった。またティモにも不運が続き、せっかくあげたポジションを、ピット作業でのトラブルからふいにしてしまい、無得点という残念な結果になった。

スタートポジションが良かっただけに、レースは非常に残念な結果となりました。ヤルノのスタートは決して悪くはありませんでしたが、1コーナーでのポジション争いで行く手を阻まれる形となり、大きく順位を落としてしまいました。さらにそのとき、進路をふさがれた前車に追突してしまい、フロントウイングを破損させ、1周目にピットインしなければなりませんでした。我々はここでヤルノのフロントウイングを交換するとともに、残りのレースを1回ピットストップで行けるだけの燃料を搭載して、コースに送り出したのです。しかし、フロントウイング破損による影響からか、ブレーキにもトラブルを抱えるようになり、安全上の理由からヤルノをピットインさせ、レースをリタイアさせました。
逆にティモはスタート良く飛び出し、1コーナーの混乱をうまくかいくぐって1周目からヤルノの背後となる5番手を走行。上位進出も可能なポジションでレースを開始しました。ところが、1回目のピットストップでリグがうまく給油口に入らないトラブルに見舞われ、予備のリグを使用せざるをえず、約7秒のタイムを失ってしまいました。そのため、コースに復帰したときには13番手まで順位を落として、惜しくもポイント獲得はなりませんでした。
残念な結果に終わってしまった今年のベルギーGPですが、課題にしていた予選の戦い方という点に関して、満足のいく戦いができたと思います。あとはそれをうまくレースに結びつけるだけ。2週間後のイタリアGPでは、再び上位を目指した争いを行いたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。


スパ・フランコルシャンでの新居章年。課題となっていた予選でのパフォーマンスも改善され、2台そろって予選トップ10に進出。決勝はヤルノ2番手、ティモ7番手からスタートするも、不運が重なり残念ながら結果はノーポイントに終わる。次戦のモンツァでは予選から決勝へうまく繋げて上位入賞を目指す。

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2009 チャンピオンシップポイント

ヤルノ・トゥルーリ
32.5pt / 8th
ティモ・グロック
24pt / 10th
小林 可夢偉
3pt / 18th
59.5pt / 5th

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